【孫への相続】相続税2割加算の罠!節税のつもりが大損するケースと対策をプロが解説
皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。
お父様がお亡くなりになり、遺産相続の手続きを進めるために戸籍謄本を取り寄せたところ、そこには、これまで全く知らなかった人物の名前が「子」として記載されていた…。
あるいは、遺品整理の中で、見知らぬ子供との手紙や写真が見つかった…。
このように、お父様の死後、「腹違いの兄弟姉妹(異母兄弟姉妹)」、あるいは「認知された子」がいることが初めて判明するケースがあります。
ご遺族にとっては、大きな衝撃と、裏切られたような悲しい気持ち、そして”法的な権利関係”と”今後の手続き”について、大きな不安を感じることになるでしょう。
そこで今回は、この「故人の死後に判明した、知らない兄弟姉妹の相続」という、非常に困難な状況について、
- 腹違いの兄弟姉妹(認知された子)の法的な相続権
- なぜ戸籍で判明するのか?
- まず、ご遺族としてやるべきこと
- 遺産分割協議はどう進めるべきか?
- 連絡の取り方と、話し合いの注意点
- 生前にできる対策
などを、分かりやすく解説していきます。
【結論】父の死後判明した腹違いの兄弟(認知された子)も法定相続人。戸籍で確認し、必ず協議に参加させ、弁護士を介した連絡・交渉を
お父様がお亡くなりになった後で、これまで知らなかった腹違いの兄弟姉妹の存在が判明した場合、その方が法律上の「子」として認められるのであれば、あなたと全く同じ立場の「法定相続人」となります。
法律上の子とは、
- 故人(父)と、その子の母との間に婚姻関係があった場合の子
- 婚姻関係にない男女の間に生まれた子で、故人(父)が”生前に認知”していた、あるいは”遺言で認知”した場合の子
- 死後に、裁判で親子関係が認められた子
を指します。
したがって、戸籍謄本に「子」として記載されている、あるいは遺言書で認知されている場合、その方は紛れもなく相続人です。
その方を無視して遺産分割協議を進めることはできず、行ったとしても法的に無効となります。
このような状況に直面した場合、
- まずは、その方の戸籍謄本などを取得し、現在の連絡先を調査する。
- その上で、弁護士などの専門家を代理人として、慎重に最初のコンタクトを取り、相続人であることを伝え、遺産分割協議への参加を求める。
- 当事者間での直接のやり取りは、感情的な対立を生みやすいため、できる限り避ける。
- 遺産分割協議は、弁護士を介して、法的なルールと客観的な資料に基づいて冷静に進める。
というのが、最も安全かつ適切な対応策です。
感情的な問題と、法的な権利の問題を切り離して考え、専門家の助けを借りながら、粛々と手続きを進めていくことが、泥沼のトラブルを避けるための鍵となります。
1. なぜ「腹違いの兄弟」も相続人になるのか?
日本の民法では、法定相続人の順位と相続分が定められています。
「子」は、常に第一順位の相続人です。
そして、この「子」には、
- 現在の婚姻関係にある配偶者との間に生まれた子
- 前の婚姻関係にあった配偶者との間に生まれた子(前妻の子・前夫の子)
- 婚姻関係にない女性との間に生まれ、父が認知した子(婚外子)
- 養子縁組をした子
が、全て含まれます。
これらの子の間で、相続権に優劣はなく、法定相続分は全員平等です。
例えば、相続人が後妻、後妻の子1人、前妻の子1人だった場合、後妻が1/2、後妻の子が1/4、前妻の子が1/4となります。
たとえ、長年音信不通であったとしても、その法的な権利が失われることはありません。
2. なぜ戸籍で判明するのか?
