障害年金の請求方法にはいろんな種類がある
「働いていると障害年金を受給できない」と思われている方は多いです。
確かに障害年金は、ケガや病気で障害の状態になった時の所得保障となる制度です。「働くことができれば必要ないのでは」と思われるかもしれません。
しかし、労働に制限を受けている障害者の方は賃金も少なく、障害年金で補わなければ生活していけないことがほとんどです。
障害年金を受給しながら働いている方もいらっしゃいますし、傷病によっては、就労の有無が審査に影響しないケースもあります。
今回は障害年金と就労の関係についてお伝えしたいと思います。
障害年金受給者の就業率
「障害年金を受給しながら働くことはできますか?」という質問をよく受けますが、実際にはどうなのでしょう。
障害の程度を定めている国民年金法施行令および厚生年金法施行令では、おおむね次のような内容となっています。
【1級】
日常生活において誰かの介護が常に必要な状態。
【2級】
必ずしも介助は必要ないが、日常生活に著しい制限があり、活動範囲は家の中に限られる状態。
【3級】
労働に制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする状態。
この基準でいけば、1級、2級は労働できないことになります。
しかし、厚生労働省が平成27年に公表した「平成26年度障害年金受給者実態調査の結果」によると、障害年金の受給者で就業している方は27.6%(男性33.9%、女性20.1%)となっており、1級、2級の認定を受けながらも働いている方はおられます。
それでは、働きながら障害年金を受給できるのはどのような場合でしょうか?
客観的な基準がある傷病の場合
たとえば目の障害の場合、矯正視力の測定値について
両眼の視力の和が0.04以下のもの・・・1級
両眼の視力の和が0.05以上0.08・・・2級
となっています。
耳の障害の場合は
両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの・・・1級
両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの・・・2級
このように具体的な数値による指標がある傷病の場合は、これに該当すれば認定を受けられます。視力障害の方がマッサージ師として働いたり、車椅子の方がパソコンの仕事に就いたりして、フルタイムで働いたとしても、障害年金の受給状況には影響がありません。
内部疾患の場合
内部障害はその辛さが本人でないとわからない部分があり、本来は就労の有無に影響されることがあってはいけませんが、厳しい判断が行われているのが現状です。
内部障害の診断書は日常生活能力を評価・判定する「一般状態区分表」に基づいて判定が行われます。それは次の通りです。
(ア) 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
(イ) 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
(ウ) 歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
(工) 身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
(オ) 身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの
(ア)は障害状態にないレベル、(イ)は3級レベル、(ウ)は2級~3級、(エ)は2級、(オ)は1級レベルと考えられます。
このほか、検査数値や自覚症状などの所見も含めた総合的な判断で等級が決まります。 したがって、内部疾患で2級以上の認定は難しいと思われます。
精神疾患の場合
昨今、心身の障害があっても働くチャンスは増えているのですが、障害年金はどうなのかといえば、就労の事実が不利に働くこともあります。
精神障害の重症度を判定する具体的な指標がないため、一般的な判定の基本である日常生活や就労状況で審査が行われることとなるためです。
障害年金の精神疾患に関する基準は、
「①統合失調症、気分障害」
「②器質性精神障害」
「③てんかん」
「④知的障害」
「⑤発達障害」の5つに区分されています。
このうち、①統合失調症、気分障害に関しては
「就労していても、直ちに日常生活能力が向上したものとは捉えず、療養状況を考慮し、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで判断する」とされています。
また④知的障害⑤発達障害についても、
「勤労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、従事している期間、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意志疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること」というようにほぼ同じ記述があります。
以上のように「就労=不支給」、あるいは「支給停止」とは限りません。働きながらでも障害年金を受けることができる可能性はあるということを覚えておいてください。