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戦略コンサルタントが考える有事への対策とは?戦略分析による東アジア情勢の把握(Part 4)

2022年12月13日 公開 / 2022年12月28日更新

コラムカテゴリ:ビジネス


皆さま、こんにちは

前回のコラムでは、戦略分析における全体像を知るため、国際情勢の把握に努めました。

ここでは範囲を絞り、東アジア・環太平洋情勢について、より詳細に調べていこうと思います。

日本の有事への対策とは?戦略分析による東アジア情勢の把握
それでは始めます。


1.台湾有事における味方側の軍事的要衝の把握

まず、中国と台湾の間で有事が起きた時に重要となる、味方側の軍事的要衝について以下の地図にまとめます。

台湾有事における味方側の軍事的要衝
これを見るとあきらかだと思うのですが、中国が台湾に武力侵攻をすれば、必然的に日本と韓国、そしておそらくフィリピンも巻き込まれます。中には米軍基地があるから攻撃されると主張する人もいますが、基地があろうがなかろうが、少なくとも日本は中国海軍が太平洋に進出する際の障害となるので、台湾を武力で奪い取るのであれば、沖縄や九州も攻撃対象となるはずです。アメリカもそれが分かっているので、防衛力を高めるよう、最近沖縄の嘉手納基地で古いF-15からF-22戦闘機に入れ替え始めたのだと思います。

ただ、ABCニュースによると、中国は弾道ミサイル(通常弾頭または戦術核)を使ってグアムや沖縄を先制攻撃するシナリオがあるそうで、打撃力のあるB-52戦略爆撃機はオーストラリアのティンダル空軍基地に配置転換されるようです。確かに、中国サイドから見ますと、最初から空母艦隊を出して真正面から戦うよりも、弾道ミサイルを初手で使った方が戦略的にははるかに効果的だと思います。

また、同国のパインギャップには弾道ミサイルを早期探知する強力なレーダーサイトがあり、米軍や豪軍にとって非常に重要な基地となっているので、こちらも中国やロシアの攻撃目標の一つになっているそうです。

私がオーストラリアに住んでいた頃は、豪政府は中国との経済的結びつきを優先させていました。積極的ではなくとも、現地の人もそれを許容していたと思います。しかし、数年前にスパイの存在が明るみになった事で、オーストラリア政府は親中政策から大きく方針転換をしました。そのためか、前回も言及しましたけれど、ソロモン諸島の軍事拠点化など、現在中国の海洋進出には非常に神経質になっているので、日本は相互利益のために関係をさらに発展させた方が良いと思います。

ここからは、東アジア情勢について国別に見ていきます。

2.中国について

まずは中国です。下の地図を見ると分かりますが、中国軍の重要な基地は全体にまんべんなく散らばっています。なぜそうなっているかと言うと、国内で反乱が起きたときの保険という内政的な事情もあるでしょうが、他には、仮想敵国が全方位に存在しているという対外的理由もあると思います。

軍事的要衝(東アジア)
中国の総兵力は200万人で、軍事費はGlobal Noteによると、年間で約35兆円を費やしています。安い人件費・製造コストを考慮しますと、米国の軍事費と同等と言ってもいいのかもしれません。核ミサイル戦力はまだアメリカに及びませんが、通常ミサイル戦力に関して言えば、すでに米国の脅威となっているという分析もあります。参考とした動画の中でも飽和攻撃に言及していたので、技術が云々よりも、配備している数が多いのでしょう。

中国のグローバル戦略
中国が現在推進しているグローバル戦略は、地政学的に見て大きく四つあると思われます。

一つは対米で共通路線の、ロシアとの同盟関係です。ガスなどの天然資源や食料を確保する補給路としての目的も当然あるでしょうが、それだけではなく、他に米国やインドが推進している中国包囲網の形成を妨げるという意味もあるはずです。

二つ目は、インド洋におけるプレゼンスの拡大です。主な目的は、中国の強大な経済力および軍事力を維持するために不可欠となる、オイルの安定的供給ルートを確保するためと思われます。これを”String of Pearls Strategy”(真珠の首飾り戦略)といいます。具体的には、ジブチ港・グワダル港(パキスタン)・ハンバントータ港(スリランカ)・チャウピュー港(ミャンマー)を中国海軍が使用できる契約を結んでいます。上の図の赤い点がそうです。