これまで知らなかった子の存在が、相続手続きの中で判明する主な理由は、相続人を確定させるために、故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類を取り寄せるからです。
生前認知の場合:
故人が生前に、婚姻関係にない女性との間に生まれた子を「認知届」によって自分の子として認めていた場合、故人の戸籍にその旨が記載されています。
遺言認知の場合:
遺言書の中で「〇〇を私の子として認知する」と記されていた場合。遺言執行者などが、その遺言書を基に役所に認知届を提出することで、戸籍に記載されます。
死後認知の場合:
子やその母などから、死後に「死後認知の訴え」を家庭裁判所に起こされ、DNA鑑定などで親子関係が認められた場合。
これらの場合、戸籍を見れば、たとえ会ったことがなくても、法律上の親子関係が存在することが分かります。
3. 知らない兄弟の存在が判明したら、まずやるべきこと
事実の受け止めと冷静な対応:
まずは、衝撃的な事実を冷静に受け止め、感情的にならないように努めることが大切です。
戸籍附票による連絡先の調査:
判明した兄弟の戸籍謄本と、その「戸籍の附票」を取得します。戸籍の附票には、その人の住所変更の履歴が記載されているため、現在の住民票上の住所を突き止めることができます。
弁護士への相談:
連絡先の調査と並行して、あるいは調査の段階から、必ず相続問題に詳しい弁護士に相談してください。
今後の進め方、連絡の取り方、法的な注意点などについて、専門的なアドバイスを受けることが不可欠です。
4. 遺産分割協議はどう進める? 連絡の取り方と注意点
最初のコンタクトは弁護士に依頼する:
いきなりご自身で手紙や電話で連絡するのは、相手を警戒させたり、感情的な対立を招いたりするリスクが高いため、避けるべきです。
弁護士に依頼すれば、弁護士名で「〇〇様がお亡くなりになり、あなたが法定相続人の一人であることが判明しました。つきましては、遺産分割協議を進めたく、ご連絡いたしました」といった内容の、丁寧で法的に正確な手紙を送付してくれます。
これにより、相手方も事態を冷静に受け止め、法的な手続きとして対応しやすくなります。
協議の進め方:
相手方にも代理人として弁護士がつく場合が多いです。その場合は、弁護士同士で、遺産内容の開示や、分割案の提示、交渉などを進めていくことになります。
当事者同士が直接顔を合わせることなく、冷静に話し合いを進めることが可能です。
財産情報の透明性:故人の財産の全てをリストアップした「財産目録」を作成し、全ての相続人で共有することが、公平な協議の前提となります。
5. 話し合いがまとまらない場合:調停・審判へ
弁護士を介した交渉でも、遺産の分け方について合意に至らない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。
調停でもまとまらなければ、「遺産分割審判」で、裁判官が最終的な判断を下すことになります。
これらの法的な手続きも、弁護士が代理人として進めてくれます。
6. 生前に故人ができること:トラブルを避けるための準備
このような、残された家族間の深刻なトラブルを避けるためには、故人となる方が生前に、誠実な対応をしておくことが最も重要です。
家族への事前説明:
ご自身の死後、相続人となる全ての人々について、家族に正直に伝えておく。
遺言書の作成:
誰にどの財産をどれだけ相続させるかを、遺言書で明確に指定しておく。
なぜそのような分け方にしたのか、それぞれの家族への想いを「付言事項」として記しておくことで、感情的な対立を和らげることができます。
遺留分にも配慮した内容にすることが、後の争いを防ぐ上で重要です。
遺言執行者の指定:
信頼できる専門家などを遺言執行者に指定し、スムーズな遺産分割の実現を託す。
7.「本当に血縁関係があるのか?」という疑問がある場合
万が一、戸籍上の記載に疑問があり、本当に親子関係があるのかを確かめたい、という場合は、「親子関係不存在確認調停・訴訟」といった法的な手続きを検討することになります。
ただし、これは非常にデリケートな問題であり、DNA鑑定などが必要になることもあります。
このような主張をする場合も、必ず弁護士との十分な相談が必要です。
【まとめ】未知の相続人の出現は弁護士相談が必須。感情と法律を分け、冷静な対応を
お父様の死後、これまで知らなかった兄弟姉妹の存在が判明した時の衝撃と、その後の不安は、察するに余りあります。
家族の歴史や、故人への想いが揺らぐ、非常にお辛い状況だと思います。
しかし、だからこそ、感情に流されず、法的なルールに則って、冷静に対応していくことが何よりも求められます。
では、本日のポイントをまとめます。
- 故人が認知した子や、前妻との間の子も、”あなたと全く同じ法定相続人”としての権利を持つ。
- その人を無視して行った遺産分割協議は”無効”となる。
- まずは戸籍で事実関係を確認し、”弁護士に相談する”ことが最初のステップ。
- 相手への最初のコンタクトや、その後の交渉は、”弁護士を代理人として”進めるのが最も安全。
- 感情的な問題と、法的な権利の問題を切り離して考える。
- 最も有効なトラブル予防策は、故人が生前に、全ての相続人に配慮した遺言書を作成しておくこと。
このような複雑な相続トラブルは、当事者だけで解決しようとすると、ほぼ間違いなく事態がこじれてしまいます。
あなたの正当な権利を守り、そして故人の名誉を傷つけず、できる限り円満な解決を目指すためにも、必ず相続紛争の経験が豊富な弁護士の助けを借りてください。
株式会社大阪セレモニー



