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デジタル化が進む世の中で、中小戦略ファームおよび経営コンサルタントの取るべき道とは?

2022年9月25日 公開 / 2022年11月2日更新

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 経営戦略リスク管理マーケティング戦略

最新のお知らせ:
読みやすくなるよう、所々の言い回しを修正しました。

それと、事前にお伝えしておりました『【講座】戦略コンサルティングサービスに関する市場分析の詳しい解説 』をホームページの方に掲載いたしました。専門家向けの内容となります。


皆さま、こんにちは

経営戦略コンサルタントにご興味ある読者の方へ、コンサルティングに関する包括的な情報をご紹介するコラムシリーズ、第5-3回目です。

今回のキークエスチョンは『デジタル化が進む世の中で、中小戦略ファームおよび経営コンサルタントの取るべき道とは?』となります。

経営戦略コンサルタントに興味ある人のためのコラム紹介概要チャート-戦略ファームおよび経営コンサルタントの取るべき道とは?
以前のコラム5-1と5-2で論じた市場分析と仮説から、ここでは「だから何なの?」という問いに対する答えをまとめます。具体的には、主にDX(デジタルトランスフォーメーション)に対する、中小戦略ファームおよび経営戦略コンサルタントの取るべき対策について、包括的な提案を行います。

私がクライアントの立場なら、分析や考察の過程を詳しく説明されるよりも、結局今回の分析から何が言いたいのかを一番知りたくなると思います。多忙な経営者の方であれば尚更でしょう。事業分析はあくまで手段の一つであり、目的ではない事を忘れてはいけません。

以下の六つの論点に、出来るだけ答えられる内容を目指します。(順不同)

● デジタルとは何なのか?アナログとの違いは?
● なぜデジタル化(デジタルトランスフォーメーション、通称DX)が必要なのか?
● 世のデジタル化(例えばIoT・ビッグデータ・AIなど)で何が変わるのか?
● コンサルティング事業やコーチング事業へはどのような影響があるのか?
● 大手の戦略ファームやコーチングファームはどのような経営方針を取っているのか?
● 私たち中小事業者が取るべき道(対策)とは?

背景や定義など、大まかな事はすでにお話しましたため、すぐに本題に入りたいと思います。

それでは始めます。


1.市場分析全体の要約ダッシュボードを再掲載

初めに、今までご紹介してきた要約ダッシュボードを総括として再び掲載しておきます。

経営戦略コンサルティングサービスに関する1ページ目は、事業者別による推定の『年間市場シェア』、『年間市場規模額と事業者数』、そして『1事業者当たりの年間平均売上と従業員数』を示しています。

1. 経営戦略コンサルティング需給分析ダッシュボード ページ1
2ページ目は、事業者別の『需要分析に基づく顧客ニーズおよび顧客需要の割合』、そして『需要と供給別の推定年間市場規模額』を示したグラフとなります。

2. 経営戦略コンサルティング需給分析ダッシュボード ページ2
ビジネス戦略コーチングサービスに関する1ページ目は、事業者別による推定の『年間市場規模額と事業者数』、そして『1事業者当たりの年間平均売上と従業員数』を示しています。

3. ビジネス戦略コーチング需給分析ダッシュボード ページ1
2ページ目は、事業者別による『需要分析に基づく顧客ニーズおよび顧客需要の割合』、そして『需要と供給別の推定年間市場規模額』を示したグラフとなります。

4. ビジネス戦略コーチング需給分析ダッシュボード ページ2
以上の分析結果を前提として、提案やさらなる洞察を行っていきます。

2.大手戦略ファームの業界リーダーとしての方針、そしてコンサルタントのスキルを知る

まずは、業界のリーダー的存在である、大手戦略コンサルティングファームについて考察してみます。なぜ最初に論じるかと言いますと、売上の規模が大きい(市場シェアの約7割を占める)だけではなく、様々な産業の最新情報がそこに集まるからです。そのような巨大なデータベースを持った大手戦略ファームが現在何を考え、行い、どこへ向かおうとしているのかを知る事は非常に重要となります。

2-1.傾向把握や今後のビジネスチャンスのために、新聞を毎日読むのが効果的

ただ、通常株式を公開していないので、一般人にはファームの経営戦略や財務状況などを知る手立てはありません。では、どのように情報を知るかと言いますと、最新情報でしたら月並みですが、経済系の新聞などを毎日読むのが良いかと思います。たまに有名コンサルティングファームの方が記事でコメントをしているのを見るので、記者の方が定期的に取材を行っているのでしょう。たとえそこから戦略ファームの事業方針を具体的に知る事は出来なくても、様々な記事の内容から、現状および今後の傾向などを推察することは可能です。

最近はDX人材の育成などで、データ解析力などが世間で注目されたりしますが、このように分析力だけではなく、並行して限られた情報からでも仮説を構築する思考力・想像力を鍛えておく事も重要と考えます。

それと、新聞をお勧めするもう一つの理由に、新たな市場ニーズの予測が可能になる(つまり新たなビジネスチャンスを感じ取れるようになる)事が挙げられます。たまに記事を読んでいると、情報発信力のある大手メディアと、業界のリーダー的企業が協力して、新たなニーズ創出を模索(必要性を潜在顧客に気付かせようと)しているのでは?と感じる時もあります。

これは非常に効果的な方法で、一般の中小企業の場合(中小戦略ファーム含む)ですと、売上を上げるための施策はせいぜい需要喚起か単価を上げるくらいしか出来ないので、顧客ニーズという市場需要よりさらに上流の市場パラメータにインパクトを与えられる大手企業(大手戦略ファーム含む)との差は大きいと言えます。

2-2.一流の戦略コンサルタントと肩を並べたければ、基礎知識を学ぶことから始める

後、戦略コンサルタントのスキルについても言及しておきます。FIRMSconsultingのパートナーである、マイケルさんという方が以前おっしゃっておりましたが、20年前の戦略コンサルタントと比べると、今の戦略コンサルタントの方が全体的にスキルレベルは高いそうです。毎年人材育成に多くの時間とお金を投資している分、大手戦略ファームではスキルだけでなく、育成ノウハウなども毎年向上しているのでしょう。