三つ目が、太平洋への影響力拡大です。これの主な目的は、海洋資源などの権益確保と、中国海軍の自由な太平洋での航行を実現するためと考えられます。そのため、中国は軍事戦略の展開目標ラインを“第一列島線”、そして“第二列島線”としてそれぞれ定めています。現時点での目標は台湾統一ですが、それだけで中国の戦略が終わりではない事を、このラインは示しています。ちなみに、これらは米国や日本にとっても重要な防衛ラインとなります。ソロモン諸島との安全保障協定締結など、私たちが知らない所で着々と影響力は拡大しています。

そして四つ目のグローバル戦略が、地図には描かれていない宇宙の軍事的・商業的利用です。米宇宙財団によると、2021年の世界の宇宙経済規模は4960憶ドル(約64兆円)に達したそうです。前年からの成長率は9%と、非常に高いレベルで推移しています。日本の大手企業が宇宙ビジネスに関心を寄せている理由も分かりますね。中国の場合、国家としての威信もあるでしょうが、一般的に宇宙開発は多くの国々にとって、国家安全保障上そしてビジネス上、非常に重要となっています。

私が大学生だった頃、マイクロ人工衛星開発プロジェクトを監督していた教授が、よく中国の宇宙開発の凄さを熱心に話しておられました。関わる研究者の数や投資額が桁違いだったそうです。その集中投資の成果は、例えば世界で3番目に有人宇宙飛行を達成したり、独自の宇宙ステーションを建設したり、独自のGPS衛星を打ち上げたり、そして月面・火星探査を行ったりしている事からも窺えます。ロケットの打ち上げ数ではすでにアメリカを越えており、中国は米国やEUと並ぶ宇宙大国と言えます。

私が思うに、なぜ中国は何があっても台湾統一を成し遂げたいかと言いますと、梃子の支点のような存在だからと思います。台湾を中国に傾かせることができれば、西側諸国とのパワーバランスを一気に崩す事ができるからです。経済や技術だけでなく、軍事戦略の面でも選択肢が増えるため、例えばシーレーンをコントロールする事で経済的に優位な立場を確保したり、反抗的な国や勢力に対しては、海上封鎖をして孤立させた上で圧力を加えたり、または軍事的に各個撃破する事も可能になります。日本にとっては悪夢のシナリオです。

最近、中央政府の強権的なゼロコロナ政策に対し、中国国民が自由を求め、各地で平和的なデモを起こしました。独裁国家で公然と指導者を非難できるのはすごい事で、心身ともに追い込まれているのが分かります。現時点では若い大学生が多いようですが、国を良くしていくためには様々な世代の協力が必要なので、中年世代も頑張ってほしい所です。

今回は虚を突かれた中国政権側が折れて、民衆への締め付けは一旦緩めるようですが、後の対応が怖いですね。権力者だって一般国民の怒りや反感を買うのは避けたいはずですが、それでもゼロコロナ政策を推し進めなければならない理由が何かあるのか、そこは気になるところです。

民衆デモが起きた事で、現在懸念しているのは以下の二つの可能性となります。

まず一つ目は、香港の民主化運動が中国のスパイ活動によって妨害された(と言われている)ように、今後同様の妨害を受けて犠牲者が出てしまう事です。例えば、せっかく平和的な運動を行っているのに、内部へ侵入したスパイが暴力行為を煽ったり、自演したりする事で、中国政府による強権的な治安維持活動の口実を与えてしまいかねません。テレビでも話していましたが、東京で抗議に参加している中国人の方々は、その辺の実情をよく分かっているので、グループ内でもお互いの素性を明かさないようにしているそうです。

このように、民衆の口伝えによる草の根運動が封じられてしまうと、現実には民主化への道のりは厳しいのかもしれません。香港の民主運動家、周庭さんが逮捕された時もそうでしたが、象徴となるリーダーを見せしめとして最初に潰してくるので、『One for all, all for one(一人は皆のために、皆は一人のために)』の精神で、各自が勇気を持って主体的に、かつ連動して行動していく事が必須となります。

そして二つ目は、中国国民の強い不満を逸らすために、台湾に武力侵攻をする可能性です。当然米国や日本も介入するので、彼らは第二次大戦時の日本の悪行などを持ち出して反日感情を煽り、共産党政権の正当性を訴えて、中国国民の不満や怒りの矛先を外国に向けようとする戦略を取る可能性はあります。

