「他の相続人が遺産を隠してるかも…どうやって調べればいい?」

山田泰平

山田泰平

テーマ:相続関係

皆様、こんにちは。
株式会社大阪セレモニー代表の山田泰平です。

遺産相続の手続きを進める上で、最も重要な前提となるのが「相続財産の正確な把握」です。

しかし残念ながら、相続人の中に故人様の財産の一部を隠したり、独り占めしようとしたりする人が現れるケースも、決して珍しいことではありません。

例えば、

「故人と同居していた兄弟が、預金通帳を全部見せてくれない…」

「生前、故人が高価な貴金属を持っていたはずなのに、見当たらない…」

「他の相続人が、やけに故人の財産状況に詳しいけど、何か隠している気がする…」

「遺産分割協議で提示された財産リストが、明らかに少なすぎるのでは?」

と、他の相続人による「遺産隠し」を疑い、不信感や怒り、そしてどうすれば良いのか分からないという虚無感に苛まれてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。


しかし、疑いがあるからといって、感情的に相手を問い詰めても解決には繋がりません。

法的な根拠に基づき、冷静かつ戦略的に対応する必要があります。


そこで今回は、この非常に深刻で、かつ対応が難しい「遺産隠しが疑われる場合の対処法」について、

  • なぜ遺産隠しが起こるのか?
  • 遺産隠しを疑った場合に、まずやるべきこと
  • 自分でできる範囲の財産調査方法(再確認と深掘り)
  • 隠された財産を明らかにするための法的な手段
  • 専門家(弁護士)への相談の重要性と、その役割
  • 遺産隠しを行った相続人へのペナルティ

などを、具体的なケースを想定しながら、分かりやすく解説していきます。
不当な遺産隠しに泣き寝入りせず、ご自身の正当な権利を守るための一助となれば幸いです。

【結論】遺産隠しは弁護士に相談を。自分で証拠収集しつつ、法的手続きも視野に、諦めずに権利主張を

他の相続人による遺産隠しが強く疑われる場合、最も重要なのは、決して諦めずに、法的な手段も視野に入れて、隠された財産を明らかにするための行動を起こすことです。

そしてその際には、早期の段階から相続問題に詳しい弁護士に相談し、専門的なサポートを受けながら進めることが、最も賢明かつ効果的な対処法と言えます。

ご自身でできることとしては、

  1. まずは冷静に、遺産隠しを疑う具体的な根拠や情報を整理する。
  2. 可能な範囲で、故人の遺品や関係書類(通帳、郵便物、契約書など)を再度徹底的に調査し、手がかりを探す。
  3. 他の協力的な相続人がいれば、連携して情報収集を行う。

といったことができます。

しかし、個人での調査には限界があるため、専門家へ相談するのも良いでしょう。

弁護士に依頼すれば、

  1. 法的な権限(弁護士会照会など)を用いて、個人では開示されない情報を金融機関などから取得できる可能性がある。
  2. 相手方(遺産を隠している疑いのある相続人)に対して、内容証明郵便などで財産開示を求める。
  3. 必要であれば、遺産分割調停や審判、あるいは不当利得返還請求訴訟といった法的手続きを代理で行ってくれる。

といったメリットがあります。

遺産隠しは、時効の問題や証拠の散逸リスクもあるため、疑いを持ったらできるだけ早く専門家に相談し、具体的な行動に移すことが重要です。


それでは、遺産隠しが疑われる場合の具体的な対処法や注意点について、その根拠となる部分を詳しく掘り下げていきましょう。

1. なぜ遺産隠しが起こるのか? その動機と手口

遺産隠しを行う相続人の動機は様々ですが、主に以下のようなものが考えられます。

  • 自分の相続分を増やしたいという欲。
  • 他の相続人に対する不満や対抗意識。
  • 故人と同居し、財産管理を任されていたため、他の相続人に知られたくない使途不明金がある。
  • 特定の相続人にだけは財産を渡したくないという感情。


手口としては、

  • 故人の預貯金口座から、死亡直前や直後に無断で現金を引き出す。
  • 故人名義の有価証券や貴金属などを、他の相続人に知らせずに処分・換金する。
  • 故人が所有していた不動産を、自分に有利な形で評価したり、存在を隠したりする。
  • 故人との間の金銭貸借を偽造する。

など、悪質なものも少なくありません。

2. 遺産隠しを疑った場合に、まずやるべきこと

感情的に相手を問い詰める前に、冷静に以下の準備を行いましょう。

疑う根拠の整理:なぜ遺産隠しを疑うのか、具体的な状況や情報を時系列で整理します。「生前に〇〇という財産があると言っていた」「通帳のこの時期の出金が不自然だ」など。


証拠収集の試み:

故人の遺品(日記、手帳、メモ、手紙、写真など)の中に、財産に関する手がかりがないか、再度徹底的に探します。

故人宛の郵便物(金融機関、証券会社、保険会社、税務署などからの通知)を過去数年分確認します。

故人のパソコンやスマートフォンのデータ(メール、オンラインバンキングの履歴など)を確認できるか検討します。(ただし、プライバシーや不正アクセス禁止法に注意が必要です)


他の相続人との連携:もし、あなた以外にも遺産隠しを疑っている、あるいは協力してくれそうな相続人がいれば、情報を共有し、連携して対応しましょう。

3. 自分でできる範囲の財産調査方法(再確認と深掘り)

相続人としてご自身で行える財産調査には、以下のようなものがあります。

金融機関への照会:

故人が口座を持っていた可能性のある金融機関(銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など)全てに対して、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を持参し、「残高証明書(死亡日時点)」と「取引履歴(過去5年~10年程度)」の開示を請求します。特に、”死亡前後の不自然な大口出金”がないか、注意深く確認します。

