第5回 「面倒くさい」を越えた先にチームワークがある

中坊崇嗣

中坊崇嗣

テーマ:スーパー店長育成コーチング実践録



「チームワークを高めろ」と叫ぶだけで、チームが強くなった試しはありません。 チームワークの本質は、個々の「相手への関心」にあります。 しかし、現場のリーダーは目の前の作業に追われ、スタッフ一人ひとりと向き合うことを「面倒くさい」と感じてしまう。 第5回は、その「面倒くささ」こそが、リーダーシップの正念場であるというお話です。

前回、店長との信頼関係が深まった話をしました。 しかし、信頼関係があるだけでは、店舗の数値は上がりません。 真のリーダーシップは、その信頼関係を「現場の行動」に落とし込むことで発揮されます。前回のミーティングで、私は店長に一つの宿題を出していました。 それは、「職場のチームワークを高めるために、相手の意図をつかんでコミュニケーションを取る」ということです。 店長は一人で仕事を抱え込みがちでした。まずは、スタッフ一人ひとりが何を感じ、何を考えて仕事をしているのかを掴む必要があると考えたからです。さて、その宿題の結果はどうだったか。 答えは「やっていない」に近いものでした。「意識はしているんですが、正直、面倒だし、他にやらないといけない緊急の仕事があるし……」店長の本音が漏れました。 相手に興味を持ち、一人ひとりと会話をし、意図を汲み取る。 確かに、これは時間もエネルギーも使う作業です。売場を歩いて品出しをするほうが、よほど手っ取り早い「成果」が見えるかもしれません。しかし、私は店長に厳しい事実を伝えました。「その状態で、どうやってチームワークが生まれるというんだ?」リーダーが「スタッフの意図を汲み取る」という面倒なプロセスを省略すれば、スタッフは「自分は駒として扱われている」と感じます。 指示された作業をこなすだけの軍隊は作れても、主体的に動く「チーム」は絶対に生まれません。私は改めて、宿題を具体化しました。 「来週まで、店舗のスタッフに興味を持って、話をするときは、相手に集中して興味を持ってコミュニケーションをするように」単なる「挨拶」ではいけません。 スタッフの表情、声のトーン、作業のスピード。そういった細かい情報から、その人の意図をつかむ。 「面倒くさい」作業の中に、最高のチームワークを生み出すヒントが隠されています。

【緊急性と重要性】また、店長が抱えていた「他にやらないといけないことがある」という悩みについてもアドバイスをしました。 仕事の優先順位を決めるポイントは、「緊急性」と「重要性」の2軸です。「スタッフの意図を汲み取り、信頼関係を築く」ことは、今すぐの売上には直結しないかもしれませんが、店舗の未来を作る「重要」な仕事です。 一方で、「メールの返信」や「細かい事務作業」は、「緊急」ですが「重要」ではないことも多い。リーダーは、「緊急ではないが、重要なこと」に時間を使うために、「緊急だが重要ではないこと」をスタッフに任せるべきなのです。 面倒くさいことに向き合う時間を作る。それこそが店長の真の仕事です。

【コーチの視点】人間関係の構築において「ショートカット」は存在しません。 スタッフと心を通わせるという「面倒くさい」作業を省略した代償は、チームの崩壊という大きな形で返ってきます。 今日もあなたのスタッフは、何を考え、何に悩んでいるでしょうか? その「面倒」に、リーダーとしての愛を持って向き合ってください。

第6回は、なぜあなたのスケジュールはいつも崩れるのか?です。

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中坊崇嗣
専門家

中坊崇嗣(経営コンサルタント)

株式会社NMR流通総研

経営者の「右腕」的立場で、組織活性化・経営支援・マーケティングの3本柱でコンサルティングを提供。小売経営や事業承継など実体験をもとに、現場を深く理解して施策を提案。企業の強みを生かし、成果を導きます。

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