実際、中国は何十年も反日政策を採ってきました。国際社会での日本の発言力や影響力を落とす意図もあったでしょうが、他には、中国共産党の正当性を自国民に訴える、内政的な理由もあったと思います。

今はインターネットがありますし、立場は違っても自由への志は私も同じなので、勇気ある中国国民が自ら歴史を紡ぐことを願っています。

3.台湾について

次に、台湾のお話に移りたいと思います。主要な軍事基地は、下記の図を見ると6つあるようです。

台湾の軍事的要衝
台湾の総兵力は約25万人で、Global Noteによると2020年の軍事費は1兆7000億円となります。人口を考慮しますと、一人当たりの軍事費は日本よりも費やしている計算になります。しかし、それでも中国と台湾の総兵力の比率は8:1、そして軍事費の比率は20:1と大きな開きがある事が分かります。

いくら中国軍が台湾侵攻に振り向けられる兵力に限りがあるとは言え、これでは台湾単独での防衛は現実的に困難です。米国・日本・オーストラリアなどの軍事および後方支援が必須となります。ただ、現状台湾は公式に国として認められているわけではないので、米国などからの具体的な支援については、公の場で話すことはできないそうです。

首都の台北以外では、花蓮県(Hualien)にある空軍基地が有事には重要な役割を果たすと言われています。ここには米国のF-16戦闘機も配備されています。

今年に入ってから、台湾の防空区域(Air Defense Zone)への侵犯が急増しており、それが懸念事項です。その傾向を見ますと、常に台湾の南方から侵入されているので、有事には守りの薄い南側からの侵攻上陸作戦を想定していると考えられます。もちろん、それは相手を油断させる陽動の可能性もあるので、そう思い込むのは危険ですが。

バイデン大統領は台湾防衛を明言し、そしてペロシ議長が2022年8月に中国の反対を押し切って訪問をしました。ただし、文書上では台湾防衛を明記しているわけではありません。日本も含め、そのような曖昧な政治姿勢を取り続けないといけない現状が、台湾の人々から見てどう感じているかは気になるところです。

資料のリンク先の動画を見て敬意の念を抱かざるを得なかったのが、台湾の人たちは現在、自国の民主主義を守るために多くの人が主体的に民間防衛活動に参加していることです。台湾軍だけでなく市民レベルでも、例えば、攻撃を受けて怪我人が出た場合の救護訓練を市民が自発的に行ったり、エアーガン(模擬銃)による戦闘訓練を行ったりしています。もちろん、台湾人の中でも一部の方たちでしょうが、民主主義に対する想い、そして防衛意識が非常に高いと思いました。

たとえ米国の直接的な軍事支援を受ける事ができなくとも、率先して故郷を守るために戦おうとする人々や、私財(約140億円)を投げうって国民を訓練し、台湾を守ろうとしている老齢の億万長者の発言には感銘を受けます。その覚悟にはただ頭が下がるばかりです。日本の侍魂を台湾人の中に見た気がしました。

個人的に特に驚いたのは、台湾の人々が行っている民間防衛活動とは、私が昔書いた熊沢蕃山の『武士土着論』と考え方が似ている事です。そもそも武士土着論とは、自分の故郷を守るために、普段は畑を耕しながら(仕事をしながら)も、いざという時には自ら武器を取って戦う戦士になることを説いています。10年近く前に書いた内容ですが、実際に台湾の方たちが実践されているのを見て、涙が出そうになりました。目の前に脅威が迫り、愛国心(または愛郷心)が強ければ、何か行動を起こそうと思う人が出てくるのは当たり前の事です。

余談ですが、私も30代の頃、いろんな作物・薬草を育てるために鍬で畑を耕し、体を鍛えていた時期が数年間あります。考え方としては、戦国時代の武士(百姓)、江戸時代の御家人、または幕末の維新志士が近いかもしれません。

ですので、台湾の方たちの自分の居場所を守ろうとして必死に訓練をし、少しでも良い世の中に変えていきたいというお気持ちはよく分かるつもりです。台湾・韓国・シンガポールなど、軍人経験のある方たちと20代の頃はよく友達になったので、彼らの顔が思い浮かびました。