最近の大手に在籍している戦略コンサルタントが、どのような知識やスキルを持っているかは分かりませんが、一つだけ私が確信できている事はあります。それは、最新のスキルやノウハウも、全て基本の知識・技能から培われたものだという事です。よって、もし一流の戦略コンサルタントと肩を並べたければ、その最初の一歩は経営戦略の基礎知識を身に付けることからとなります。基礎を身に付けることで、一流の凄さがより身近に感じられるようになるはずです。そのような学習訓練を行わず、試行錯誤も経ていない表層の知識・ノウハウは、たとえ世間では持てはやされても実際の仕事ではあまり役立ちません。

以上の理由から、中小戦略ファームや個人の経営戦略コンサルタントにとって、長い物に巻かれて事業を行うにしても、巻かれずに独自の事業を行うにしても、大手戦略ファームの経営方針や戦略コンサルタントのスキルがどのようなものかについて、定期的に情報収集をしておくことは非常に重要と言えます。

己を知り彼を知れば百戦殆からず
孫子より

3.コンサルティングサービスのデジタル化は避けられないので、競合する事業者は対策を講じる

前の段落2では、大手戦略ファームの方針を知る、というお話をいたしました。ここでは、その方針の一つと目される、コンサルティングサービスのデジタル化について考えてみたいと思います。

デジタル化とは、例えばここではIoT(モノのインターネット)・ビッグデータ・AI(人工知能)などを活用したサービスの事を指します。大手の戦略ファームは現状、公では詳しいお話をされないと思いますが、デジタル化したコンサルティングサービスの提供を真剣に検討しているはずです。その理由はいくつかあります。

一つ目として、現状の事業体制では規模の経済を活かしにくいという理由があります。つまり、事業活動の大部分を個人の能力・労働力に頼っているので、売上を増やそうとすれば、人件費・人材育成費などでコストも増え、利益を効率的に上げづらいという特徴を持っています。

例えば、売上を増やすためにはより多くの仕事を処理できなくてはなりません。そしてより多くの仕事を処理するためには、より多くの人材が必要となります。しかし、そのような優秀な人材を増やし、維持していくためには、採用コスト・人材育成コスト・人件費(給料)などでお金がかかります。加えて、教育や訓練にも時間がかかりますので、ファームの売上高に貢献するようになるのは何年も先の事となります。これが、既存のコンサルティング事業において、利益を効率的に増やす際のボトルネックとなっています。

二つ目のデジタルサービスを検討する理由として、大手戦略ファームは業界リーダーとして競合相手に対し、常に心理的・技術的・価格的な参入障壁を作り、競争優位性を保ち続けなくてはならないからです。そのためには、AIやIoTなどの新しいデジタル技術を一早く導入し、率先してコンサルティングサービスの次世代スタンダードを示さなくてはなりません。仮に競合が先にデジタルサービスを開発してしまうと、市場シェアを一気に奪われかねないリスクとなり、大手戦略ファームにとって他に選択肢はないと思われます。

現在のコンサルティングサービスを完全にAIなどで代替することは当面不可能でしょうが、一部のサービスに限定すれば可能と思います。最近ですと、例えばカスタマーサポートではよく見るようになりました。なぜカスタマーサポートかと言いますと、おそらくですが、AIが回答内容を模索する場(フィールド)がサービスの範囲内と定義(または限定)されていますし、そのサービスには通常規則(ルール)や条件があります。そして、ビッグデータにより顧客のお問い合わせ内容や受け答えに対する一定の法則を発見することで、より適切と思われる回答(アンサー)を予測できるようになるのではないでしょうか?人の手を借りずにクライアントが満足するような課題解決はまだまだ無理でしょうが、AIにとっては得意な分野と考えらえます。

戦略コンサルティングサービスのケースで考えてみますと、例えば、データベースの事例リサーチ財務分析からの問題点指摘・解決策の提案などは、AIでも比較的簡単に実現できそうです。

このような世の流れに対して、他の中小戦略ファームや個人の経営戦略コンサルタント(私も含む)はどうすれば良いのでしょうか?実際にはまだ具体的な対策を講じていなくとも、いずれは必要と、多くの中小コンサルティング事業者は直感で感じているはずです。

私が考えられる基本対策は、大まかに分けて、『長い物に巻かれること』と『アナログの力を臨機応変に発揮すること』の二つがあります。どちらか一方だけというよりは、必要に応じて両方を使い分けるという感じです。あくまで私の場合であり、他の人には当てはまらないかもしれませんが一応書いてみたいと思います。人それぞれ条件が異なりますので、「これをやればすべて解決!」のような万能策はないはずです。

補足:
本コラムのアナログ・デジタル・AIに関する内容の一部は、秀和システム出版の書籍『コンサル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』のコンセプトデザイナー、廣川州伸さんが執筆されているコラムおよび資料の内容を参考にしています。

3-1.長い物に巻かれること

まず、コンサルティングサービスのデジタル化が避けられないのであれば、その流れには逆らわず、長い物に巻かれるために行動するのも一つの手です。例えば、既存のAI技術の弱点を補完または代替するような独自サービスを開発・提供したり、大手からAIコンサルティングサービスが提供され始めたら、そのサービスの支援業者として提携できないか交渉を行ったりです。

この時の懸念事項として、経営資源の少ない中小戦略ファームや個人の経営戦略コンサルタントが、どれほどのDXスキルを学べば補完・代替でき、かつ費用対効果の高いサービスを開発できるのか、そのための期間やコストはどれくらいかかるのかを注意深く見積もる必要があります。ただ、大手が提供するであろう、AIコンサルティングサービスがどのようなものになるのか全く分からないので、中小事業者にとってそれがチャンスなのか、それとも脅威なのかのリスク評価ができません。一部の巨大企業が各業界で多くのシェアを握っている現状を見ますと、今後のデジタル市場もさらなる寡占化が進むことは予測されます。

