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商品を買う顧客の「心理」と「脳」と「経済行動」

北林弘行

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テーマ:マーケティング

「商品が多すぎて買うのをあきらめてしまう」という購買行動が増えているという。

実際、オンラインショップでは「買い物カゴ」に入れたままで「買ったつもりになり、満足してしまう」ということも多い。

書店ではレジで購入して、家に帰って本棚に入れて満足する。ということは昔から多いが、この場合は販売につながっており、売り手にとっては売上につながっている。しかし、購買を途中でやめたり、諦められたりするのは機会損失となる。

いったい、人はなぜ商品を買うのか?


テーマ①「顧客のタイプ分析」


業務向けの日用品の提案営業をしているAさん、顧客への提案でスムーズに商談が進む場合とそうでない場合がある。


顧客タイプを考えよう


担当者と話が盛り上がることで商談が成立することも多く、手応えを感じて2年続けてきた。しかし、先輩たちのような大きな案件にはなかなかつながらない。どうすれば規模の大きな案件を獲得できるのかを先輩にアドバイスを求めたが、場数、経験、人脈、運という話ばかりでどうもピンとこない。

相手を知ることについては自分なりにやってきたし、顧客の声に耳を傾けることもそれなりにできているつもりである。

しかし、これらを感覚的にやってきており、これまでのことを整理するにもなにを基準に考えればよいかわからない。自分は外交的で直観力が優位なタイプで行動力には自信がある。

Aさんにどのようなアドバイスをしようか。


2年で商談成約率が高いことや先輩からアドバイスを求める姿勢から、お客さまにも可愛がられるタイプのようだ。大きな案件が決まりづらいのは、先輩たちがいうように経験や人脈も大きな要素かもしれない。しかし、顧客分析や傾聴する力については、まだまだ改善の余地がありそうだ。

特に、顧客分析については、あまり得意とはいえなさそうである。顧客分析をするときにどのような切り口があるか。


よくある分析では、自己主張が強いか弱いか、分析的かノリがいいかの2つで判断する。①行動的で押しの強いコントローラー型、②周囲の雰囲気を大事にし自分の感情は控えるサポーター型、③分析的アプローチで冷静なアナライザ型、④人との活気を好みアイデアをバンバン出すプロモーター型、の4つに分類する。この分析を顧客に当てはめて考えるだけでもアプローチのしやすさは大きく変わる。

実際の商談ではプレゼンテーションとなることが多い。その場合は、相手がどのような点に価値を見出すかを考えておく必要がある。プレゼンテーションにおいて、人はプロセスを瞬間的に行っている。まず、視覚・聴覚・体感などを活用して情報を受けようとアンテナを張る。その受け取った情報を、直感・直観・記憶の目で照らし合わせて視る。視た内容を自身の価値基準で感じたり判断したりする。

提案前の短時間の世間話や雑談での受け答えの場を活かしながら、これらを見ておくことで商談レベルはグッと上がるはずである。



テーマ②「行動を経済する ~不合理性の科学~」



行動経済ってなんだ?


ミクロ経済学を学ばれた方もいらっしゃるかと思う。

たとえば、消費者理論の「需要曲線」などである。
価格と数量の関係で、価格が安くなれば数量が多く売れる。といったようなものだ。

ミクロ経済学にはよく言われる問題点がある。

それは、消費者を合理的経済人とする前提があることだ。
消費者と生産者は自らの利益が最大になるように行動するという前提のために、実際の経済では成立し得ない状況となる場合がある。

こうした問題点が指摘されていることもあり、行動経済学が注目されている。特に、2017年に米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞してからの注目度は高い。
その前提は、そもそも人は経済的な合理性を考えて判断し行動しない。というものである。

たとえば、恋愛のケース。

積極的なアプローチを受けて、はじめてのデートで相手は短い時間しか取れず、
帰り際に「また今度ゆっくりと会おうね」と言って短い時間で切り上げることになった。


あなたはどう思うだろうか。



多くの場合、「今度はいつだろう?」「ゆっくり会えるといいな」と思ってしまう。
もともとこっちにあったはずの主導権が相手に奪われたとは思わない。

合理的な判断とは言えない。

こうした人の不合理な行動を科学する経済学。実践的なビジネスによく役に立つ。




テーマ③「行動の壁」



高い壁


性善説や性悪説という言葉があるが、私は性弱説を信じる。
人はそもそも善でも悪でもなく、弱い生き物であるという考えである。

行動しなければ結果が出ないことはわかっている。

しかし、その行動がなかなか重たいのである。
行動できない理由を正当化してしまう。そして、実際、行動できず結果がでなくてもそれほど困らない。

それほど困らないのではあるが、そのうち、現行に矛盾が生じてくる。それをも正当化できているうちはなんとかなってしまう。しかし、ときに、いよいよそうも言ってられないことがある。
こうした性弱な我々は多少のことでは行動しないのである。


人は「気づかない」「見ない」「読まない」「理解しない」「動かない」。


人にとって行動するというのは、とても面倒で厄介なことである。
だから、自発的に行動する人は強い人に見える。


行動の壁はどうすれば越えることができるのだろうか?

購買行動の壁とはなにか?

という疑問が湧いてくる。

店舗やオンラインショップでの買い物、企業間の商談での購入。

いずれにおいても、まず「知ってもらう」ことから始まる。
ここは、自分が知るシーンを考えると気づきが多い。

消費者とすれば、店舗の看板・店内POP、ネットモールや検索、SNS情報などをきっかけに知る。
企業間では、紹介、展示会・イベント、ネット検索、交流会、相談、SNSを通じたセミナー・会議参加など。
こうして能動的・受動的に得た情報から認知をする。非常に直観的なために認知したという意識はほぼない。




テーマ④「買う理由と3つの脳」


爬虫類脳

脳のなかでは、第一番目の爬虫類的な部分が使われる。

そして、その認知した情報に対して過去の経験や記憶を元に瞬間的に「気になる」「興味がある」「面白そう」「これを買ったらいいことありそう」という感情へとつながる。ここでは、第二番目の哺乳類的な部分が使って「快・不快」「好き・嫌い」を元に「もう少し見てみよう」とか「読んでみようか」と思ったり、対面であれば「話を聞いてみよう」かと思うようになる。

さらに、「もう少し詳しく知りたい」「これを買えばいいことにつながるに違いない」という理解の段階に入るためには、第三番目の人間部分へアプローチする必要がある。ここを突破することができれば、一気に「購買」につながる可能性が高くなる。

これらの結果を出すには、よい情報を提供すると同時に「買いやすさ」を高めることが大切である。

サービス品質を高めることも大切であるが、多くの場合、コスト高になって、自社の利益を損なうか、高価な商品やサービスとなってしまい却って買いづらいものになってしまうことになりがちである。

サービス面・品質面での改善や向上を図る前に「買いやすさ」の工夫のほうが収益効果は高い。

B2Cでは8割、B2Bの製造業でも6割が、スマホで検索される時代に「自社の商品・サービスが顧客にとって、本当に買いやすいか?」も考えてみていただきたい

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北林弘行
専門家

北林弘行(経営コンサルタント)

CooKai株式会社

中小企業なかでも製造業に対しての経営コンサルティングが得意分野。「軸となるしくみ」を核に、マーケティングやブランディング、企画からプロモーションまで多彩なアプローチで業績の向上をサポートします。

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