参考とした動画の中で、自由な民主主義を守ろうと精力的に活動されている政治家、フレディさんの、「中国は台湾を政治的・外交的・経済的に窒息させようとしている」というお話が印象的でした。

政治面では中国の息がかかった政治家が台湾で自由に発言していますし、外交的には国として認めないよう、諸外国に様々な圧力をかけています。そして経済的には、レアメタルの輸出規制などで日本も度々圧力を受けているので、そのやり口は日本人もよく分かっているでしょう。台湾は世界経済におけるキープレイヤーであり、最先端の半導体製品を世界が依存している以上、有事が起きた際の民間生活への影響は計り知れません。

このような経緯を知れば知る程、台湾の人々からすれば、安倍元首相の「台湾有事は日本有事」という言葉には大変勇気づけられたと思います。世間ではいろいろ言われる事もありますけれど、少なくとも日本や台湾の防衛に関して言えば、彼は必要な人物でした。中国を本気で封じ込めようとしているインド首相との繋がりも強かったようですし、せっかく構築した外交関係が後退しないことを願うばかりです。

補足:
中国にとっては、安倍元首相の存在は目の上のたんこぶだったはずなので、銃撃事件が起きた時、私は山上容疑者の背後には外国勢力がいるのでは?と当初疑いを持ちました。結局、彼の犯行動機は個人的なものだと分かり、その内容には同情する部分もあるため、何とかできなかったのかと複雑な気持ちになります。哲学や宗教を学んだ一人として、それらの知識を悪用し、他人を不幸にする人たちが本当に国内に存在するのだとしたら、憤りを覚えます。


ウクライナや台湾で起きている事は、近い将来日本でも起きる可能性があります。前線での武力による戦いは自衛隊(戦闘のプロ)にお任せするとしても、何でもかんでも国に頼ろうとすると、国民に増税として跳ね返ってきます。

武器・弾薬を揃える事は重要ですけれど、お金は勝手に湧いて出てくるものでは無い以上、本質的なところから取り組まなくてはなりません。臆病心から武器を沢山揃えるのではなく、何が必要かを国民自身が考え、話を進めていきたいものです。

ここでせっかくなので、先日も言及しました河井継之助の言葉を、私なりに意訳して再掲してみます。

「世間で価値があると思われているものは、本当の価値ではない。本質ではないことに意識を向けるのは、刃の曲がった鋏(はさみ)で生地を裁つようなものである。そのため、裁てば裁つほど曲がっていく。本当の価値を直視し、本質から問題解決を着手していかなければ、世のために良いと思ったことでも、全て上辺の結果になってしまう。天下国家を論じたところで、根本から改造・改善していく事は到底無理だ」
-河井継之助(当時33歳)が『久敬舎』に在塾中、鈴木少年に対して語ったお話

4.日本について

次に日本の話に移ります。段落2の画像をご覧いただきますと、日本には主要な米軍基地が8か所(三沢、横田、横須賀、厚木、岩国、佐世保、嘉手納、普天間)あります。北海道には自衛隊の基地だけがあるようで、米国にとっては、昔からロシアよりも中国の脅威の度合いの方がはるかに大きいと判断している事が分かります。

自衛隊の総兵力は約24万人です。Global Noteの情報を元にしますと、2020年の軍事費は約6.8兆円となります。

つまり、中国と日本の総兵力の比率は8:1、軍事費の比率は5:1です。この数字だけを見ますと、仮にロシアが弱体化して北海道への侵攻の恐れが無くなり、かつ地政学的に中国が台湾侵攻に全兵力を傾けられない現実を考慮しても、現時点の自衛隊の戦力だけで中国と対等に渡り合うのはやはり厳しいと感じます。日本が海上主体の戦力構成だとしてもです。

そこで、米国との連携が台湾防衛の大前提となりますが、それでも会戦海域が遠く、補給線も長くなる事実は変わりません。この場合の地の利は中国にあるため、初期の段階で台湾が中国海軍・空軍によって包囲・経済封鎖されてしまうシナリオは不可避と考えられます。よって、いかに迅速に会戦海域に到着できるかが、戦略・戦術の要となります。当然中国からすれば、日本の自衛隊を台湾海域に近づけさせないために、様々な作戦行動を事前に取ってくるでしょう。

ただし、たとえこちらの想定通りに会敵できたとしても、日本の自衛隊は武器・弾薬が不足していることは、昔から周知の事実です。このような理由から、急遽増税してでもミサイル等を大量購入する、という話が突然出てきたのでしょうが、経済が縮小している中で、困ったことです。

