本の出版を記念して~僕が建築を志したワケ その2~
当時、職場には新人を教育するシステムがなかったため、私は行き当たりばったりで仕事を命じられては壁にぶつかるという日々を送っていました。
例えば研修の一環としてある建築物の施工図を作成するよう命じられたときのことです。
高校で建築の基礎を勉強したものの、やはりそれだけの知識でいきなり描けるわけもありません。
分からなければ設計士である先輩社員に尋ねるよう言われていたので、私はよく先輩に質問をしていました。ところが、どうにも要領を得た答えが返ってこないのです。
施工図を描ける別の先輩社員に相談してみたところ、「彼は設計図の専門家だから、施工図のことなど分からないよ」とあっさり告げられてしまいました。
「あの人に聞けという指示はなんじゃったんじゃ……?」と首をかしげながらも、最初はわざとそうしたスパルタ式の教育をしているのだと考えました。
しかし、仕事に慣れるうちに分かってきたのです。この会社は体質が古くて社内は非合理的な仕組みだらけだったのです。
機材も古く、そのせいで生産性がずいぶん低下しているのは明らかです。
「なんとかせにゃいけん」
~~~つづく~~~