どうなる年収106万の壁撤廃、いつからどう変わるのか、超えるデメリットは大きい!?
2025年5月現在の高額療養費制度とは
2025年8月から段階的に改正される予定であったこの制度。
石破総理は3月7日、この改正実施を見送る決定をしました。新年度予算案が衆議院を通過したのちの異例の発表でしたが、がんや難病の患者団体と面会し、政府内で協議した末の見送り。
当初は2026年と2027年に予定されていた段階的な引上げも凍結、2025年秋までに再検討する方針が表明されました。
医療費の自己負担が軽減される大変安心なこの制度。改めて現在の制度概要を見ていきます。
高額療養費制度の概要
※厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より一部抜粋
年齢区分により負担額が異なります。

また、重要なポイントとして下記のように『世帯合算』が可能です。
さらに安心な仕組みとして、『多数回該当』もあります。
この世帯合算や多数回該当を使ったとしても、治療が長期に及びやすい白血病や悪性リンパ腫などの血液のがん、慢性進行性で根本治療がなく、症状の進行を抑える対症療法が中心となる指定難病(この場合は地方自治体に医療費助成や給付制度の認定を受けると負担が軽減されます)などの場合は、毎月の負担がいつまで続くのか分からず、手持ち資金の減少や治療が継続できるのか不安になってしまいそうです。
高額療養費制度を使うための手続きと払い戻されるまでの期間
そもそも、マイナンバーカードを健康保険証として使うと、医療機関や薬局の窓口で高額な医療費を自己負担することなく、また事前に役所で申請書類の手続きをしたりする必要がありませんので、マイナンバーカードを持っている方は、健康保険証として使用できるよう紐づけておくと良いでしょう。
マイナンバーカードの無い方は一般的に、一旦通常の自己負担額(1割~3割)を医療機関や薬局で支払い、受診から2~3か月後に、加入している健康保険(国保や協会けんぽ、健保組合など)から「高額療養費支給申請書」が送付されてくる(または自主的に申請する)ので記入して提出します。
医療費の支払いから差額分が振り込まれるまで、最低でも3か月はかかることを想定しておきましょう。
また、治療が長期化し高額な医療費がかかることが想定される場合は、同じく加入している健康保険に、『限度額適用認定申請書』を提出し、『限度額適用認定証』の交付を受け、医療機関に提出することで、窓口での1か月の支払を最初から自己負担限度額までに抑えることができます。
高額療養費制度があるから保険は”いらない”のか
例えば、悪性リンパ腫の一般的な治療を見てみると、抗がん剤治療(化学療法)がメインとなりますが、1クール(21日~4週間)を6回、行うことが多く、5~6か月を要します。そして、完治には、治療終了後約5年間の経過観察期間が必要とされています。
このような場合、
所得区分:年収約370万~約770万円の場合、入院治療に6か月を要したと想定
概算で(約8万円×3か月)+(約4.5万円×3か月) = 約38万円の自己負担
加えて、食事代や着替えなどのアメニティ、個室利用の場合は差額ベッド代、家族の交通費など約20万円ほどの出費も準備が必要でしょう。
いつ、どんな病気にかかるかは誰にも分かりません。医学の進歩によって、病気が治癒する期待も高まりますが、その分高額な治療が必要となる可能性も高くなります。病気やケガで働けなくなっても、当分は生活できる十分な貯蓄があると思う方は医療保険やがん保険は不要ですが、一家の大黒柱であるお父さんや、家事や育児を担うお母さんが病気療養でこれまで通りの仕事や家事ができなくなったら、あなたの家庭はやりくりできるのか…そんな想像をしたとき、不安になるようであれば、医療保険やがん保険を備えておくのは必要と考えます。
外国人が日本の公的医療制度を悪用!? 制度は崩壊するのか…
10年間何度も利用できる「数次査証(ビザ)」の新設など、中国人向けのビザ発給要件を緩和する方針が現政権から示され、SNSを中心に反対する論評が多くあがっています。
そもそも、外国人が日本の健康保険を使える条件は日本に3か月を超えて滞在する予定がある場合(中長期在留者)原則として国保や健康保険組合などに加入する義務があり、その場合は原則3割の自己負担、高額療養費制度による医療費の軽減も適用されます。
その他にも、留学や就労、技能実習などで在留資格を持っていることが条件です。
懸念される問題としては、病気と分かってから留学や就労などの目的で来日し、短期間の滞在で日本が世界に誇る医療制度の恩恵を受けること。医療目的で日本に滞在する場合、本来は国保には加入できないルールであり、自治体では保険証発行時に、パスポートや在留カードの提示、就労状況の確認などのチェック体制を強化してはいるものの、現場の労力は計り知れないものがあり、国を挙げての制度悪用を防止する仕組みが求められます。
高額療養費制度は持続可能なのか
この制度を維持するためには、所得に応じた自己負担上限の見直しが真っ先に挙げられます。実際に、今回の見送りが発表された案において、高額所得者の自己負担はかなり重いものになっていました。また、必要のない高額な治療、過剰医療や重複投薬などのムダを減らす…など、財政面・公平性・医療効率など様々な面からの対策が求められます。私たち自身も、制度の変化には注目していくことがますます重要になってきます。