注:
このコラムでは、台湾有事の際には、米国と日本が台湾防衛に共同で参戦する、という前提で話します。なぜかと言うと、私が調べた海外での想定シナリオでは、どれも日本が参戦する前提で書かれているからです。現実問題として、日本が台湾防衛に加わらないという選択肢はありません。なぜならば、もし何も行動を起こさなかった場合、米国との信頼関係が崩れ、将来日本が侵略された時に誰も助けてくれなくなる可能性が高いからです。ビジネスでもそうですが、臆病で勝つ気の無い人に投資する企業はまずないでしょう。よって、台湾の防衛(民主主義を守る事)は日本を守ることと同義と考えます。


また、日本の貿易ルート(補給路)の観点から、台湾防衛の意義を改めて説明します。

国際的補給路の確認
もし有事が起きて中国とロシアからの輸入がストップし、さらに台湾が中国の支配下に落ちて、日米の防衛線がグアム辺りの第二次列島線まで下がってしまうと、日本は中国の匙加減一つで原油などの輸入(黄色の線)も満足に出来なくなる事が分かります。よって、経済的にも軍事的にも干上がることになり、ここまで追い込まれると、日本が取れる戦略は限りなく少なくなります。

一方、国内の方に目を向ければ、日本は昔からスパイ天国と言われ久しいです。それなのになぜか、外国からの情報工作に対して何の対策も取られていません。

後、民間レベルで懸念しているのは、日本人は長年領空・領海を隣国に何度も侵犯され続けていて、国民も慣れっこになってしまっている事です。例えば、仮に弾道ミサイルを発射されても、せいぜいサイレンを鳴らすくらいで、本気でミサイルが落とされる可能性を考慮して対策しているのかはよく分かりません。

相手が航空機や艦船を使って領空・領海を侵犯してくるという事は、何らかの意図があって行っています。軍人は合理的に行動しますので、莫大な費用を掛けている以上、気まぐれで侵入してくるわけではありません。

多くの場合、有事における自衛隊の即応能力を分析するためと考えられます。例えば、どの段階で戦闘機や爆撃機がレーダーで捕捉されるのか、そして補足されてから会敵するまでの時間などを測ることで、相手の戦闘能力を(一部でも)知ることができます。他には、政治家や一般国民がどのように反応するかも当然分析しているでしょう。

したがって、もし日本人が領空・領海を侵犯されても「またか」と思ってまともに反応しなくなれば、中国やロシアから見れば、「もっとやれる」という間違ったシグナルを送っていることになります。そしてある時突然、ウクライナがやられたように、日本も虚を突かれる形で奇襲攻撃を受けてしまう可能性が高いです。

そうならないためには、領空・領海侵犯を繰り返している戦闘機や調査船に対しては、他の国が行っているように、何度か警告した上で聞かなければ、拿捕するなり撃ち落とすなりしなければなりません。ただしそのためには、核武装の議論がやはり必要となります。この議論を真正面から出来ないのであれば、核を持った軍事大国の狭間で翻弄されてしまう運命は、ある程度甘受するしかないです。

私の意見としては、弾道ミサイルの配備はすべきと考えています。しかし、核の保有については、その時々の状況に応じて判断していくのが正解と思っています。なぜならば、国内事情だけでなく、外部事情も考慮しなくてはならないからです。最初から持つとか持たないとかの答えを決めてしまうと、臨機応変な戦略が取れなくなりますので、中国やロシアからすれば、日本は手玉に取りやすい相手になってしまいます。

これには非常に高度な外交力が必要となり、料理で例えますと、その時々に用意された材料を創意工夫しながら、一流の料理を作るようなものです。材料の品質、焼き具合、調味料の加減一つで味は全く変わっていきます。

最初から「核武装は出来ない」と言う人は絶対出来ないので、(本人の考えや信念はどうあれ)敵を利する形になってしまいます。まずは型にはまらない、柔軟な思考が出来る人材を探すことから始めなくてはなりません。

日本の抱えている課題は、一朝一夕でどうにかはなりません。とりあえず何とかしようと安易な対策を行えば、国民の間で分断が起こるなどの混乱が新たに生じてしまいます。単に金で武器を揃えて、スパイ防止法を作って、そしてサイバー対策を行えばどうにかなるような問題ではないです。

