第5回 「面倒くさい」を越えた先にチームワークがある

「今日もやりたいことができなかった……」。 夜、そんな溜息とともに手帳を閉じていませんか? 店長という仕事は、予測不可能なトラブルの連続です。しかし、予定が崩れる本当の原因はトラブルではなく、リーダー自身の「優先順位の付け方」と「時間の使い方」にあります。 第6回は、スケジュールをコントロールし、部下の意図を汲み取る時間を捻出する技術をお話しします。
前回、店長に「相手に興味を持ち、意図を掴むコミュニケーションをする」という宿題を出した話をしました。 しかし、次のコーチングで返ってきた答えは、やはり厳しいものでした。「これやらなあかん、あれやらなあかん……があって、仕事のスケジュールがずれるのが嫌で、相手には集中できませんでした……」率直な告白です。彼は真面目に店舗のことを考えているからこそ、目の前の緊急業務に追われ、スタッフ一人ひとりと向き合う余裕がなくなっていたのです。 ここで私は、彼が致命的な誤解をしていることに気づきました。「相手とのコミュニケーションは、今すぐ効果を生むものではない。でも、信頼関係を築き、意思疎通をして一緒に取り組むとは、近い将来に確実な成果を生むものなんだ。」彼がずらしていた「コミュニケーションの時間」は、実は店舗の将来の売上を作る最も「重要」な時間でした。 彼がスケジュールをずらしていたのは、優先順位を「今すぐにやるべき緊急の作業」に置きすぎていたからです。私は彼に提案しました。 「本当にやりたいことをすべてやるという観点に立って、スタッフと『話をする時間』もスケジュールに入れてみてください。職場の人たちとのコミュニケーションも重要な『仕事』の一つです。」多くの店長が「コミュニケーション」を休憩や雑談と同じ「手が空いたらやるもの」だと勘違いしています。 しかし、チームのパフォーマンスを引き出すのは、明確な業務の一つです。
【聞くためのコンディション作り】また、コミュニケーションの時間を作れたとしても、肝心な時にそのクオリティが低ければ意味がありません。 彼からこんな話を聞きました。 「店舗のスタッフから、新しい商品開発のアイデアを聞いたそうなんですが、その時は心に余裕があったので聞けました。でも、やらないといけない仕事が山積みだったら、きっと聞き流していました……」これこそが本質です。 相手の話を聞くことができる「状態」を自分で作れていないと、どれだけ時間があってもスタッフは心を開きません。 私は「聞くためのコンディション」として、以下の3つの状態を整えるようアドバイスしました。
心: 気がかりや心配事がない状態。
頭: 他の緊急業務のことが気にならず、目の前の相手に集中できる状態。
身体: 疲労や病気がなく、健康な状態。
店長には、この3つの状態が保てていない時は、無理に聞くのではなく「今は別の仕事に集中させてくれ。後で必ず時間を取る」と正直に伝え、自分自身がコンディションを整えてから改めて話を聞く機会を作るよう伝えました。スケジュールに「会話」を組み込み、その会話のために自分自身を整える。 リーダーの働き方は、こうして変わっていくのです。
【コーチの視点】あなたの手帳に、スタッフの名前と「会話のテーマ」は書かれていますか? ただ忙しいだけのリーダーは、スタッフの時間を奪い、自分自身の限界を早めます。 「緊急」の作業をスタッフに任せ、「重要」な対話の時間を死守する。それがリーダーのスケジュール管理術です。
次回は、「聞くための「心・頭・体」を整えていますか?」です。