ちなみに、この考察途中で、IoT・ビッグデータ・AI技術がどれほど世の中で進んでいるのかに興味を持ちましたので、その分野で最先端を行くグーグルのスマートフォン(Pixelシリーズ)を試しに購入してみました。いつもお手頃価格のものばかり使って満足していた自分にとっては、デジタル化へ対応するための大きな一歩と言えます。

実際に使ってみたところ、リアルタイムでの翻訳や文字起こし機能など、面白い事ができると分かった反面、多くの機能は他のスマホでも一応利用可能と分かりました。カメラは優れたAI補正のおかげで、暗くても綺麗に撮れますね。驚きました。会社の成り立ちを考えても、やはりグーグルの強みはソフトウェア開発にあり、それらソフトウェアの能力を遺憾なく発揮するために、処理性能の高い独自SoC(System on a Chipの略)を搭載しているのだと思いました。メインで売り出している商品を実際に使ってみる事で、グーグルという企業の事業方針も見えてくるような気がいたします。

追記:
ホームページの方で『Google Pixel 6aの比較レビュー』を掲載いたしました。カメラが高機能である事が分かると思います。

いずれにしても、デジタル化に向けて皆が躍起になっている現代社会において、規模の小さい事業者は大手企業が提供するサービスに大なり小なり頼らなくてはなりません。よって、自らの強み・弱みを相互補完できる形でうまくバランスを取って付き合っていく事が大事となります。

3-2.アナログの力(個性・独創性・創造性)を臨機応変に発揮すること

次に、前段落の3-1で、ある程度は長い物に巻かれる事が重要というお話をしましたが、だからと言って大手が提供する最新のデジタルサービスだけに頼っていると、便利と感じる分、人として本来持っている能力(本能)は衰えていくように感じます。このようなデジタル化が不可避な時代に私たちが生きているからこそ、アナログの重要性を改めて見直す必要があると思います。

例えば、人材をコストとしてではなく、資産として捉えなおす社会的な動きがありますが、その理由はこれからの時代、均質性を追求したり異質なものを排除したりする、品質重視の既存ビジネスだけではやっていけないと、多くの人が気付き始めてきたからかもしれません。

近年ですと、個人の独創性あるアナログ情報をデジタルの場で紹介する、ユーチューバーの方々が良い事例だと思います。個性やオリジナリティから生み出される彼らの動画作品は、YouTubeというデジタルプラットフォームを介して、視聴者個々人に共通体験をもたらします。しかし、体験そのものは共通であっても、視聴者側はそれら作品を異なった感性で各自が受け止めています。

このアナログ情報をデジタルの世界で展開するというところが肝です。なぜならば、アナログ情報は複製しづらいという特徴を持っているからです。コピーによる大量生産・販売が難しいので、例えば、近年はライブ音楽をネット配信したりするサービスも当たり前になりました。一方のデジタルデータ最大の特徴は、簡単に複製できるということですが、大量に製造すればするほど、その商品やサービスの市場価値はゼロに近づくというデメリットを持っています。

ユーチューバーについてもう少し掘り下げてみます。アナログ世界で生きている私たち人を中心に据えた独創性のあるコンテンツは、仮に動画データを複製したり、表面的に人気ユーチューバーの真似をしたりしてもあまり意味がありません。なぜならば、その人のオリジナリティ・希少性にこそ価値があるからです。次にどんな動画作品を見せてくれるのだろう、というワクワク感は当人にしか生み出せないものです。

つまり、これからのデジタル社会における中小ビジネスとは、大量生産の流れを生み出したかつての物質主義による「モノ」中心のビジネスではなく、儲けだけを追求した資本主義による「カネ」中心のビジネスでもなく、インターネット社会により情報を生み出し続けた「情報」中心のビジネスでもない、人を中心に据えて商品・サービスを提供する「ヒト」中心のビジネスになりつつあると感じます。

中小の事業者こそ、アナログの価値(私たちはどうあるべきか)を基にしたデジタルサービスの提供が重要となります。しかしそのためには、現実世界において自分独自のアナログ情報の価値に気付かなくてはなりません。もしそのような価値が現状見つからなければ、発見する努力をするか、新たに創り出す必要があります。

それと、ここで一つ重要な注意事項があります。それは、そのリアルなアナログ情報をデジタル技術によって複製する事自体に、意味や価値があるものであってはいけません。どういう事かと言いますと、例えば、個人のアナログ的感性から創り出した音楽作品をデジタルデータに変換した商品、つまり音楽CDが当てはまります。コピー製品として市場に氾濫するような商品・サービスですと、音楽CD業界と同じ運命を辿ってしまう可能性があります。

こうならないよう、本来は消費者のモラル向上が望まれるところですが、社会的・経済的背景もあると思うので、単純に規制を強化すれば良いとも言えません。新たなビジネスチャンスの芽を摘み取ってしまう可能性があるからです。人を「こうあるべき」と変えるよりも、自分が時代に合わせて主体的に変わり、新しいビジネスを考えた方がより生産的・発展的と言えます。

他人が真似しようと思っても、その人個人にしかできない商品やサービスを創り出すことが出来ますと理想的です。もし大手が参入し、同じモノを大量生産・販売出来たとしても、ファンになった顧客が価値を見出すのは、それら均質性のあるクオリティ商品ではなく、その人個人が創った作品となります。このように考えますと、近年ムーブメントになっているビジネスとは、ビジネスでありながら同時にアートの側面も持っているという事が分かります。このレベルになると、「新商品開発」と言うよりも、クリエイターとして「新作品開発」と言った方がより適切かもしれません。

以上のような、ビジネス商品でありながら、同時にアート作品でもあるという部分に、これからのデジタル社会で生きていくヒントが隠されていると思います。実は、私の提供するコンサルティングまたはコーチングサービスも、基本的にはビジネスを目的としたサービスではありますが、その中身はどちらかと言うと唯一無二の作品、つまりアートに近いと考えています。少なくとも私はそのような意識で毎回取り組んでいます。