最後にもう一つ、日本が危ないからと反対に、ネットやニュースではセンセーショナルに人を煽る記事や動画も出ているようです。大半は日本人や祖国のためを思っての内容と思いますし、多くの人に見てもらいたいという気持ちも分かりますが、あまり国民を焚きつけないでいただきたいものです。

平時には、勇者ほど己を厳しく律する必要があります。実際に戦闘が起きてやむを得ない時に、その勇ましさを存分に発揮されていただきたいと思います。臆病な人ほど身の危険を感じると豹変してしまうので、言葉という名の刃を、普段からネットなどで振り回すべきではありません。

「士は独立自信を貴ぶ。熱に依り炎に附くの念起こすべからず。」
佐藤一斎『言志録』より 

5.AUKUSについて

次にAUKUS(オーストラリア・イギリス・アメリカ)による、三国間の軍事同盟の話に移ります。これは、インド太平洋地域において影響力を増している、中国に対抗するために設立されたと言われています。

米軍の総兵力は約135万人で、Global Noteの情報を元にすると、2020年の軍事費は約108兆円となります。同様に、英軍の総兵力は約15万人で、2020年の軍事費は約8兆円。そして、豪軍の総兵力は約6万人で、2020年の軍事費は約3兆7000億円となります。

中国との武力衝突が起きた際は、軍事力が突出しているアメリカが前線で戦い、イギリスとオーストラリアは後方支援がメインになるはずです。よって、米軍だけで考えますと、中国と米国の総兵力の比率は約10:7、そして軍事費の比率は約1:3となります。

さすが世界の警察と言われただけあって、データをまとめたJohnnyさんによると、本土以外で米軍基地は全世界に約750あるそうです。圧倒的ですね。

ここから、米軍が通常兵器を前提とした戦争にはべらぼうに強いという事は分かりますけれど、弾道ミサイルやABC兵器(核・生物・化学兵器)の使用も考慮に入れた場合の実力は、前例が無いので未知数です。

分析には何らかの基準が無いといけないので、次回のコラムでは、海外のアナリストが作成した戦争シナリオを基にしながら論じていきたいと思います。

イギリスについては、有事に直接戦闘に参加するには地球の裏側からで距離が遠すぎるため、主な役割は外交面、特に西側諸国の団結を促し、国際世論を醸成する事となるでしょう。グローバルに情報発信力のあるBBCの存在は心強いです。

オーストラリアについては、主な役割は軍事的な後方支援、つまり米軍が使用するための基地の提供や情報収集になると思います。他には、豪海軍が英海軍と協力して、インドネシア海域の補給路を確保するための任務も担当するかもしれません。インドネシアは中立を維持すると考えられるので、地域情勢には注視しておく必要があります。

余談として、私がオーストラリアで大学生だった時に、自分は関わりませんでしたけれど、他のプロジェクトチームは、第五世代戦闘機F-35(日本も採用していますね)の国際的なJSF計画に参加していました。そのチームは特に、GPS関連の開発プロジェクトに関わっていたそうです。軍事機密を口外しないという契約書を書かされたそうで、(当然ですけれど)詳しくは話せないとその時のプロジェクトリーダーがおっしゃっておりました。自分も選択科目として軍事工学を選んだので、どのように戦闘機開発で基礎知識が活かされているのかには非常に興味がありました。

今思いますと、当時たとえ親中政権であっても、米国はオーストラリアと機密情報を共有するほどの信頼関係が昔からあったという事が分かります。

6.北朝鮮と韓国について

北朝鮮については、ユーチューブでの脱北者の方々のお話を聞いていますと、私たちが想像もできない世界で生きている人々が現実にいるのだと思い知らされます。独裁体制を維持するための国民への洗脳がいかに恐ろしいかも分かりました。

他に、私がオーストラリアに滞在していた頃、北朝鮮軍の特殊部隊の戦闘力の高さについて、友人の韓国人が話してくれた事があります。そのような話を思い起こすと、北朝鮮のスパイも日本国内にいるはずなので、中国のスパイと合わせてそこは気になるところです。

