塾長の考え(夏期講習)⑥
生徒はみな悩みを抱えて生きている。
人間はロボットではない。
感情をもつ生き物だ。
生徒は人間なので、
悩みがあると前に進むことができなくなり、
それがときには健康に害を及ぼすこともある。
日々いろいろなことがあるが、
「悩み」に対する解決方法をもっていないと、
勉強することさえままならない。
自立型個別指導の要諦は、
自立型の人間に育てるということである。
生徒を自立型の人間に育てる過程において、
「悩みへの対処法」の伝授は切り離せない。
先日もある高校3年生が、
「毎日不安でたまりません」
「毎日泣きたくなります」
と目に涙を浮かべて私に話してきた。
つい先月に北斗塾に入塾してきたのだが、
毎日勉強していく中でだんだんと事の重大さが、
わかってきたからこその発言だ。
今の自分の実力が合格にはほど遠いこと。
やることが明確になってくるたびに、
あまりにもその量が多すぎて驚いていること。
今からがんばっていけば本当に合格できるのか、
そのことを考えると不安でたまらないこと。
その生徒の言っていることはよくわかる。
なぜそのような不安が今になって起きてきたのか。
それは今まで現実を直視しないで生きてきたから。
「部活動が忙しいからしょうがない」
「今日は疲れたからしょうがない」
「まだ高1だからできなくても大丈夫」
「まだ高2だからできなくても大丈夫」
「高3の総体が終わったらがんばろう」
「1学期の定期テストが終わったら塾に入ろう」
そうやって現実をずっと直視せずに生きてきた。
今目の前には問題が生じているけれども、
「今やらなくても後から頑張れば何とかなる」
そう自分に言い聞かせて現実から逃避し続けた。
でもとうとうその現実に向き合うときが来た。
それが「今」である。
私に話しているそばから涙が目に浮かんでいる。
辛くて不安でたまらないといった様子だ。
そのまま話し続けていけば泣きだしていただろう。
「毎日泣きたくなります…」
「泣けばいいんだよ」
「え、…」
「他の高3生もみな泣きながら勉強しているよ」
「え、そうなんですか?」
「そうだよ、だから泣きながら勉強すればいいよ」
「あ…、はい…」
「それと、先のことを心配するのではなくて…」
「はい」
「今日1日に集中するんだよ」
「はい」
「今目の前のやるべきことを一生懸命やるんだよ」
「…はい」
結局のところ、
人の悩みというものはまだ来ていない未来に関するもの。
「明日」というまだ来ていない未来を思い煩うことで、
自分で「悩み」を生み出している。
人間以外の生物では考えられないことであり、
人間だからこそ「悩む」わけだ。
人間は只今(ただいま)に生きることが大事。
コントロールできるのは今という現在だけ。
「明日」は今の自分がコントロールできない。
「明日」にとらわれてはいけない。
悩みを解決するための方法の初手はこれだ。
(続く)