【遮熱材の素晴らしさ】断熱材だけが万能のウソ!?
夏の夜が暑いのは、ヒートアイランド現象と断熱材を伝導する熱によって、なかなか室温が下がらないためです。
熱は、伝導、対流、輻射の形で移動します。伝導は媒質を伝い、対流は気体に乗って、輻射は熱が電磁波となって伝わります。
室内の暑気防止に期待されているのが遮熱素材で、遮熱塗料、Low-Eガラス、遮熱シートがあります。
夏の夜に室内温度が下がらない理由
今年も岡山の夏は暑かったですね。気象庁によると、今夏の岡山市の猛暑日は22日、真夏日は71日もあったそうです。最低気温が25度以上の日は29日もありました。100年前は、猛暑日なんて数日しかなかったことを考えると、温暖化はこの地域でも確実に進んでいるようです。
特に都市部は、ヒートアイランド現象のせいで、夜になっても気温が下がらないことが多くなっています。これは、都市化によって田畑や林地が減る一方、蓄熱しやすいアスファルト道路や高層商業ビルが激増したことが原因です。
こうした人工物は、日中は太陽の熱をためこみ、夜になると外へと放出します。さらに、エアコン室外機や自動車の排熱が拍車をかけ、深夜でも暑苦しい状態になります。
「夜は涼しくなるだろう」と油断して、熱帯夜のときに熱中症にかかる人が増えていますので、注意してください。特に、夜どおしクーラーをつけておくのが好きでなく、寝入った時にタイマーが切れる設定にしている場合は、要注意です。
室内は、建物の屋根や外壁が直射日光をさえぎるし、壁の中には断熱材があるから「大丈夫だろう」と思うかもしれません。
しかし、部屋の中は意外と熱がこもりやすい空間なのです。というのも、直射日光を浴びる屋根や外壁は、50~80℃もの熱を帯びます。それが夜になると、熱伝導や輻射という形でじわじわと室内を暑くしていきます。ヒートアイランドとあいまって、夏の夜は室温がなかなか下がらない理由はこれです。
伝導、対流、輻射の違い
熱は、伝導、対流、輻射のいずれかの形でよそへ移動します。この違いはわかりにくので、ちょっと説明しましょう。
●伝導
固体、液体、気体を問わず、何らかの「もの」(媒質)をつたって熱が移動する(流れる)のが伝導です。熱湯の入ったヤカンの外側が熱いのは、伝導によってお湯の熱が金属の外側へ移動したためです。
●対流
空気の移動に乗って熱がよそへと行くのが、対流です。ファンヒーターやエアコンが、送風しながら熱や冷気を送り出せるのは、対流があるおかげです。
●輻射
電磁波として熱を放射するのが輻射です。輻射は、たとえ真空があっても熱を伝えます。太陽からストーブまで、およそ熱を発するものすべては輻射熱を放射しています。
断熱材は伝導と対流による熱の伝わりをシャットアウトしますが、輻射熱は完全には防げません。
遮熱で室内温度上昇を防止?
断熱材に代表されるように、これまでの建物への熱阻止の考え方は、主として伝導で移動してくる熱を食い止めるというものでした。
対して、最近登場してきた概念が遮熱です。遮熱は、太陽の輻射を外へと反射してしまい、室内に熱が入らないようにするものです。
断熱は、熱伝導と対流による熱の伝わりを防ぐもの、遮熱は輻射を防ぐというのが、両者の大きな相違です。
遮熱はまだ新しい考え方であり、本格的に建物に採用されるようになったのは、最近のことですが、ヒートアイランドなどの暑気防止に期待されています。
特に、日照時間の長い岡山を含む瀬戸内地方では、遮熱が適しています。
遮熱塗料、Low-Eガラス、遮熱シートについて
住居に応用されている遮熱素材として、主に遮熱塗料、Low-Eガラス、遮熱シートがあります。
●遮熱塗料(高日射反射率塗料)
屋根や外壁に塗ることで太陽光線(近赤外線領域)を反射してしまい、屋根と外壁の温度上昇を抑える働きをもった塗料です。
結果として、室温の上昇を抑え、冷房費の節約につながると言われています。しかし塗膜は劣化するため十数年おきに塗り直す必要がある事、さらに塗膜での遮熱では限界があるため当社では推奨していません。
●Low-Eガラス
複層ガラスに極薄の金属膜を貼り付けた、Low-Eガラスが最近注目されています。
これには、遮熱型と一般型(断熱型)の2種類あります。
遮熱型は、室内側に金属膜を貼り付けたもので、夏の日射熱を約半分カットします。
一般型は、屋外側に金属膜を貼り付けたもので、室内の熱が外に逃げていくのを防ぐものです。
前者は、東北以南の都市部で多く導入され、後者は寒冷地向けの仕様です。
●遮熱シート
アルミ合金などでできた薄いシートを、屋根下や壁の内部に張りめぐらすことで、室内への輻射熱を大幅に減らすのが遮熱シートです。
遮熱シートはいくつかのメーカーから発売されていますが、サンオリエントでは、米国で多くの実績を有しているリフレクティックスという遮熱シートを採用しており、施主の方々へおすすめしています。
断熱と遮熱の違いや、遮熱シートの詳しい説明については、別のコラムでお話しいたしますので、ぜひご覧ください。