⑥:「朝起きてすぐスマホを見ると、脳に何が起きるか?」
シリーズ①:なぜ、やる気は3日で消えるのか?
〜脳の報酬系とやる気の科学〜
1.「やる気」が湧いたのに、なぜ続かない?
「今年こそ運動を習慣にしよう」「英語の勉強を毎日続けよう」
最初の2〜3日は順調。でも、気づけば元の生活に逆戻り…。
多くの人が経験するこの“やる気の失速”には、脳の仕組みが深く関係しています。
実は、“やる気”とは「気合」や「根性」だけではありません。
脳内で分泌される神経伝達物質、特にドーパミンが大きなカギを握っているのです。
2.やる気を生む「報酬系」とは?
脳には、「報酬系」と呼ばれる神経回路があります。
これは「快楽」や「達成感」などの報酬を得たときに働く回路で、以下の部位が主役です。
側坐核(そくざかく):やる気と快感を結びつける
前頭前野(ぜんとうぜんや):目標を計画・実行に移す
中脳の腹側被蓋野(VTA):ドーパミンを放出する起点
何か新しいことを始めるとき、脳は「変化」を好み、ドーパミンを出して私たちをワクワクさせます。しかしこのドーパミン、「慣れ」に弱いのです。
3.3日で消えるやる気の正体
実は、“やる気が続かない”のは、脳が刺激に慣れてしまうからです。
新しい行動を始めたとき、最初は「新鮮さ」が脳を刺激してドーパミンが大量に出ます。
けれども、同じ行動が繰り返されると、「刺激→ドーパミン」の反応が減少します。
これを「報酬の希釈化(ドーパミンの慣れ)」と呼びます。
例えばこんなケースがあります:
=事例:ジム通いを始めたAさん(30代男性)
1日目は「いい汗かいた!自分エライ!」と満足感。
2日目は「昨日よりキツいけど頑張ったぞ」とポジティブ。
3日目、「今日は雨だし…ちょっと休もうかな…」
→ 4日目以降、なぜかやる気が出ずフェードアウト。
このように、外からのご褒美がないと行動が続かないのは、ドーパミンの自然な性質によるものなのです。
4.“ご褒美”だけに頼らない脳の使い方
では、どうすればドーパミンの減少を乗り越え、やる気を継続できるのでしょうか?
鍵は、「外的な報酬」から「内的な報酬」への切り替えにあります。
= 内的報酬とは?
自分の成長を感じること
達成した喜びをかみしめること
できた自分を褒めること
特に、前頭前野は「自己評価」や「目標管理」に関わる領域で、ここを活性化させることで内発的モチベーションを高めることができます。
5.やる気を維持するための具体的な工夫
① 「小さな達成感」を毎日つくる
大きな目標ではなく、今日できる小さなことを決めることで、報酬系は安定的に活性化します。
例:「英語の勉強30分」→「1フレーズ音読する」
これだけでもドーパミンが出ます!
② 「記録をつけて可視化する」
前頭前野は「進捗」を見ると活性化します。
手帳やアプリで記録を残すことで、やる気が再点火されます。
③ 「最初の10分だけやる」ルールをつくる
やる気がなくても、「始めれば」ドーパミンは出るようになります。
“行動のハードルを下げる”ことが継続の秘訣です。
6.「やる気」は脳の使い方で変えられる
「やる気が出ないのは自分のせい」、そんなふうに思う必要はありません。
やる気は「意思」だけでなく、「脳の性質」によって自然と上下します。
そのメカニズムを知れば、感情に振り回されず、自分をうまく動かしていくことができるのです。
「3日坊主」で終わらせないためには、脳の報酬系を味方につける工夫こそが大切です。



