大人ピアノ指導法:多くのピアノの先生が陥りやすい「6つの落とし穴」
大人ピアノ指導法:中高年がピアノを始める時に抱える「マイナス」とは? 〜5つのキーワードで読み解く〜
子どもはゼロ出発、中高年はマイナス出発
以前からお伝えしているように、中高年の方がピアノを始める時には「マイナス出発」になりやすいという特徴があります。では、具体的にどのようなことがマイナスになっているのでしょうか。今回は、その要因を5つのキーワードでお伝えします。
子どもの生徒さんは、まさに「ゼロ出発」です。「ちょっと鍵盤を弾いてみてください」とお伝えすると、ポーン、ジャンジャンジャンと、躊躇なく、むしろ楽しみながら弾いてくれます。
ところが中高年の方はというと、ものすごく躊躇されることが多いのです。鍵盤を一音弾くだけでも「本当にいいんですか?」とおっしゃる方も。そこには、さまざまな思いが湧き起こっているのだと感じます。
[大見出し]5つのマイナス要因[大中見出し]
まず、キーワードをご紹介します。
①楽譜 ②指・頭・体力 ③鍵盤 ④怖い ⑤機会
では、一つずつ見ていきましょう。
①楽譜
「楽譜が読めない」「楽譜が読みにくい」——長年そう感じてきた方が、本当にたくさんいらっしゃいます。この思いが積み重なって、ピアノに対するマイナスのイメージが蓄積されていきます。
②指・頭・体力
年齢を重ねるにつれて、指の動き・記憶力・体力といった面で、若い頃と変化を感じる方も多いかと思います。「もう歳だから無理かも…」という気持ちは、非常によくあることです。
③鍵盤
らくらくピアノでは鍵盤シールを活用しますが、それでも「今弾いたのは合っている音なのかな?」「この鍵盤の位置は正しいのかな?」と確かめながら弾かれる方はとても多いです。
以前、受講生さんから「白と黒の鍵盤以外に色はないんですか?」とお聞きになった方もいらっしゃいました。それほどまでに、鍵盤に対して不安を感じていらっしゃるのだと、改めて実感したエピソードです。
④怖い
弾ける・弾けないという話以前に、ピアノという楽器そのものを見た瞬間に「あ、私には…」と感じてしまう方もいらっしゃいます。まるで苦手な虫を見た時のように、パッと見ただけで体がすくんでしまうような感覚——それがピアノへの「恐怖感」です。
⑤機会
子ども時代には、学校の音楽の授業や校歌の合唱など、意識しなくても音楽に触れる機会が自然にあります。しかし大人になると、自ら動かなければ、そういった機会はほとんどありません。「ずっと弾きたかったけど、きっかけがなかった」という方が多いのは、まさにこのためです。
マイナスは「足し算×年数」で蓄積される
ここで特に意識していただきたいのが、これらのマイナスの気持ちは足し算で積み重なり、それが長い年月をかけて大きくなっていくということです。
「30年前からピアノを弾きたかった」「子どもの頃、先生にこう言われた」「中学の時にあのことがあって…」——70代、80代の方が、何十年も前の出来事をまるで昨日のことのように口にされることがあります。それほど深く、マイナスの記憶が心に刻まれているのです。
マイナスの要因は一つではありません。今回お伝えした5つが複合的に重なり、それが年数分だけ積み上がっているということを、ぜひ知っておいてください。
ピアノの先生へ——「楽譜が…」の裏に隠れているもの
これをお伝えしたかった理由があります。
最近の楽譜には読み仮名がついていたり、弾きやすいアレンジのものが増えています。そのため、ピアノの先生が「この楽譜なら大丈夫ですよ」とおっしゃった時に、中高年の生徒さんが「でも、楽譜が…」とつぶやかれることがあります。
でも、その「楽譜が…」の言葉の裏には、楽譜以外にも、鍵盤への不安、機会のなさ、長年の恐怖感など、4つも5つものマイナスが隠れているのです。
そんな時、「そうですよね、機会がなかったんですよね」と、もう一つの要素をさりげなく言葉にしてあげると、「あ、この先生はわかってくださる」と、心をほっと開いてくださいます。
これは特に体験会の場面でとても大切なことです。
ぜひ覚えておいてくださいね。


