Mybestpro Members

若松慶隆プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

【連載】檀家とは?~その2《お寺と檀家さん、それぞれの本音》

若松慶隆

若松慶隆


その1《檀家制度の成り立ちと現在地》の続きです。
前回は、

➀檀家制度の発端と現状
➁檀家制度の名残が色濃い理由
③法的に寺檀関係が成立するケース
➃実際の寺檀関係例

の順に、「いかに寺檀関係はお互いの信頼関係で成り立っているか」を主にお話しました。
今回は、その信頼関係のあいまいさ故に起こっているトラブルや、その解決策・予防策を中心にお話いたします。

⑤ボタンの掛け違い例
➅高まる檀家アレルギー
➆離檀トラブルが起きる理由
⑧離檀をされる住職の気持ち
⑨入檀をされる住職の気持ち
(⑩~ 次回)


⑤ボタンの掛け違い例
ではここで「信頼関係」の話に戻ります。
・我が家はこのお寺さんの檀家だと思っている
・このお家は我が寺の檀家さんだと思っている
の両立が必要だと申しましたが、ここがズレるとボタンの掛け違いを起こしてしまいます。
知っている事例をいくつか挙げます。

■お葬式だけ頼んだつもりが檀家認定されていた
急なお葬式。とりあえず葬儀だけをお願いしたつもり(=檀家になるつもりはなかった)なのに、年会費の請求や年忌法事の案内が来て困惑。特に大修繕の寄附依頼が来るケース。
これはよくあるケースです。
詳しくは後になりますが、葬儀・法事だけはお願いしたい、だけど檀家にはなりたくない、はなかなか難しいですので注意が必要です。

■新家(しんや)・分家(ぶんけ)の解釈
新家とは本家(ほんけ)から独立して新しく築かれた家庭のことです(多くは長男が本家を継ぎ、次男三男が新家を築く)。
通念上(という言葉が適切か自信ありませんが…)、新家は基本的に宗教フリーだと認識されていると思いますし、お寺の側も多くはそうです。
ただし一部には「新家も本家と同じくX寺の檀家であって当然だ」という認識の住職さんも居られます。新家にも檀家としての負担を求めているお寺も実際あります。
「うちにはまだ仏様がないのに…」と言わがちですが「先祖の無い人は居ない」という主張。解釈として正しくても個人的にはこれはやり過ぎ、せいぜい将来的に檀家になってもらえる努力をしていくくらいかなと思います(ただし、その家がA地区内にあるか否かで解釈は変わって来るとは思います)。

■寺院墓地にお墓を持っていないから檀家ではないと誤認されるケース
これは墓じまい報道から生まれた誤解と言って過言ではないです。
実際に報道が出始めてから相談案件増えましたので。
墓じまい報道で用いられるケースは「檀家=寺院墓地所有」とみなされる大都市部の極一部のお寺。その他大半の地方は、寺院墓地、共同墓地(みなし墓地)、民間霊園などいろんな選択肢の中でお墓を所有しています。
なので報道通りに考えると、「我が家はX寺霊園にお墓持ってないからX寺の檀家ではない」「勝手に抜けてOK」という解釈になります。
これはトラブルの元です。

他にも様々なケースがありますが、3つ例を挙げました。

➅高まる檀家アレルギー
世間の「檀家アレルギー」は年々高まっていると感じます。
檀家アレルギーとは「檀家にはなりたくないこと」とします。
檀家になると、お金が掛かる、しかも不透明、はその通りですが、世間が感じる檀家アレルギーはお金の件だけではなさそうです。
例えば、
・人間関係が面倒そう
・行事参加を求められそう
・自由が無くなりそう
・断れなさそう
という「束縛感」を嫌う傾向にあります。
例えば、拙寺の永代供養を希望に来られたAさん(非檀家)。
拙寺の永代供養自体は檀家内外問わずなのですが、
「年忌の法事もお願いしたい」
「お盆の供養もしてほしい」
と仰られたので、こちらとしては
「それは一般の檀家さんと(公平性の観点で)同じく最低限の付き合い(年〇千円)はお願いします」
と丁重に説明。そこは納得していただいたものの、その後ある行事のビラを届けたところ、
「うちは檀家なんですか!?」
と言われました…。こんなケースは何度かあります。


