令和5年度税制改正大綱、様々な節税策を封じ込め…金融所得課税への影響は?
先月、厚生労働省が雇用保険料の引き上げ検討に入るとの報道がありました。
新型コロナウィルス感染拡大で、「雇用調整助成金(企業が労働者に支払う休業手当を助成するもの)」給付が増大し財源がひっ迫しているため。
雇用調整助成金の支給決定額は4兆円超え……
雇用調整助成金について厚生労働省は、8月末までとしていた現在の内容を9月末まで継続するとしました(10月以降は8月中に発表)。
具体的な保険料率は今後、労働政策審議会で議論され、早ければ2022年の通常国会に「雇用保険法改正案」が提出される見込みです。
失業者向け事業の料率、労使折半で現在の0.6%から本来の料率である1.2%に引き上げた場合、月収30万円の場合保険料は900円から1,800円になるとの試算。
またまた、手取り額が気づかないうちに減ってしまうことになりそうです。
そもそも「雇用保険制度」とはどんなものなのでしょうか。
雇用保険は、政府が管掌する強制保険であり、労働者の雇用に関する総合的機能を有する制度で
①失業等給付 (求職者、就職促進、教育訓練、雇用継続等)
②雇用安定・能力開発給付 (雇用調整助成金・職業能力開発施設設置運営、企業への助成等)
の2事業に大別されます。
失業等給付の具体的なものとしては、一般の求職者に加え、高年齢求職者、日雇い労働者、高年齢雇用継続のための給付、育児休業や介護休業給付などがあり、困った時に私たちの生活を助けてくれます。
企業は、労働者を一人でも雇用していれば、雇用保険の加入手続きが必要になりますが、法人の代表取締役や取締役は基本的に適用されません。
また、雇用保険の財源は、
①失業等給付:労使折半による積立金+国庫負担
②雇用安定・能力開発給付:事業主の負担のみ
となっています。
このコロナ禍によって雇用調整助成金給付が急増、②の事業給付維持のために、①の積立金からおよそ1.7兆円を貸し出し、国の一般会計から同じく1.1兆円が投入されました。
この①の積立金、2019年度には約4.5兆円あったそうですが、21年度には約1,700億円に激減する見通し……
働く私たちの生活を守ってくれる雇用保険、今回の保険料率引き上げも仕方ないのか……
とはいえ。
わずかでも継続的に負担が増え、手取りが減るのは困りますし、企業側が負担を減らそうとして、保険対象外の雇用を増やしたり、個人事業主契約を増やすなどの対策に出るかもしれません。
また、雇用調整助成金が延長されることによって、本来なら多数の失業者が出ることが想定される“人余り業界”に労働者がとどまり、本当に人材が必要な業界に労働力が移っていかない可能性もあります。
今回の問題を機に、国の一般会計からの支出を増やす、保険適用対象者を拡げるなど、雇用保険制度のあり方そのものを時代に合わせて見直し、雇用保険給付に係る事務手続きを簡素化し、利便性を高めていただくよう期待します。