本の出版を記念して~僕が建築を志したワケ その3~
法定耐用年数で見ると、木造に比べRC造の耐用年数は2倍を超え、なおかつ他のどの建材の建築物よりも長持ちすると認識されています。
実際の寿命についても、RC造は他よりも抜きん出ています。リフォームとリノベーションにより、「100年は住める」といった可能性を持つのがRC造の魅力です。
RC造はメンテナンスフリーではなく、クラックの発生や塗装・屋上防水の劣化に対し適切な補修をする必要があります。
RC造住宅の法定耐用年数
事業・住宅に用いられる建物やそれに付帯する設備は、税法上は時の経過によってその価値が減っていく資産とみなされます(減価償却資産)。
減価償却資産は、たとえ取得時に購入費用を全額支払っていても、取得した年度の必要経費とみなさず、代わりに使用できる期間(使用可能期間)にわたり分割して必要経費として計上する決まりになっています。
この使用可能期間は、各自勝手に決めてよいわけでなく、財務省の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で種類別に定められています。ここで決められた資産の耐用年数を「法定耐用年数」と呼びます。
住宅用の建物については、主要建材によって以下のとおり、法定耐用年数が規定されています。
●木造、合成樹脂造―22年
●木骨モルタル造―20年
●鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造、RC造―47年
●れんが造、石造、ブロック造―38年
●金属(鉄骨)造―34年
この数値は、建物が新築してから取り壊されるまでの統計年数を目安に、金融機関が資産価値を計上する際の根拠・慣行などを加味して求めたものです。
ご覧のとおり、木造に比べRC造は2倍を超え、他のどのカテゴリーよりも法定耐用年数は長いのです。国や金融機関は、RC造の耐用年数は比較的長いものであると認識しています。
RC造住宅の実際の寿命の目安
法定耐用年数は、実際の建物の「寿命」とは異なることに留意してください。
木造が22年で、RC造が47年で、突然崩れてしまうわけでも、住めないほど劣化するわけでもありません。とはいえ、統計データに基づく年数であり、適当に決めたものでもありません。
日本では、住まいの寿命が30年程度と、アメリカやヨーロッパに比べて短いサイクルになりつつあります。
高度経済成長からバブル期までの間は年功序列で収入が上がったこと、ホームビルダーの提供する住宅がどんどん改善され魅力的になったこと、世帯主の持ち家を取得することへのこだわりが、住宅のスクラップ&ビルドを促してきました。
そのため、まだまだ問題なく住める住宅が30年で取り壊されたのです。米国の約50年、イギリスの約70年という統計データと比べても、日本の住宅の寿命は短いのが見てとれます。
こうした風潮も、最近は変わりつつあります。多くの人が、長く住める家を求めるようになり、一戸建て・マンションを問わずリフォームが盛んになりました。
行政サイドも、住宅性能表示や長期優良住宅といった、長く住める家を後押しする政策を打ち出しています。
RC造住宅は、短めに設定している法定耐用年数ですら、47年と長い年数が設けられており、本質的に寿命が長いものです。住宅設備や配管類は何十年も持ちませんので、交換・リフォームを定期的に実施し、数十年のスパンで大規模なリノベーションを行えば、100年は住めると考えます。
築80年のRC造をリノベーションによって生まれ変わらせ、さらに何十年か居住可能となった例もあるくらいです。
ただし、これには適時のメンテナンスが不可欠です。
RC造住宅に必要なメンテナンス
RC造はメンテナンスフリーではありません。コンクリートの耐用年数は長いですが、それもメンテナンスあってのものです。
以下、状況別にメンテナンスの方法について見てみましょう。
●コンクリートのクラック
コンクリートは、長い年数をかけてわずかに収縮や膨張をしていきます。
これによって、コンクリート壁面にクラック(亀裂)が生じます。非常に細いヘアークラックであれば、美観の点ではともかく構造面ではさほど問題ありません。これが名刺を差し込めるほどの幅であれば、雨水が内部に浸透するため、補修する必要が出てきます。
微細なクラックについては、微弾性フィラーまたはシーリング材で埋めます。幅のあるクラックの場合は、もう少し手がかかるVカット工法にします。これは、クラックに沿ってV字形の溝を掘り、そこにシーリング材を充填するというものです。
シーリング材そのものも、5~10年で劣化しますので、再充填のメンテナンスが必要です。
●コンクリートの欠落
クラックを放置するとコンクリート内部に雨水が侵入し、鉄筋の腐食を招きます。腐食に伴い鉄筋は膨張して、コンクリートを押し出し、結果として外壁部分が欠落します。
ごく軽微なものはポリマーセメントモルタルで、もっと深刻なものはエポキシ樹脂モルタルで充填します。錆びた鉄筋は防錆処理を施します。
●外壁塗装・鉄部塗装
下地の劣化を防止するため塗装が施されていますが、この塗装自体が十数年で耐用年数を迎えます(鉄部塗装は、通常はもっと早くに劣化)。そのままにしておけば、美観だけでなく、下地が外部環境の悪影響を受け始めますので、塗り直しが必要です。
●屋上防水
雨をまともに受ける屋上は、雨漏りを防止するため防水処理が施されています。防水処理方法は、アスファルト、シート、ウレタン塗膜防水などありますが、いずれも何十年ももつものではありません。劣化の程度に応じて、部分補修ないしは貼り換えとなります。