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「法事証明」を“住職目線で”考える

若松慶隆

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「法事証明」——多くの方には聞き慣れない言葉ではないでしょうか。
私は10年以上前の法事で、「ここに住職さんのサインをお願いします」と言われて初めてその存在を知りました。
法事証明とはその字の通り、法事をしたことを証明する書面のことです。
その時の私は「こんなのがあるんだ」という驚きとともに「なんだか世知辛い世の中だ」というのが率直な感想でした。
ここまでお読みくださった皆さんはどのように思われますか??

そこで今回は法事証明について、

➀法事証明とは
➁ズル休みの言い訳に使われる法事
③法事証明へのツッコミどころ4選
➃まとめ
⑤脱線話(おまけ)

の流れで私なりに考えてみたいと思います。
ご興味のある方はご覧ください。
ただし、あくまで住職(お寺側、しかも私個人)目線であることをご承知おきください。。

➀法事証明とは
法事証明とは、職場や学校など、所属組織内でのみ通用する“法事を行いました”という証明書です。公的効力はありません。そこに、法事を勤めた僧侶の署名欄が設けられている場合があります。
先代住職(1948〜2020)によれば「少なくとも昭和には存在しなかった」とのこと。他にいろいろ情報を探ってみましたがどうやら21世紀に入って出始めた説が有力です。私自身も18年の僧侶経験で数回のみ、率にして1%未満です。

田舎の拙寺も都市部のお寺も、地域に率の大差はないのではないかと私は見ています。法事は親族が全国各地(海外の例も)から集まるからです。
実際、世間的にはまだまだ認知度が低い制度だと思われます。

➁ズル休みの言い訳に使われる法事
仕事・学校・部活を休む理由に「法事」が使われやすい、というアンケート結果もあります。確かに「法事」と言われると周囲に突っ込まれにくく、便利なのでしょう。
(ちなみにウソの葬儀は後で矛盾が生じやすいのでご注意を。大学時代の知人に、アルバイトを“葬儀を理由に”ズル休みする人が居ました。仲間内では「お前何回人を殺してんだよ!」などと言われていました笑)

こういう背景も一因かと思います。
初めて法事証明に出くわした私はその「ズル休み」がパッと頭に浮かんだとともに、法事のお勤めをさせていただく立場としては「法事=疑いの対象」なのか…などの思いも混在して、複雑な心境だったのです。

法事証明があるほうが心置きなく法事に参列できるという環境が日本全体に広がるのであれば、有用な存在だと思います。
しかし「親の葬儀ですら満足に休ませてもらえなかった」という声が耳に入って来る昨今です。法事証明があることによって、法事に出にくい圧力が日本全体に広がるのであれば(自分がそれを職業としいるからという理由抜きに)、決して良いことだとは私は思いません。
次に良くも悪くも、法事証明を私から見て「こういう場合どうなの!?」と思える点を次に挙げます。

③法事証明へのツッコミどころ4選
ちょっと考えてみますと私的にはツッコミどころも多いです。

1.そもそも法事の定義って何??
・「法事」と言うことは伝統仏教を前提として考えられている、という点にまず疑問符です。他の宗教はどうなるのでしょうか。
・何回忌で法事をするかは地域や宗派で異なります。弔い上げ(最後の法事)を33回忌とする地域もあれば、100回忌の地域もあります。
・僧侶の読経は省略して、親族が集まってお墓参り+会食を法事とされる方もいらっしゃいます。ここら辺の線引きはどうなのでしょうか。
・他にも「初盆の行事」「お墓の開眼」「墓じまい」など年忌法事以外に(仕事を休んででも行きたい人は行きたい)供養の場はあるかと思います。

2.続柄と関係性は別では?
「遠くの親類より近くの他人」ということわざがありますが、法事には血縁に関係なくご近所(主に十戸)も法事に呼ぶ習慣の地域もあります。人間関係の価値観は人によって大きく異なります。
続柄だけで線引きしてしまうと、地域文化を壊してしまう可能性もあります。
一方で休み放題にならないよう、線引きをしておかないといけない組織側の事情も理解できます。

以上2点はその人にとって「法事がどんな存在であるか」に起因するものであり、逆に周りや上司がどう思うかは別の可能性が大いに有ると思います。
法事と言えば気持ち良く送り出してくれるのか、価値観のズレで無言の圧が掛かるのか、私はどうか前者である日本社会であってほしいです。

3.働き方改革後、不必要では?
多くの場合、法事に使うのは年次有給休暇です。
有給は「理由を問わず取得できる労働者の権利」なので、本来は理由を言う必要すらありません。
実際、医療・福祉・公務員など勤怠が厳格な業界以外では、法事証明は今後増えないとも考えられます。

4.逆に悪用されそうな気が、、、
住職と共謀すれば架空の法事証明を作ることは可能なので、悪いことを考える人も出そうに思えます、、、

➃まとめ
法事証明について語ってきましたが、結局のところ私が強く思っているのは、「人と人とのつながりが希薄にならない社会であってほしい」という願いです。
法事では「こういう時でないと集まれないよね」という会話をよく聞きます。
忙しさの中でも、
・必要以上に遠慮せず
・呼ぶ側も呼ばれる側も負担を感じすぎず
・大切な人を供養できる
そんな社会であってほしいと願っています。
最後に、ある社長さんの一言をご紹介します。
「うちは社員に『法事なら遠慮なく休め。大切なことだから』と言っている」
こういう会社が増えれば良いと思います。

⑤脱線話(おまけ)
法事証明は超レアケースですが「領収書下さい」は普通にあります。
特に葬儀のお布施で必要とされています(でも肌感覚で1割未満。おそらく相続で葬儀費用を証明するため)。
もう一つ。「請求書ありますか?」がぼちぼち増えています。
(お布施の意義や)請求書を出せない理由を丁重に説明しお断りしていますが、これも時代ですね…。
「領収書」や「請求書」の詳細はまた改めてとさせていただきます。
最後までお読みくださり誠にありがとうございました。

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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