おそらく、仮にAIが人真似をしたところで、当面ワクワクするような創造的コンテンツや、プロ顔負けのコンサルティングサービスは出てこないと思います。法則性の無い現実世界で臨機応変に対応することを、AIは苦手としているからです。逆に、意外性を必要としない法則性のあるコンテンツやサービスこそ、AIの本領が期待できる分野と言えます。

いずれにしましても、もし量子コンピューターなどの分野で技術革新があり、(格闘技などでよく言われる)守・破・離の世界を体得できるレベルまでAIが進化したら、人間でもアナログさで敵うかどうかは分からなくなります。油断をせず、常日頃からの自己研鑽は大事と思います。

法則性がない臨機応変さこそ、(アナログな)人として本領を発揮できる分野である
漸コンサルティング

3-3.(補足)デジタル・アナログ情報の違いと特徴について

ここで、デジタルとアナログについて基本的定義を確認しつつ、より深い考察をしてみたいと思います。本筋とは関係ないので、哲学的なお話が苦手な方は、読み飛ばしていただけますと幸いです。

ご存知のように、デジタル情報は0と1という整数で構成されています。デジタルデータの特徴としては、複製が容易で他者と共有しやすいという事です。本コラムもそうですね。

一方のアナログ情報は、無限に広がる実数の世界となります。私たちが普段当たり前のように暮らしているのもアナログの世界です。

例えば、アナログの世界では0と1の間に無限の数字が存在します。アナログデータの特徴として、連続的でデータ量に限りが無いため完全な状態では複製できないという事が挙げられます。全く同じものが存在しないので、唯一性を持っているという事です。学校ではアナログな波形として、サイン波やコサイン波を学びますね。円運動(振動)をしていて、オシロスコープなどで見ると、連続的な波の形状をしている事が分かります。

追記:定義や内容が間違っている際は、教えていただけますと助かります。


以下は、オーストラリアで学生時代に撮った写真です。確か、シグナルジェネレータの信号をオシロスコープでチェックしている所だと思います。

シグナルジェネレータの信号出力をオシロスコープで確認
この無限に拡がるアナログの世界を、私は雨降り後の虹を見た時に初めて気づきました。虹の色は良く見てみると、赤色・橙色・黄色などと突然変化しているわけではありません。連続的に色が遷移していきます。つまり無限に色が存在しているという事であり、言い換えますと(線引きができないので)虹色は一つの色とも言えます。7色という色数は、日本人が便宜的に定めたものに過ぎません。これがアメリカですと6色となり、ドイツの場合は5色となります。

以下の写真は、雨上がりにたまたま撮影したものです。ここまではっきり円として見えたのは生まれて初めてでした。

雨降り後に庭から見えた綺麗な虹
同じもの(アナログ情報)を見ているのに、見え方が異なるという現実は、私たちに様々な示唆を与えてくれます。

例えば、国際ビジネスや国家間の外交が難しいのはこの認識の相違にあります。最近は翻訳ソフトも進化していますが、仕事などで外国に長期滞在するのであれば、言語を理解するだけでは不十分です。日本人同士でも立場や背景が異なれば意思疎通が難しくなるのに、それが海外の人となれば尚更となります。以前出版した本の執筆時にも、様々な国の人たちが関わりましたが、やはり文化の違いで大変だなと思う部分も時折見受けられました。

このように、アナログ情報は受け取る相手によって誤解を生む要因ともなりえますが、逆にポジティブに考えますと、アナログだからこそ無限のチャンスがあるとも言えます。当初自分が期待したこととは異なる形で、高く評価される可能性もあるからです。

時々テレビでも日本人の海外でのビジネス成功例が紹介されたりしますが、その際、その方々のビジネスを見てみると、日本では特に関心を持たれなかったけれど、外国の人々にはうけて成功した事例がある事に気付きます。寿司で例えるとカリフォルニアロールが有名でしょうか。私も20年前にはフードコートでオージーと一緒によく食べましたが、当時はまだオーストラリアでも珍しく、もしこの寿司を日本で最初に売り出していたら、認知・評価されるのに時間がかかったと思います。

このようにいろいろ考察を拡げていくと、限りのないアナログ世界であるこの世は、ある意味一つの世界であるとも解釈できます。日本の神道では『八百万神(やおよろずのかみ)』という言葉がありますが、これは自然の至る所に神が宿っているという、神羅万象に神の発現を認める考え方です。あらゆる所に神がいるという事は、見方を変えれば自然そのものが一つの神とも言えます。儒教でも『天地万物一体』という考え方がありますし、禅の鈴木大拙という有名な方は、土や石には「一脈の春風的生命の漂い」が感じられると、似た意味の事をおっしゃっておられます。老荘思想にも『天人合一』や『太虚に遊ぶ』という教えがあります。ちなみに太虚とは、人間と宇宙とは本来同質であるという意味です。

いずれも言葉は違いますが、突き詰めるとどれも同じことを、つまり「現実世界は無限であり一体である」という事を言っているように感じます。

西郷隆盛が晩年に『敬天愛人』の境地に達したのは、若い頃に万物一体の教えを説く儒教の講義(厳密には陽明学)を伊東潜龍から受け、そして南島に島流しされた壮年時代には『王陽明全集』や太虚の教えから始まる大塩平八郎の『洗心洞箚記』を愛読していた事と、決して無関係ではないはずです。

さらに付け加えますと、上の写真で分かるように虹は円の形状をしています。円を示す円周率π(3.141592……)は、古代ギリシャの数学者、アルキメデスが導き出しました。割り切れずに永遠に数字が続くので、これもアナログ情報と言えます。この永遠の羅列には、私や読者の方を含め、世の中の全ての情報が含まれています。つまりこの一つの円には、無限の真理が含まれていると捉える事も可能です。

