壁紙の上から漆喰を塗る内装リフォームの手順
カビは、気温、湿度、栄養、酸素の4要素が満たされると増殖します。現代の住宅は気密性が高くカビが生育しやすい環境なので、注意が必要です。
高アルカリ性の漆喰には殺菌作用がありますが、それでも過度の湿気や栄養分の付着によって、漆喰にカビが生えることはあります。
換気で室内湿度を抑える、水回りのケアをする、壁についた調味液はすぐに拭き取るなどを行って漆喰壁のカビを予防できます。
カビが生えるメカニズム
カビの胞子は、どんな場所でも浮遊しており、諸条件が満たされればカビが生えてきます。そして、現代的な住宅と生活環境は、カビが生えやすい状況をもたらしています。それはどうしてでしょうか?
カビが生育するには、気温、湿度、栄養分、酸素の、いわゆる生育4要素を満たす必要があります。
●気温
カビは15~30℃という、広い温度範囲で生育します。特に20℃を超えるあたりから爆発的な繁殖をもたらし、28℃が好適な温度です。
●湿度
通常は相対湿度80%以上が繁殖に適しています。最近問題になっている好乾性のカビだと、70~80%の湿度でも生えてきます。
●栄養
あらゆる有機物、飛びはねた料理汁から湿った木材や紙、ホコリや手垢、有機塗料に至るまで、カビはなんでも栄養源にします。
●酸素
嫌気性のカビもいますが、一般的なカビの生育には酸素が必要です。ちなみに、加工食品の袋に入っている脱酸素剤は、鮮度保持の目的もありますが、カビ防止のためでもあります。もっとも、住環境において酸素のないところはないでしょう。
カビ生育4要素が満たされると、栄養物の付着した表面に付いた胞子は菌糸を伸ばしはじめ、やがて人目にはっきり分かるほどのカビのコロニーとなります。
現代的な住宅は気密性が高く、温度と湿度の面でカビが繁殖しやすい環境を提供しています。
以前は、カビというと夏のイメージが強くあったと思いますが、今は冬期結露がクローズアップされたせいか冬の印象が勝っています。いずれにしても、カビは1年を通じて生える可能性があります。
室内に生えたカビを、「たかがカビ」と放置しておくと、台所の果物などの食品がカビ害を受けやすくなるだけでなく、人への健康被害のリスクが出てきます。
代表的な健康被害は、アレルギー喘息やシックハウス症候群です。
深刻なものとなると、病人やお年寄りなど免疫力が低下した人が日和見感染症にかかり、命が危険にさらされることもあるのです。
漆喰の吸湿性とカビが生える条件・予防
漆喰壁を顕微鏡で見ると、ミクロの多孔質構造になっていることがわかりますが、これが空気中の過度の湿気を吸収します(吸湿性)。逆に湿度が低くなると放出します。漆喰の吸湿性のおかげで、多湿を好むカビの発生を抑えることができるわけです。
ですが、吸湿できる限度を超えて、室内の湿度がいつまでも高いままですと、カビは容赦なく生えてきますので注意が必要です。つまり、漆喰の効果ばかりをあてにするのでなく、ちゃんと換気をしなくていけません。
またカビは、空気の流れのほとんどない所を好む性質があります。そのため、漆喰壁と大きな家具の隙間は、要注意スポットです。「大掃除で家具をどかしたら、壁にうっすらと黒カビが生えていた」ということは少なくありません。
漆喰自体は強アルカリ性で、菌類の細胞を破壊するパワーを持っていますが、それも程度問題です。壁に栄養分が付着し、それが十分な厚みを持っていれば、カビの温床になりえます。
漆喰外壁も当然、カビとは無縁ではありません。雨に塗れると、雨水に含まれる有機物をエサに、ヘアークラックを根城にしてカビが出ることがあります。
昔の住宅は長い軒のおかげで、壁が雨から守られていましたが、最近は短い軒が多いので注意がいります。
漆喰壁のカビを予防するには、既に述べた換気に加え、水回りのケアが重要です。
例えば、キッチンの三角コーナーや食器ラックの水受けなど、常に濡れやすい箇所はマメに水切りしましょう。
浴室内は、できるだけスポンジやシャンプー容器を置かず、使わない時は乾燥した場所に移しておく…など対策をとってください。もちろん、漆喰壁に調味液などがついたら、すぐに拭き取るよう心がけましょう。
漆喰壁のカビの除去
漆喰壁の表面的なカビは、スーパーでも売っている塩素系のカビ取り剤で除去できます。外壁については、カビの再発生防止のため、その後で漆喰専用の撥水剤を塗ります。
クラック内部にまでカビが発生している場合は、カビを取り除いた後に、専門業者による塗り替えが必要となることがあります。そうしないと、短期間で繰り返しカビが繁殖する可能性が高いです。
「幻の漆喰」とカビ
前々回のコラムで紹介した、当社が採用している「幻の漆喰」は、カビに対する耐久性が強化されています。従来型の漆喰の欠点として、菌類により日陰の部分が緑色化・黒色化することがあげられますが、光熱触媒機能でそれらの軽減を目指しています。