ものづくりにおいて職人(プロ)と素人の差ってなんだと思いますか?
本当のことをお伝えするので、覚悟してお読みください。
今までのジュエリーに対する皆様のイメージのほとんどは、商業的な理由で流された情報であって本当のことではありません。
例えば皆さんもご存じだと思いますが、日本のバレンタインデーはグリコが日本に合うようにアレンジして広めた情報を元に、みんながそれを信じ込んで習慣化したものにすぎないことは有名な話です。
ジュエリーの話で行きますと、″婚約指輪は給料の3か月分”
というのが有名ですが、
これも商業的なキャッチコピーでして、その当時の結婚適齢期の男性の平均月収が約20万円で、ジュエリー業界は1カラットのダイヤモンドを売りたかったのです。そのころの相場で行くと1カラットの平均単価は60万円でした。
そこで何も知識のない日本人に、婚約指輪は給料の3か月分を送ることが相場ですと、言い切ったキャッチコピーで売り出したことが、一般的な常識になっていったというのが裏話です。
最近はこのような裏話の情報が拡散されたおかげで、相場にこだわることなく購入できる方々も増えてきてますが、知らない方はまだ給料の3か月ぐらいを贈らないといけないと思っている方も結構いらっしゃいます。
そこでどのような対応をするかだけを見ても、そのお店がお客様にどう寄り添っているかがわかりますよね。
お店で話をするときに、お客様ファーストではない情報はほぼセールストークであると思ってくださいね。
最近とても気になることがあります、それは全国からジュエリーの修理の相談が来るのですが、「出来ない。」
と言われることが多すぎるということです。
例えば「ハーフエタニティーはサイズが直せない。」
とか「石が入っているシルバーのリングは直せない。」
とか、「14金や10金は直せない。」
とか、などなどです。
基本的に全て問題なく直せます。
今まで他社で出来ないと言われた修理で出来なかったことなど一度もありません。
物理的に出来ないことはどうしようもありません。例えば冒頭でも注意書きしました中空商品は、曲がったりつぶれたものはほぼ直せません。理由は全体が薄すぎるために、曲がってしまった金属を元に戻す厚みが存在していないためです。
これ以外で直せないものは、割れた石を元に戻すというように物理的に無理なものの場合だけなのです。
フルエタニティーリングも直せるの?ハワイアンジュエリーも直せるの?という声も聞こえてきそうですが、フルエタニティーリングの場合は多少制限がありますが使えるようには出来ます。ハワイアンジュエリーに関しては問題なく直せます。
これが真実です。
ではなぜ直せないと言われてしまうのでしょうか?
出来るというお店と出来ないお店があるのはなぜでしょうか?
それは単純に直せる職人がいるかいないかという問題と、修理を受けるというのはリスクのほうが断然大きいからという理由が大半だと思います。
ジュエリーだけでなく、物は新品を0から作るほうが簡単です。
修理はその製品に関するすべてに精通している必要があり、その知識に伴う経験値も必要になります。
その経験値を持った職人が、日本のバブル以降の職人には非常に少なくなってしまいました。
私が職人を始めた頃は、フルエタニティーは普通には受けてはいませんでしたが、それ以外は普通のことでした。環境がたまたまそういうところだったというのもあるとは思いますが、それでも出来る職人は多かったと思います。
ですがバブルの時に、質より量や見栄えや速さだけで売れてしまったため、技術よりも量産性が重視されたことで職人にも求められることが変わってしまいました。その為に作業的な工程しかできない職人が量産されてしまい現状に至っているため、修理が出来る職人が本当に少なくなってしまいました。
ですが、ジュエリーの修理が出来ないということではなく、出来ない人が少ないだけなのです。ここがとっても重要です。ジュエリーは何でも修理できる貴金属で出来ているから高価なのです。
修理はリスクが伴うことは確かです。その為にわざわざ他社の製品をリスクを負ってまで修理をする必要もない為、出来る職人がいても他社の製品の修理は受けないお店も多いと思います。この点もしょうがないとは思います。そのリスクを理解してくれる知識があるお客様も限りなく少ないのも現状です。
修理を受けて挑戦し、失敗したら工賃に全く見合わない保証を求められます。もし説明をきちんとしていたとしても、契約書を交わしたりまではしないので、実際に壊れてしまったりした場合の責任は追及されてしまいます。その結果悪い印象までついたりするリスクまである為、受けないほうが賢明だという判断は致し方ない部分もあります。
当店でお受けする際も、かなりいろいろな角度からやり方やリスクをご説明して、内容をご理解いただいてからお受けいたします。
また修理の費用が今まで安すぎるという問題もありました。
修理のほうが難しくてリスクがあるのに工賃が安いとなると、もっと受けることが出来なくなります。だからと言って普通に工賃を言うと高いというマイナスのイメージがついたりもするので、受けないという会社も多いのが現状です。
それではジュエリーの楽しさが減ってしまうので、当店はきちんと内容を説明して工賃もきちんといただくということをいたしております。
こういうことをきちんと知っていけば、今まで出来ないとされていることも、時間と費用と心をかければ普通に出来るものに変わっていきます。
職人も育つ環境が戻ってくるかもしれません。
今の日本の宝飾業界は職人不足で、現場的に見ても勤勉で繊細なことが得意な日本人というイメージは全然ありません。
とても悲しいのですが、それを復活させるためにも本当の情報を世の中に公表して、受ける側も頼む側も互いに敬う環境が必要だと思っております。
この情報社会でただある情報をうのみにするのではなく、真実の情報を探し判断していく力も必要な気がします。
また少しでもそのお役に立てれば幸いです。
もしジュエリーの対する疑問や質問などありましたら、お気軽に質問・ご相談ください。
いつでもお待ちしております。
JewelrySalonPlanet
広瀬 健太郎