どの金融機関に口座があるか不明な場合は、故人の生活圏内の金融機関に片っ端から問い合わせる、という方法もありますが、非常に手間がかかります。



不動産の調査:

市区町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得し、その自治体内で故人が所有していた不動産の一覧を確認します。

法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、所有権の状況や抵当権の有無などを確認します。



有価証券の調査:

証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報開示請求」を行い、故人がどの証券会社に口座を持っていたかを確認します。その後、該当する証券会社に取引履歴などを請求します。



生命保険の調査:

生命保険協会などの「生命保険契約照会制度」を利用します。



借金・負債の調査:

信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に情報開示請求を行います。

これらの調査で、隠されている可能性のある財産や、不自然な資金の動きが見つかることがあります。

4. 隠された財産を明らかにするための法的な手段(弁護士の活用)

ご自身での調査には限界があります。特に、相手が意図的に財産を隠している場合、個人では情報を引き出せないことが多いです。

そのような場合は、弁護士に依頼し、以下のような法的な手段を検討します。

弁護士会照会(23条照会):弁護士は、受任している事件について、所属する弁護士会を通じて、官公署や企業などに対し、必要な情報の照会を求めることができます。これにより、金融機関の取引履歴や、特定の契約内容など、個人では開示されにくい情報を取得できる可能性があります。

内容証明郵便による財産開示請求:弁護士名で、遺産を隠している疑いのある相続人に対し、財産の開示を求める正式な書面を送付します。心理的なプレッシャーを与え、開示を促す効果が期待できます。

遺産分割調停・審判:家庭裁判所の手続きの中で、裁判所を通じて相手方に財産の開示を求めたり、裁判所が必要な調査を行ったりすることがあります。

不当利得返還請求訴訟・損害賠償請求訴訟:遺産隠しが悪質で、すでに財産が費消されてしまっている場合などには、民事訴訟を提起して、隠された財産の返還や損害賠償を求めることになります。

5. 専門家(弁護士)への相談の重要性と、その役割

遺産隠しが疑われる場合、”できるだけ早い段階で、相続問題・紛争解決に詳しい弁護士に相談する”ことが、最も重要かつ効果的な対応です。

【弁護士の役割】法的な観点からの的確なアドバイス:状況を整理し、どのような対応が可能か、法的な見通しを示してくれます。

証拠収集のサポート:弁護士会照会などを活用し、効果的な証拠収集を行います。

相手方との交渉代理:感情的になりがちな当事者間の交渉を、冷静かつ法的に有利に進めてくれます。

法的手続きの代理:調停、審判、訴訟などの複雑な法的手続きを、あなたに代わって行ってくれます。

精神的な支え:困難な状況の中で、法的な専門家が味方についてくれることは、大きな精神的な支えとなります。

相談のタイミング:遺産隠しを疑い始めたら、できるだけ早く相談しましょう。時間が経つほど、証拠が散逸したり、相手が財産を処分してしまったりするリスクが高まります。

弁護士の選び方:相続案件、特に遺産分割紛争の経験が豊富な弁護士を選びましょう。初回の相談は無料で行っている事務所も多いので、まずは相談してみることをお勧めします。

6. 遺産隠しを行った相続人へのペナルティは?

意図的に遺産を隠したり、不正に費消したりした相続人には、以下のような不利益が生じる可能性があります。

相続欠格:民法891条に定められた一定の不正行為(遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿など)を行った場合、相続人としての権利を失うことがあります。

損害賠償責任:他の相続人の権利を侵害したとして、損害賠償を請求される。

刑事責任:悪質な場合は、横領罪や詐欺罪などの刑事責任を問われる可能性もゼロではありません。

遺産分割での不利益:遺産分割協議や審判において、隠した財産を考慮されたり、不利な分割割合になったりする可能性があります。

7. 遺言書の作成と遺言執行者の指定:生前の対策

このような遺産隠しトラブルを防ぐためには、被相続人(故人となる方)が生前に、”法的に有効な遺言書を作成し、信頼できる遺言執行者を指定しておく”ことが、非常に有効な対策となります。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、財産調査や管理、相続人への財産引き渡しなどを行う権限と義務を持ちます。

【まとめ】遺産隠しは許されない行為。諦めずに専門家と連携し、正当な権利の回復を

他の相続人による遺産隠しが疑われる場合、それは非常に深刻で、許しがたい行為です。

しかし、感情的に相手を非難するだけでは解決しません。

  1. まずは冷静に、疑う根拠と情報を整理し、自分でできる範囲の調査を行う。
  2. 個人での調査には限界があることを認識し、早期に弁護士に相談する。
  3. 弁護士を通じて、法的な手段(弁護士会照会、内容証明、調停、訴訟など)も視野に入れて対応する。
  4. 決して諦めず、ご自身の正当な権利を主張する。
  5. 生前の対策として、遺言書の作成と遺言執行者の指定が有効。

もし、そのような状況に直面してしまったら、一人で悩まず必ず専門家の力を借りて、法的な根拠に基づいた適切な対応をとるようにしてください。

その勇気ある一歩が、公平な解決と、あなた自身の心の平穏を取り戻すことに繋がるはずです。

株式会社大阪セレモニー

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山田泰平
専門家

山田泰平(葬儀)

株式会社大阪セレモニー

当社は家族葬を専門に、これまで1000件以上の葬儀をお手伝いさせて頂きました。少人数だからこそ実現できるきめ細やかなサービスと、ご遺族様の想いに寄り添った丁寧な対応を心がけています。

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