素人考えとしては、北朝鮮は兵士の数も桁違いですし、日本を敵として教育されていますので、そういう洗脳された人たちと戦うのは、いくら訓練を受けた自衛隊でも長期間は厳しいと感じます。したがって、日本は弾道ミサイルの迎撃、難民に扮した小型船による海上からの襲撃やサイバー攻撃の阻止、そして国内でのスパイ活動を抑止するだけで、後は韓国軍や在韓米軍に全てお任せした方が良いと思います。

近年、断続的に弾道ミサイルの発射試験を行っているところを見ますと、中国やロシアと裏で繋がっているのは明らかなため、この三か国は同盟関係を結んでいるという前提で、日本は防衛戦略を立てることが重要です。

韓国については、台湾有事に北朝鮮が連動して軍事行動を起こす可能性がある以上、抑止力維持のために、北朝鮮だけに集中していただいた方が良いでしょう。海外の台湾有事シナリオでも、韓国の名前が出てこないので、おそらく軍事アナリストの多くも同じように考えているのだと思います。

後もう一つ、昔からどうしても気になっているのが、北朝鮮の国境から首都のソウルが位置的に近すぎる事です。将来の韓半島統一を見越してそのままにしているのだと思いますが、リスクを考慮すれば、一時的にでも首都機能は分散させておいた方が良い気がします。日本も首都機能が東京に集中しているので、他人事ではありませんが。

7.他の国々について

他に気になる国々としては、フィリピンとモンゴルがあります。

フィリピンは第一列島線の防衛ラインを守るためにも、出来るだけ西側諸国の味方になってほしい国ですね。2022年12月6日に、航空自衛隊がF-15戦闘機2機を戦後初めてフィリピンに派遣しました。南シナ海権益を主張している中国を抑えるためには、日本との防衛協力を強化した方が良いという政治的判断なのでしょう。東アジア情勢が急激に変化しているのを感じます。

そしてモンゴルは、中国包囲網を形成するために非常に重要な位置にあるので、インドが関係強化を模索しているようです。ただし、中国やロシアと国境を接しており、地理的に挟まれている形になっているため、両国からの圧力・懐柔工作は、熾烈を極めていると容易に想像できます。それが理由かどうかは分かりませんが、2022年12月4日には中国への石炭輸出に絡む政府高官の横領疑惑に対して市民が怒り、大規模なデモが起こりました。政権腐敗が問題となっているモンゴルと、中国包囲網の形成で交渉するのは、国内政治が不安定で外交力の弱い日本では荷が重いので、インドや米国に任せておいた方が良さそうです。

後は、インドネシア・ベトナム・マレーシア・タイとも出来るだけ密接な外交関係を築いておきたいところですが、中立を望んでいる節もあるので、国内リソースが限られている現状ですと、国益の観点から優先すべき国を決め、関係強化に臨んでいくしかないでしょう。

8.まとめ

今回はここまでとします。

机上分析の段階では、あらゆる可能性を考慮するために、十分な時間をかけての調査・分析が不可欠となります。平時に全体の情勢が掴めていれば、いざ有事になった際には、それらの知識を基に迅速な行動判断ができるようになるからです。それと、軍事戦略とビジネス戦略では、分析に対する姿勢が若干異なるという点が今回分かりました。非常に興味深いです。

巷のニュースでは、防衛強化のために長距離巡航ミサイルを増やすとか、増税するとかなどの話題で持ちきりですが、そのようなトピックを限定した戦術レベルの議論でどうにかなる話ではありません。もし根源的な問題を何とかしたいのであれば、それが唯一出来るのは一人一人の国民です。

日本は本来、非常に大きなポテンシャルを持っています。地政学的にも有利なポジションにありますし、長期的視野で根本的な問題解決に取り組んでいけば、将来的には経済の活性化が見込めるだけでなく、さらに太平洋進出を目論んでいる中国にすら、戦略的に抑え込まれることはないでしょう。(急速な人口減少による、短期的な国力衰退はもはや免れませんが)

私の考える根本的な問題解決とは、具体的に何を指しているかと言いますと、人類に災厄をもたらす要因となる『臆病心(問題)』を、『勇気で克服(解決)する』事です。中国に限らずロシアもですが、相手国民の臆病心を煽って、弱点を執拗に突いてくるからです。ロシアがウクライナのインフラを攻撃しているのもそれが理由です。非常に卑怯な手ですが、戦略的に有効な手段であるのは否めません。

