シックハウス症候群の主な症状と判断基準
ホルムアルデヒドについては、内装材での使用にあたって厳格な規制がされています。発散速度が非常に低いものは、JIS規格でF☆☆☆☆のランクがつきます。
建材関連の業界団体でも、自主規制という形で、シックハウス原因物質の内装材使用制限を設けています。
新築・リフォーム時に施主自身で行える内装材制限として、超低VOCのみの建材を選んだり、VOCを含有しない・吸収分解する自然素材を導入する方法があります。
政府による内装材規制
数あるVOCの中でもホルムアルデヒドは、完全に禁止こそされていませんが、政府によって厳格な内装材規制がなされています。具体的な規制は以下のとおりです。
●発散速度に応じた規制
・第一種ホルムアルデヒト発散建築材料
発散速度が120μg/m2hを超過する建材が該当しますが、この速度の建材は内装材には使えません。
・第二種ホルムアルデヒト発散建築材料
発散速度が20超~120μg/m2hの建材が該当します。床面積の3割を上限として施工が許されます。JIS規格でF☆☆のランクです。
・第三種ホルムアルデヒト発散建築材料
発散速度が5超~20μg/m2hの建材が該当します。床面積の2倍を上限として施工が許されます。JIS規格でF☆☆☆のランクです。
・規制対象外
発散速度が5μg/m2h未満の建材が該当します。上限なく施工が許されます。JIS規格でF☆☆☆☆のランクです。
●換気設備の設置義務
居室では0.5回/時以上(1時間で部屋容積の半分が換気)の性能をもった24時間換気設備が必要です。
これは仮に、ホルムアルデヒドがゼロの住宅でも義務づけられます。家具などからも発散される可能性を考慮してのことですが、すき間の多い古民家などは対象外です。
●天井裏、床下、収納スペース内部材に関する規制
F☆☆☆かF☆☆☆☆の建材を使うか、気密層や通気止めを処置して居室へホルムアルデヒドが流入しないようにするか、機械式換気設備を設けなくてはなりません。
2000年より始まった住宅性能表示制度では、竣工時にホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの濃度を測定する項目があります。ただしこれは任意です(ちなみに百貨店やオフィスのような面積の大きい建築物では、建設・改修時のホルムアルデヒドの測定は義務付けられています)。
業界による内装材規制
建材にかかるさまざまな業界団体も、内装材使用の自主規制というかたちでシックハウス対策を行っています。
●壁紙工業会
SV規格とよぶ独自の規制を定め、塩化ビニールや紙などのクロスについて、ホルムアルデヒド放散量の上限を設けています。
●押出発泡ポリスチレン工業会
トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの4種のVOCについて独自の放散速度基準値を定めています。
2016年4月時点で、ダウ化工(株)のスタイロフォーム、(株)JSPのミラフォーム、(株)カネカのカネライトフォームが、4VOC基準適合の登録製品となっています。
●日本家具産業振興会
国産家具表示認定制度をもうけ、VOC含有量がF☆☆☆☆ランクのみの国産材で製作した家具の流通・普及をはかっています。
施主自身で行える内装材使用制限
上記のように、政府や業界団体の尽力によって、シックハウス症候群が騒がれた2000年前後に比べ、今の状況はかなり改善されているといえます。
しかし、VOCやカビ・ダニなど種々の要因が、完全に消え去ったわけでもありません。
それに、VOCは印刷物、衣類、洗剤、ゴム製品など、建材以外にも使われています。そこで、少しでもその要因を減らすための施主さまの取り組みも必要になってきます。
これから家を建てる、あるいはリフォームするのであれば、自然素材の床材・壁材とし、塗料もできるだけ自然由来(それが施工上難しければ水性塗料)のものを使いたいものです。
●畳
畳には、自然素材の良さを感じられるイメージがありますが、ダニ発生を防ぐ防虫加工紙が縫い込まれている場合、防虫剤にVOCが含有されている可能性があります。
また中国製の「化学畳」が出まわっていますが、これはポリスチレンフォームが芯材です。最近は、超低VOCで植物のみを原料とした害虫忌避剤を用いた畳も出ていますので、そういった商品を選ぶようにしましょう。
●フローリング
合板、パーティクルボード、MDF、集成材を材料としたものは、いずれもVOCを含有する接着剤が使われています。
超低VOCであるか、接着剤自体が使用されていない無垢材フローリングを選びましょう。無垢材は、調湿効果も有するためベターに思えますが、一部の木材は、エタノールと接触することでアセトアルデヒドを放散するため注意が必要です。
●壁材
以前のコラムでも取り上げた「幻の漆喰」は、それ自体が自然素材であるだけでなく、ホルムアルデヒドを吸収する効果を期待することができます。
漆喰と並んで、特にDIYで人気のある珪藻土は、バインダー(固化材)として合成樹脂が含有されているものが多く出まわっています。こうした商品は調湿機能も失われているので、要注意です。
クロスにこだわりたい場合、再生紙やケナフといった自然素材で作られたものがいくつか発売されているので、その中から検討されるとよいでしょう。