遮音性の高さが特徴。RC造の防音効果について
RC造住宅の坪単価は90~100万円となり、木造の60万円前後、S造の80万円前後に比べて割高です。
RC造が高いのは、地盤改良、多くの専門職者の必要性、手間がかかり工期が長くなるためです。
光熱費や保険料も含めたライフサイクルコストで見れば、RC造は一生の買い物としては、ぐっとリーズナブルになります。
RC造住宅建築のコスト比較
しばしば高いと言われるRC造住宅ですが、ここで坪単価の比較対照してみましょう。
●木造住宅(在来工法)
在来工法で造る木造住宅は、日本で最もシェアの高い、われわれにとって一番馴染んでいるものです。かつては多かった平屋建ては少なくなり、2階建てが主流ですが、3階建ても増えてきています。他に2×4工法がありますが、シェアは低いです。
坪単価は50万円前後です。これは岡山の実勢値で、北海道・東北でやや安くなり、逆に首都圏・関西では高くなります。いずれにせよ、木材という軽量な建材がメインのため、施工しやすく、他と比べてリーズナブルです。
●S造
S造の「S」とは、Steelつまり鋼鉄のことで、柱と梁などの主要構造部に鋼材が用いられています。ラーメン構造では耐力壁が不要であり、長い梁と少ない柱の数の建築物を造れることから、東京スカイツリーのような超高層建築物はS造です。
鋼材の厚みに応じて、軽量鉄骨造と重量鉄骨造の別があります。軽量鉄骨造はいわゆるプレハブ工法として、名のある大手住宅メーカーが採用しているものです。重量鉄骨造は大がかりな商業施設でもっぱら用いられてきましたが、最近は住宅でも採用するところが増えています。寿命や遮音性能などの点で、木造とRC造の中間に位置します。坪単価は60万円前後です。
●RC造
コンクリートの圧縮強度の強さと鉄筋がもつ引っ張り強度の強さ、そして両者の不燃性を組み合わせて、地震や火災に対して抜群の抵抗力を持った工法です。
シェアの点では木造住宅に見劣りするものの、東日本大震災以降はその堅牢さが注目され、これからの普及が期待されます。坪単価は70~90万円程度です。
以上の坪単価は、あくまで目安とお考えください。坪単価とは、本体工事費を坪面積で割ったものです。本体工事費には、地盤改良などの個別工事費、外構、庭、駐車場といった付帯工事費は含まれておらず、また本体工事費のカバーする範囲は工務店によっても微妙な差異があるためです。
RC造住宅が高いわけ
RC造住宅(2階建て)は、施主様に契約をいただいた後、以下のプロセスを経て竣工いたします。
(1)基礎工事
杭打ち・地盤改良を行って、基礎をつくります。
(2)1階床工事
1階部分の床を構築します。この際に、床下部分に配管類や電気の配線も行います。
(3)1階の型枠・鉄筋組み立て
1階の壁と2階の床を構築します。
(4)1階のコンクリート打設
1階部分のコンクリートを流し込みます。
(5)2階の型枠・鉄筋組み立て
2階の壁と屋根を構築します。
(6)2階のコンクリート打設
2階部分のコンクリートを流し込みます。
(7)内装工事
サッシ・窓取り付け~内壁材施工に至るまで、内部仕上げを行います。
(8)外装工事
外断熱の断熱材の施工や、タイル・外壁塗装を行います。
(9)検査
施工者と第三者機関による検査を経たのち、引き渡しとなります。
一見して、建築のプロセスは木造と大きく変わるわけではなさそう、と思われるかもしれません。しかし、RC造は自重が相当あるため、地盤改良・基礎工事が重要となり、木造よりもコストがかかってきます。
また、鉄筋工やコンクリート打設工といった木造住宅づくりにはない、専門職者が必要となり、手間が膨大なため工期もやや長くかかります。このため、どうしても費用は割高となるのです。
ライフサイクルコストでみたRC造
ライフサイクルコストで見ると、RC造は高い買い物なのでしょうか?
ライフサイクルコストとは、竣工したあとに要する建物にかかるさまざまな経費のことです。生涯費用とも言いますが、これにはメンテナンス、リフォーム、光熱費などが多くを占めます。具体的なものを挙げれば、内壁のクロス、外壁塗装、配管類の劣化に伴う更新があり、家族構成やライフスタイルの変化に合わせた間取り変更、バリアフリー化改修などがあります。
木造住宅については、長期優良住宅のように相当期間住めるようにする施策が始まりました。しかし、空き家問題を見ればわかるように、まだまだ多くの人にとって、木造住宅は「スクラップ&ビルドで世代交代させるもの」「早くに古びてしまうもの」という考えが浸透しているのも事実でしょう。
これに対してRC造は、「ずっと長く使うもの」という意識が定着しています。30年で解体・建て直す木造住宅のコストと、それより長く住むRC造を比べた場合、後者の方が総合的な費用が抑えられると言えるでしょう。
また、RC造は高断熱が確保されているため、光熱費の点では安くあがり、シロアリのような木造特有のトラブルが起きにくい、といったことが期待できます(RC造でも木部があり、シロアリのリスクはゼロではありません)。担保や賃貸化のような資産活用の観点でも、RC造は有利です。
そして細かい点になりますが、RC造はその耐火性能の高さから、火災保険料率は木造の数分の一で済みます。万が一、火災に遭っても、RC造の焼損面積は木造に比して20%未満と言われています。
木造なら全焼に近い損害が、RC造なら一間の損害で済む計算です。耐震性にも優れているので、木造であれば1階がひしゃげてしまうような大地震が起きても、RC造は壁の剥離程度で収まる可能性があります。被害は保険金として戻ってくるでしょうが、失われた思い出の品は戻ってきません。非常に長い期間で考えれば、火災も震災もありえない他人事ではありません。
こうしてみれば、RC造は初期費用こそかかりますが、ライフサイクルコストも考えあわせれば、比較的リーズナブルな一生の買い物と言えるでしょう。