電子や原子のミクロレベルの世界から、宇宙の惑星・軌道・銀河の形まで、自然界は円で成り立っています。なぜ円の形なのか、なぜ円運動をするのか、三角や四角では駄目なのか、疑問に思ったことはないでしょうか?仏教でも昔から円通(意味:あまねく通じ達していること)と言われるように、円が真理に繋がっている事を直感的に知っていたと考えられます。人間が本来持つ直観力・認識力は、すさまじいと言わざるを得ません。

話を戻しますと、それら無限のアナログ情報は、そのままではデジタル情報として活用できないので、いくつかサンプルを取る事で(サンプリングと言います)デジタル情報に変換します。サンプルの数が多ければ多いほど、デジタル情報も元のアナログ情報に近づける事が出来ますが、それでも完璧に再現する事はできません。

デジタル世界の情報とは、0と1の間にある、無限のリアルなアナログ世界の情報をほとんど取り除く(曖昧さを取り除く)ことではじめて成り立つと言えます。近年はメタバースなど、先進的なデジタル分野にのみ脚光が当たる傾向にありますが、私たちが現実に住んでいる世界つまり実数無限構造の方が、デジタルな仮想空間などの整数無限構造よりも、本来はずっと複雑かつシンプルで、次元が高いと考えられます。

つまるところ、IoTやAIなどを使ったサービスとは、センサーが付いたデバイスでアナログデータ等を取得し、それを変換器でデジタルデータに変換、ネットを通してサーバーに送信、ビッグデータとして集約し、それをデジタル技術で構築したAIが解析・判断するシステムの事を指します。アナログ世界の無限であり一つのデータを、それぞれシンプル化(デジタル化)し、ビッグデータとして集めた上で、AIが分析・判断します。

私たち人間も同様に、自分の持つアナログ情報の価値を認識し、それを多くの人が分かりやすい動画やブログ等の形に編集、そしてYouTubeやFacebookなどのデジタルプラットフォームで公開します。デジタルデータなので、情報を受け取る側皆に共通体験をもたらしますが、人それぞれ感性が異なるので、同じ情報であっても異なった印象を抱く事もあります。それらを各自レビューや感想といった形で評価するわけです。

AIも人間もやっている事はあまり変わりませんが、大きな違いは初めのアナログ情報を認識するのがセンサーなのか、それとも人間なのかという事です。センサーの場合、一つのセンサーで一つのデータカテゴリー(温度・湿度・電流・電圧など)しか普通取得できないので、人間の判断に近づけるためには膨大な数のセンサーが必要になります。それでも完ぺきには再現できないですし、複雑に絡み合ったデータ処理は機械に任せるしかありません。一方の人間は、それらデータ群を一体的・感覚的に観察して、直感や経験から臨機応変な判断をする事が可能です。論理的根拠が曖昧で時に判断を間違ったりもしますが、全体で見ると正しい事も多いのはこのためです。

このように考えますと、人間もまだまだ捨てたものでない、無限の可能性を秘めた存在だと感じませんでしょうか?

戦略コンサルタントは論理思考を非常に重視します。それは私も完全に同意しますが、論理思考は本来AIの得意分野のはずなので、人間はすぐに敵わなくなると思います。大手の戦略ファームがコンサルタントの洞察力を非常に重視しているのも、機械で簡単に代替されない、人間性のあるアナログコンサルタントを採用・育成したいからかもしれません。

この部分に、私たち中小事業者の進むべき道が、ヒントとして隠されている気がいたします。DX(デジタルトランスフォーメーション)ばかりが昨今話題となりますが、人類はアナログの世界で生まれ、文明を築いてきたことを忘れてはいけないと思います。

最後に、なぜこのようなお話をしたかと言いますと、理由は二つあります。

一つはアナログの価値を見直してほしい、大事にしてほしいという思いからでした。そして二つ目は、コンサルティングやコーチングの過程で、お客様が当初想定していなかった付加価値を私から見いだされるかもしれないと思ったからです。

(普段はお客様の前で仕事と関係のないお話はいたしませんので、どうぞご安心ください)

4.中小戦略ファームはより大きな規模の顧客セグメントを対象としたビジネスを目指す

本題に戻りまして、次に中小戦略コンサルティングファームの考察に移ります。基本的には段落2で論じた、大手戦略ファームの方針を考慮に入れつつ、事業戦略を立てる事になります。

ただ分析データを見る限り、事業規模が大きいほど、市場規模も一事業者当たりの売上高も大きくなるという相関関係がありますので、迅速な業績向上を目的とするのであれば、自分たちが属している市場よりも一回り大きな顧客がいる市場を(可能であれば)目指した方が良いと思います。

もし既存の市場に留まり、そこで自社の競争優位性を維持・向上させるのであれば、前々回のコラム5-1または前回のコラム5-2ですでに言及していますので、内容が繰り返しとならないようここでは省略します。

5.個人の経営戦略コンサルタントは中規模以上の中小企業向けサービス提供を目指す

そして、個人の経営戦略コンサルタントの場合ですが、こちらも基本的には大手戦略ファームの方針を確認した上で、自身のビジネス戦略を考えることが大事です。

もし法人化を目指さずに、個人の経営戦略コンサルタントとしてずっとやっていくのであれば、出来るだけ早い段階で中規模以上の中小企業向けサービスを提供できるようにした方が良いと思います。そうしませんと、今回の分析結果を見る限り、売上の観点からいつまで経っても持続可能なビジネスにはならない可能性があります。

または、コンサルティング事業一本で行かず、コーチング事業に新規参入したり、パッケージ化したサービスを販売したりと、他の業種や業態に事業を水平展開する方法もあります。ただ、今回は複合事業のケースを想定した市場分析を行っていませんので、詳しい提案は控えたいと思います。あくまで単一事業を前提とした洞察に留めます。

6.個人の経営戦略コーチは中小企業向けのサービス提供を目指す

次に個人の経営戦略コーチのケースですが、こちらも同様に、業界リーダーである大手コーチングファームの方向性を調べた上で、自身の事業戦略を立てた方が良いでしょう。理由も大手戦略コンサルティングファームの場合と同じです。

