珈琲ブレイク:最近の話し相手はもっぱら「相棒(AI)」です
「最新のAIを活用して業務を自動化しましょう」
「DX診断を行い、御社に寄り添った最適なロードマップをご提案します」
最近、このような耳触りの良い提案を掲げる若手主体のコンサルティング会社やDXベンチャーが増えています。見栄えの良いプレゼン資料や流暢な説明に期待して契約したものの、数か月後には「高額なツールだけが残り、現場は誰も使っていない」「以前のExcelや紙の作業に戻ってしまった」という相談が後を絶ちません。
なぜ、中小企業のDXやAI活用はこのような罠に陥ってしまうのでしょうか。そして、経営者はどうすれば本物と見せかけを見抜くことができるのでしょうか。
実務経験がないコンサルタントが「DXを語れてしまう」理由
現場の実務を一度も経験したことがない若手コンサルタントが、なぜもっともらしくDXやAIを提案できるのか。その背景には、コンサルティングの手法に特有の構造があります。
① フレームワークと抽象化の技術
個別業務の泥臭い勘所を知らなくても、「インプット→処理→アウトプット」といった共通の型に現場を当てはめれば、一見ロジカルな課題整理ができてしまいます。
② ベンダー資料や事例の再構成
大手ITベンダーのホワイトペーパーや海外事例を素早くインプットし、理路整然とプレゼンする能力に長けています。自らの泥臭い成功・失敗体験に基づいた知見ではありません。
③ 「理想像(ToBe)」の設計に特化
実際の現場業務の多くはマニュアル外の例外処理で回っています。そこを想定できないため、マニュアルを配って研修を数回やっただけで納品完了とし、現場でエラーが出た瞬間に運用が崩壊します。
本物と見せかけを見抜くチェック基準
商談の場では、提案者の姿勢がどちらに当てはまるかを冷静に見極めてください。
経営者が自衛するための3つの鉄則
1. 商談に「現場のベテラン実務担当者」を必ず同席させる
経営陣だけで話を聞くと、抽象的な経営論で丸め込まれます。現場のキーマンを同席させ、「現場の泥臭い例外処理」について直接質問させてください。
現場を知らないコンサルタントは即座に一般論しか返せなくなります。
2. 「例外処理」と「失敗リスク」を具体的に質問する
- 「業務の例外(イレギュラー)が発生した際、現場オペレーターはどうリカバリーする設計ですか?」
- 「過去の支援先で、現場が定着を拒否した事例と、それをどう解決しましたか?」
- 「担当コンサルタント自身の、現場実務(非コンサル業務)の経験年数と職種は何ですか?
3. 一括契約を避け、「業務の棚卸し」だけの短期契約で始める
診断から導入までの一括契約(数百万円など)は絶対に結んではいけません。まずは「業務の棚卸し・可視化」だけの1〜2か月の超短期フェーズで契約してください。
納品物が「教科書通りのフレームワークを埋めただけの綺麗なスライド」であれば、即座に次のフェーズを打ち切るのが確実な自衛策です。
DXやAI活用は、魔法の杖ではありません。
不要な業務を削ぎ落とし、現場の実態に合わせた現実的な仕組みを一つずつ積み上げていく地道な作業です。
派手な横文字や見栄えの良いスライドに惑わされず、「現場の解像度」を持ったパートナーを選び、自社の地に足のついた変革を進めていきましょう。


