塾講師のやる気の源とは?(その16)(終)
先日知り合いの教室に出向いた。
どうしても講師の都合ができず困っていた。
日曜日だったので助っ人になった。
そこで私は「代理としての講師」をした。
見知らぬ生徒たちを前にして自己紹介。
北斗塾の塾長であることも当然だが言った。
生徒たちは小学生と中学生だった。
その子たちのことを知るために質問をした。
どこの学校の生徒でどこに住んでいるのか。
相手のことを知らないと、
コミュニケーションはできないから。
どの生徒も、
勉強はきらいだと言った。
勉強はあまりしないと言った。
勉強は得意ではないと言った。
勉強は楽しくないと言った。
勉強はやりたくないと言った。
これには「なつかしい感じ」がした。
30年前に独立して学習塾をつくった。
私は塾長になった。
生徒は4人でスタートした。
実家の近所の子が2人、
チラシで来た生徒が2人。
チラシで来た生徒たちはその春の時期に、
よその地域から引っ越して来た生徒だった。
新しい土地で右も左もわからないから、
地元にある学習塾ではなくて、
自宅の近くに偶然できた新しい塾に、
「良い塾なのか悪い塾なのか」
それを確認できないがゆえに入ってきた。
実家の近所の子2人のうち、
1人は私が行く床屋の奥さんの紹介。
もう1人は親友の親が経営する酒屋の、
常連客のお子さんだった。
この4人はまずまずいい子たちだったが、
このあとに入塾してくる生徒たちは皆が、
「勉強はきらいです」
と口に出す子たちだった。
この子たちを丁寧に指導していきながら、
北斗塾はだんだんと成長していった。
このころに入ってきた子たちは、
その地区のいろんな塾に通っていた子たちで、
どこの塾でも成績が上がらずに、
そこの塾長や講師たちからバカにされていた。
学校で先生や友達からバカにされて、
塾でも再びバカにされる。
その子たちには「居場所」がなかったのだ。
だから北斗塾に来たのである。
そこの塾の友達たちからは、
「裏切者」と呼ばれながら…。
当時のこの子たちのことを突然思い出した。
あのときの子たちと雰囲気が似ていたから。
今の北斗塾に来ている子たちがみな、
「勉強が好きです」
などということは決してないのだが、
それでも前向きに取り組もうとしている生徒、
そういう生徒がほとんどである。
これは断言できる事実だ。
がんばればすぐに成績が上がる、
そんなことはない。
あったとしてもそれは、
範囲と問題が事前にわかっている、
そういったテストの成績に限る。
真の学力とは農作物といっしょで、
種をまいたらすぐに果実が回収できる、
そういうものでは絶対にない。
これと同じだ。
真実の結果ならば目に見えてくるまでに、
それ相当の時間がかかる。
その時間がかかっている内に、
ほとんどの生徒はギブアップする。
だから、
目に見える「よい成績」は得られない。
だから、
サポーターとしては塾、
プラス「時間」が必要。
(続く)