その上で、もし個人の経営戦略コーチとしてずっと仕事を続けるのであれば、出来るだけ早い段階で、中小企業向けのコーチングサービスを提供できるようになる事をお勧めいたします。なぜならば、そうしないと生活費や経費を捻出できない可能性があるからです。

または、販売単価を上げられそうな他の業種へ新規参入したり、サービスをパッケージ化して販売したりするのも良いかもしれません。いずれにしても、ビジネスモデルに何らかの工夫が必要となります。

7.会社員を対象としたビジネス戦略コーチングサービスは副事業として行う

そして、会社員を対象としたビジネス戦略コーチの場合ですが、こちらも大手コーチングファームのリサーチが大前提となります。

その上で、もし個人のビジネス戦略コーチとしてずっと仕事を続ける予定であれば、十分な売上高を確立するまでは当面副事業として行うことをおすすめします。なぜかと言いますと、個人のお客様だけにサービスを提供すると、前段落同様、基本的な生活を維持できない可能性があるからです。

販売単価を上げられそうな企業研修事業など、他の業種への新規参入や、サービスのパッケージ化も一つの選択肢になるでしょう。単一事業としてやっていくのは大変なので、複合的ビジネスの可能性を模索する必要があります。

8.需要を増やすための戦略策定は市場分析のパラメータから考える

ここからは、今回の市場分析に基づく全般的な提案内容をまとめたいと思います。

顧客ニーズを容易に増やせない、主に事業規模の小さい中小戦略ファームや個人コンサルタントまたは個人コーチ向けのお話となりますが、売上を増やすためには市場需要を喚起する事が基本戦略(供給量に十分な余裕がある場合)となります。

中小企業で企画やマーケティングを担当される方は、まずは4PやSWOT分析などのフレームワークを使い、定性的に市場分析をするのが良いと思います。その理由として、フレームワークを活用した分析は、多くの場合専門的知識を必要としないため、チーム内で自由にアイデアを出し合えるからです。

論理思考も大事ですが、クリエイティブ性がより重要なので、経営リソースが限られている環境ではこのような定性分析だけでも良いと思います。私も会社員として働いていた時、上司がすでに新商品販売などに乗り気で時間的余裕がない場合は、簡潔にリサーチ・定性分析を行って、商品企画書を作り、実行に移した事もあります。ただし、この方法はうまくいかなかった時に原因特定が困難となるので、あらかじめその点に留意しておく必要があります。

一方、経営戦略・財務コンサルタントを雇う場合は、それら定性分析に加え、定量分析(論理分析含む)も行います。もちろん、プロとしてやれることはそれだけではありませんが、今回のような市場規模の試算や、商品の売上・キャッシュフロー・損益分岐点などの事業分析および財務予測などの成果物は、戦略コンサルタントとして分かりやすい付加価値サービスと言えます。

定量分析を行う最大のメリットは、どのパラメータが売上やコストにインパクトを与えているかが簡単に判別できる事です。仮に、あるパラメータの値が低い事で、全体の売上が減少しているようであれば、(理論上は)そのパラメータを改善すれば、売上も向上する事になります。

あくまで私が経営者の立場だったらという話になりますが、外部の経営戦略コンサルタントを雇うのであれば、この定量分析のスキルを持っていることが大前提となります。そうしないと、なぜ売上が向上するのか、なぜ利益が改善するのかを質問しても答えられないでしょうし、クライアントの私としても提案内容を検証しようがないので、最終的には信じるか信じないかで経営判断をするしかなくなります。コンサルタントの直感や経験に基づくアドバイスも重要な事に変わりはありませんが、時と場所そして置かれている状況にもよります。

後、もちろんコンサルティングやコーチングの販売単価を上げられればそれに越した事はありませんが、今の時代、価格には非常に敏感になっているので、変更の際は細心の注意が必要となります。優秀な経営者の方でさえ、この価格設定を間違える事は多いです。一般的には、価格を下げれば市場需要は増えますが、低価格・無料によるサービス提供は、自分自身だけではなく市場全体にとっても諸刃の剣となります。低価格での販売は、過度な価格競争やコスト削減を誘発しやすく、長期的には多くの人が不幸になるだけなので、売上を最も重要視する私としては極力避けるようにしています。

しかし、「商品やサービスの価値が消費者に正しく伝われば、適正価格で購入していただける」と多くの事業者は願っていても、中々消費者には価値が伝わらず、人知れず消えていくのが現実です。理想と現実の狭間で、悔いの無い経営判断をしたいものです。

9.供給量・販路を増やすために異業種への新規参入とパッケージ販売を検討してみる

ここでは、今自分が実際に検討しているビジネスを基にご紹介したいと思います。

簡単なおさらいとして、私は元々自らの職業を『国際財務戦略コンサルタント』と位置づけています。そして、マイベストプロ様では『経営コンサルタント』として登録しています。経営者の方を主なお客様としてサービスを立ち上げたので、この名称・肩書で全く問題ないのですが、実際に事業を始めてみて、自分の立てた仮説に修正が必要と感じ始めています。

その理由の一つとして、世の中の数%である経営者の方に、自分のサービスがちゃんと伝わっているのだろうか?という懸念があるからです。自分の力で販路を開拓する以上、初めは幅広いお客様を対象とするべきだったかもしれません。

したがいまして、ここ数か月間の試行錯誤と今回の市場分析から、今後数年間の事業方針を以下のように定めました。

迅速なデジタルサービスを幅広く提供すること
漸コンサルティング方針


すでに前の段落で言及しましたように、ここでのデジタルサービスを提供するとは、私個人のアナログ的価値をデジタル化して提供するという意味です。

9-1.パッケージ商品として『財務予測モデル』の学習ツールを考案

サービスを幅広く提供する手始めとして、十分な資金力や情報発信力の無い私の場合、まずは市場パイの大きい潜在のお客様にアピールする必要があります。そのためには、一般向けの戦略関連サービスをもっと前面に打ち出した方が良いと感じています。