➆離檀トラブルが起きる理由
檀家を抜けようとしたら高額な離檀料を住職から求められたという「離檀料トラブル」を住職目線から考えてみます。
まず前提のお断りとして、法外な行為をする住職を擁護する余地は一切ありません。が、「なぜ住職がこのような行為に出たか」というポイントに絞れば(決してやってはいけないが)気持ちは分からないでもない点があること、またそれが今後の対策にもなると思う、ということをご承知おきください。
拙寺においても離檀を申し出て来られたことは複数回あります。
また拙寺に檀家を替わりたいとのご相談も、別のお寺でトラブルになっているとのご相談も経験あります。
そこで「離檀を申し出られた時の住職の気持ち」を次に“あえて”まとめてみます。


⑧離檀をされる住職の気持ち
マスコミで報じられているのは「檀家減=収入減」という経済面です。
特に檀家寺は檀家数と収入が大きく関係するので、一軒でも檀家を減らしたくないのが本音です。
「檀家のお布施収入に頼る構造が古い」とか「それ以外での収入源を確保すべき」という批判もごもっともです。
精神面の痛手もあります。私ならむしろそちらの方が大きいです。
長年すごく懇意にして頂いていた檀家さんが亡くなったとして、いきなりご家族から「お寺抜けようと思いますんで」と言われると、グサッと来ます。
住職としては代々の長い付き合いであること、お店とお客様以上の思いを自負しています(※)。このようなケースの場合、今まで親しくして下さった方は既に亡くなっていることと、離檀を申し出て来られた方はそれまであまり接点がなかったこと、そしてこちらの落ち度が何なのか分からないことがショックを大きくさせる点かと思います。
(※について、俯瞰して考えるとこの自負は住職側の一方的なもの。やはりお互いの気持ちが両立してこそですね。)
檀家さんに抜けられるのはそれくらいショックなことなのです。
檀家数が4ケタのお寺もあれば1ケタのお寺もあります。
私は「グサッ」と表現しましたが、「カチン」と来る場合もあるでしょうし、(あってはならないですが)それがついに言動に出てしまう住職も中には居ると推察します。「高額離檀料トラブル」の背景には、このような感情面も少なからずあるのではないかと私は見ています。
ここがあまり表に出回っていない情報になります。

ちなみにこんな話もあります。
例年通り棚経にあるお家に伺ったところ、いつの間にか更地になっていたそうです。
他にも住所変更(宛先不明)や電話番号変更で音信不通も。
「静かな離檀」「無言の離檀」、今風に言うと「SNSのブロック」みたいなもの。
ところが逆に「すみません、変更をお知らせしてませんでした」と音信不通だった方(お寺からは檀家リストから除外)から葬儀の依頼が来て、繋がりが再開するケースもあります。
いずれにしても既述の両立ができていない事例です。

⑨入檀をされる住職の気持ち
では逆に、入檀をされる住職の気持ちにも触れておきます。
意外かもしれませんが「檀家さんが増えて万々歳」とはいかないお寺の特殊性があります。
お寺同士は「支店以上同業他社未満」の関係にあります。全くの仲間同士というわけではないが、お客様を自由に奪い合う関係にはないということです。
お寺同士は何かと協力し合うことがあるので、適度な距離感とお付き合いがあります。
「民間企業のような競争原理が働かないお寺はだからぬるま湯に浸かっている」とのご批判はごもっともですが、自由競争にさらされると拙寺のような田舎の寺は圧倒的に不利なので何とも言い難いところです…。
ちなみにこんなことがありました。
他寺院の檀家さんから「そちらに替わりたい」と相談を受けたことがあります。
しかし事情を伺うと住職との行き違いが原因であり、お寺そのものに問題があるようには思えませんでした。
そのため私は一度菩提寺とよく話し合うよう勧め、お受けしませんでした。
以上⑧⑨を知ることは「⑩スムーズな離檀の進め方」への大きなヒントになると思います。

続きはまた来週土曜日朝アップを目標とします。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

若松慶隆プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

プロのおすすめするコラム

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

開かれた寺を目指して積極的に情報発信を行うプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ岡山
  3. 岡山のくらし
  4. 岡山のくらしその他
  5. 若松慶隆
  6. コラム一覧
  7. 【連載】檀家とは?~その2《お寺と檀家さん、それぞれの本音》

若松慶隆プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