日本が中国と武力衝突した場合、国内のインフラや一般市民も攻撃対象となる可能性を、今から真剣に考えておくべきです。自衛隊や警察だけで抑えきれるものではないため、前々回のコラムで、敵が攻めてきたら私も戦う覚悟があると言ったのも、それが理由です。安全地帯などありません。

このトピックについては、後のコラムで改めて論じる事になると思うので、ここで止めておきます。

次回以降では、AUKUSとQUADによる各国の中国包囲網戦略の紹介、そして軍事アナリストが想定している戦争シナリオから、各国の対応や戦略策定について、いろいろ考えてみたいと思います。人命に関わるセンシティブな内容となり、解決策は私の思想・信念に基づく提案となりますので、残りはホームページの方に載せようと思います。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

9.参考にした資料

自らの仮説と他国で行われている分析内容との整合性を図るため、今回と次回以降のコラムは以下のソースを参考にしています。

● How could a war between China and Taiwan play out? | Four Corners
  ○ From ABCニュース(YouTube)
  ○ 備考:オーストラリアの公共放送
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=-q_GktDcqX4&t=781s
● Defending Taiwan | CBS Reports
  ○ From CBSニュース(YouTube)
  ○ 備考:アメリカのテレビ・ラジオ放送局
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=W6nJUFM7Rjk&t=500s
● Inside the battle for Taiwan and China's looming war threat
  ○ From 60 Minutes Australia(YouTube)
  ○ 備考:アメリカテレビ番組のオーストラリアバージョン
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=hGOpZeU7GA8&t=674s
● World Exclusive: Chinese spy spills secrets to expose Communist espionage
  ○ From 60 Minutes Australia(YouTube)
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=zdR-I35Ladk&t=1539s
● Reuters Investigates T-DAY: The Battle for Taiwan
  ○ From REUTERS
  ○ 備考:ロイターはイギリスのロンドンに本社を置く通信社
  ○ https://www.reuters.com/investigates/section/taiwan-china/
● The US Military is EVERYWHERE
  ○ By Johnny Harris(YouTube)
● How India is TRAPPING China with its Military STRATEGY? : Geopolitical Case study
  ○ By Think School(YouTube)
● GLOBAL NOTE
  ○ https://www.globalnote.jp/post-3871.html
● 韓国に住んでる脱北者が告白した真実と日本に行きたがる理由【1部~3部】
  ○ ジュジュワールドJUJUWORLDより(YouTube)
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=QBiGmhssz8k
● 脱北者が思う日本と韓国【最終回】
  ○ ジュジュワールドJUJUWORLDより(YouTube)
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=XNnlbgH-PGU
● 沖縄のF-15撤収&F-22配備【滑走路に集結する戦闘機】極東最大のアメリカ空軍基地・嘉手納
  ○ USA Military Channel 2より(YouTube)
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=AInrmz3Ah3s
● 宇宙産業の経済規模が拡大-2021年は約64兆円に成長と米宇宙財団が発表
  ○ https://spacemedia.jp/spacebis/2865
● 中国宇宙ステーションが完成
  ○ https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/12747_css
● モンゴル首都で数千人がデモ 政府高官の腐敗に抗議 インフレへの不満も
  ○ TBS NEWS DIGより(YouTube)
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=r9UUc_lrG1A
● フィリピンに空自戦闘機 戦後初のASEAN派遣
  ○ KYODO NEWSより(YouTube)
  ○ https://www.youtube.com/watch?v=_QLpsrwKj4E
● 中国、ソロモン諸島と安全保障協定を締結と発表 米・豪は懸念
  ○ REUTERSより
  ○ https://jp.reuters.com/article/solomon-islands-security-idJPKCN2MB0NR
● ソロモン首相、中国の軍事拠点化認めずと説明 豪首相と会談
  ○ REUTERSより
  ○ https://jp.reuters.com/article/australia-solomon-islands-idJPKBN2R110C
● Fact Sheet: Quad Leaders’ Summit
  ○ アメリカホワイトハウス公式HPより
  ○ https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/09/24/fact-sheet-quad-leaders-summit/
● 『日本陽明学奇蹟の系譜』
  ○ 河井継之助および佐藤一斎に関する章より
  ○ 大橋健二、叢文社
●『孫子』
  ○ 浅野祐一著、講談社学術文庫

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味水隆廣

財務分析を経営戦略につなげる国際ビジネスのプロ

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