そうして考案したのが、ビジネス分析の学習を目的とした、財務予測モデルのパッケージ販売です。架空のストーリーをベースに、実際に仕事で使う財務モデルに近い形で作成しているので、実用的なスキルを一通り独学したい方に最適なツールとなっています。

本コラムで実施した需給分析は簡易的なものですが、こちらの学習ツールでは、実際に新規事業や新商品開発を想定して、本格的な需給ベースの分析手法をご紹介しています。一般のソフトやアプリではブラックボックス化している具体的な計算プロセスでさえ、全てお見せしています。価格は一つのテンプレート当たり数万円なので、マンツーマンでのビジネスコーチングサービスと比べますと、価格は約10分の1となり、自分で学習する分はるかにお得と言えます。

本ツールの対象は、主に事業企画やプロジェクトに携わる、中小企業で働く方々です。社長の右腕として働きたい方にもお勧めします。

9-2.コンサルタントの実力を測るためのツールとして『財務予測モデル』を活用する

また、比較的高額となるコンサルティングサービスをご依頼する前に、コンサルタントの仕事ぶりを確認する意味で試しにご購入いただくのも良いと思います。私は元々営業が苦手ですし、自分のサービスを言葉で売り込むより、サービスの品質向上を追求したい学者・職人気質の人間なので、その方が助かります。

もし、コンサルティング依頼を視野に試しに一つ財務予測モデル製品をご購入したい際は、事前にお問い合わせいただければ、後日コンサルティング料からその分は差し引きます。

なぜ大手の有名コンサルティングファームに仕事の依頼が集中するかと言いますと、お客様は中小のコンサルタントに一抹の不安を抱いているからだと思います。どのような仕事ができるか事前に分からなければ、たとえ費用が高額になっても、有名大手から安心を買おうとするお気持ちは(自分も同じなので)十分理解できます。

ですので、コンサルタントの実力を測る一つの指標として、この財務予測モデル製品が活用できると思います。

9-3.パッケージ販売におけるメリットとデメリット

ただし、私たち事業者の観点で見ますと、このパッケージ販売にはメリットとデメリットがあります。

大きなメリットとしては、サービスの供給量を(市場需要があれば販売量も)飛躍的に増やす事ができるという点があります。コンサルティング事業やコーチング事業の場合、分析結果からも分かるように、個人の事業者は十分な市場需要がある訳ではないですし、仮に需要があったとしても、年間でコンサルタント一人当たり3案件、コーチ一人当たりですと4~8案件のお仕事を引き受けるので精いっぱいです。サービス単価を考えますと、収入的に不安定な職業と言えます。そのような事業者の不安を、パッケージ販売によって一気に解消できる可能性はあります。

一方のデメリットとしては、パッケージによる販売はほとんどがデジタルデータとなるので、複製が容易という事です。ただ、それはもう甘受するしかないと思います。仮にノウハウをコピーされたとしても、(時間はかかりますが)また何か自分で新しい戦略ノウハウを考えれば良いだけですし、多少のリスクは承知の上で前に進むしかありません。

9-4.デジタルコンサルティングおよび能力開発コーチングサービスも検討中

後は、以上の学習支援ツールの販売だけではなく、個人や企業向けのデジタルコンサルティングおよび能力開発コーチングサービスの提供も検討中です。

一つ目のデジタルコンサルティングとは、お客様のご相談内容(例えば既存事業・新規事業・新商品開発など)をお伺いし、それに基づいて財務予測モデルを作成、そして懸念事項や改善点などを指摘・提案するサービスです。ネット上で完結するので、普通のコンサルティングサービスよりずっと安価で迅速に提供できる予定です。

その後、もしお客様がデジタルサービスの成果物にご満足いただけましたら、実際にお会いして課題解決を一緒に検討する、通常の経営戦略コンサルティングサービス(アナログサービス)にそのまま移行することもできます。すでに定量分析を行っているので、話もスムーズに進むと思います。(地域は石巻市や仙台市周辺と限定されます)

二つ目の能力開発コーチングでは、経営戦略や財務スキルの習得に加え、替えの効かない高度人材を育てることを至上目的とした、包括的人材育成サービスを提供します。お客様側のコミットメント(例えば自己修練など)も必要になるので、顧客ニーズは少ないと思うのですが、私としてはぜひやってみたい、少数精鋭のマンツーマンコーチングサービスとなります。なぜサービスを提供しようと思ったかと言いますと、スキルと精神、両方を同時に高めておかないと、猛者が跋扈する国際ビジネスで勝てるわけがないからです。

コーチング方針は以下のように定めます。

替えの効かない高度人材を育てる
心身一如・内外一致を究める
漸コンサルティングのコーチング方針


能力開発コーチングを考えたきっかけについて、もう少し詳しく書きたいと思います。

10年海外に住み、日本に帰国してからずっと気になっているのは、日本人の多くはビジネスで勝負するために、頭脳や体を鍛えたり、ビジネススキルを習得したりすることには熱心な一方で、己を高め・深める事(例えば精神論など)に対してはあまり関心を持たれていないように見える事です。

おそらく、多くの国民を戦地に追いやった過去の戦争の反省からだと思いますが、私は精神論そのものに良いも悪いもないと考えています。ナイフや車と同じように、扱う人によって有用にも有害にもなるというだけの話です。

私の考える精神論とは、己の成長のために自らを厳しく律する事はあっても、その厳しさを他人に強要する事は決してありませんし、また、他者に自己の評価を依存する事もありません。

精神・道徳・言動は概ね収斂(しゅうれん)を主と為す。発散はこれ已(や)むことを得ざるなり。天地人物皆然り
王陽明『伝習録』より


目に見える範囲での能力向上で国際ビジネスに勝てれば良いのですが、そんなに甘くはないと思います。私は海外に住んでいた時、様々な背景の人と関わりましたが、その中には、必要とあれば命を懸けて戦う覚悟すら持つ、強靭な精神力を備えた方もいました。残念ながら、現代日本人は必ずしもそうではありません。この差は大きいと感じます。

ただし、私は日本人が皆自衛隊などに入って心身を鍛えなおすべきとは全く思っていません。それを望む方はそうすれば良いと思いますが、皆に強制するのは間違っています。自由意志を尊重する人間は、自らの意思で思う存分強くなれます

誤解のないように言いますと、私は元々精神過敏で心の弱い人間です。今でも弱い人間だと思います。でも、その弱さこそが私の力の源でもあります。普段は大人しく、腰も低い人間ですが、必要があればいつでも戦えるよう常に心掛けています。気魄(気合)という点で、私は誰にも負けるつもりはありません。弱さと強さは表裏一体であり、人にとってはどちらも大事なものです。

成長の仕方は人それぞれですので、個を尊重したコーチングスタイルを取ります。

まとめますと、外面的な能力だけでなく、内面的な能力も高めた方が、ビジネスに限らずどんな場面でも有利に戦えるはずです。詳しくは次のスキル関係のコラムで書く予定ですが、個人の潜在能力を眠らせたままにしておくのは、当人だけでなく社会全体にとってももったいないので、私に何か出来る事があればと考えています。

いずれにしろ私が関わるからには、全力で勝ちに行きます。

10.既存の顧客セグメントで引き続き事業を続ける場合は常連客を増やす

最後に、もし顧客セグメントを変えずにそのまま事業を続ける場合は、常連客をいかに増やすかがカギになります。

今までは新規事業や異なる顧客セグメントへの新規参入というお話が多かったので、顧客獲得のためにクリエイティブな想像力が求められましたが、既存事業の維持・発展というお話になりますと、創造的な経営戦略を模索しつつも、既存顧客が流出しないよう、現場のオペレーションレベルで改善点がないかどうかの確認をまず優先します。なぜかと言いますと、既存事業を改善するご相談・ご依頼であれば、普通クライアントは短期でコストをかけない方法を最初に望まれるからです。

現場オペレーションを洗練させ、顧客満足度を高める施策を取ってから、戦略面で需要の喚起を行い、販売単価を上げられるようにサービス内容を見直します。そのようにしてファンを増やし、市場シェアを確保していくのが、堅実な経営戦略および戦術と思われます。

このように一定数の常連客を常に確保しておけば、社会変化で多少の需要変動が生じても、比較的安定した事業運営が可能となります。ただし、この場合の私は経営戦略の仕事に徹し、現場オペレーションの実行支援(インプリメンテーション)については、営業やマーケティングを得意としている方にお任せすると思います。

11.市場分析全体のまとめ

以上となります。市場分析に関するトピックはこれで一通り終わりました。いかかでしたでしょうか?

経営戦略コンサルティングおよびビジネス戦略コーチングの市場について、仮説構築から始まり、需給分析・考察をし、そして中小事業者の立場で今後どうすべきかを提案してみました。

あまりにも範囲が広いので、カバーしきれなかった内容もありますが、業界の戦略コンサルタントの一人として、私は納得できる内容になったと思います。おかげさまで、多くの洞察も得る事ができました。

本コラムは、ビジネス全般や経営戦略コンサルティングというお仕事にご興味のある読者を想定し、自問自答・レポート形式で書いています。よって、あまり専門性の高いと思われる内容は(一部を除き)極力含めないように気を付けました。特に、需給分析の詳細な方法およびプロセスについては、ここでは深く解説していません。

実際のコンサルティングでは、お客様からのご相談内容を元に仮説を構築し、分析フレームワーク(財務モデルなど)を作成、そしてそれを手掛かりに一緒に課題解決を目指していきます

試算結果については、それらの数値が正しいかどうか、この時点ではさして問題ではありません。なぜならば、市場規模を導き出すためのパラメータはすでに分かりましたので、後は、それらパラメータに合致した市場データが部分的にでも入手出来れば、より実態に近い推計がいつでも可能となるからです。

結果そのものよりも、まずはその結果に導く分析プロセスに意味(価値)があるとお考えの読者に向いているコンテンツといたしました。

本文中では、コンサルティングサービスのデジタル化が避けられないというお話もしました。考察をしている途中で、IoT・ビッグデータ・AI技術が今どれだけ進んでいるのかにも興味を持ってしまい、今回はその分野で最先端を行く、グーグルのスマートフォンを試しに購入してみました。面白い機能がいろいろと付いており、世の中がどんどん便利になっていくと分かる反面、人類がこれからどうなっていくのかは気になります。どんな形であれ、デジタルとアナログ、両方のバランスを取って生活したいと思います。

もしご興味がありましたら、仮定値の設定理由や計算プロセスを含め、ホームページの方に詳細を掲載する予定です。最初の方でも書きましたが、本コラムの分析内容や洞察について、読者の方が自ら妥当性を検証できるようにします。あくまで個人的直感や経験に基づく試算である以上、いろいろ異なった意見も出てくるのは自然のことです。

時間の許す限り妥協なく書いたつもりですが、第三者から見れば、どこかロジックが繋がっていなかったり、答えそのものに全く妥当性を感じられなかったりする部分はあるかもしれません。その場合はぜひ教えてください。

本文中でも少し触れましたが、漸コンサルティングでは全力でビジネスを勝ちにいきます。そしてビジネス戦略コーチングでは、替えの効かない高度人材を育てることを至上目的としています。

次回のコラムでは、経営戦略コンサルタントに必要なスキルについて論じます。今までの考察から数多くの洞察を生み出す事が出来ました。本テーマの最終話としてふさわしい内容にしたいと思います。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

ホームページでは本コラムの小話もご紹介していますので、よろしければそちらもご覧ください。

この記事を書いたプロ

味水隆廣

財務分析を経営戦略につなげる国際ビジネスのプロ

味水隆廣(漸コンサルティング)

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