障害年金の「初診日」について(その3)「相当因果関係」(2)
障害年金の不支給が倍増:報道と現場から見える実態
報道で明らかになった不支給の急増
共同通信社の報道によれば、報道で明らかになった不支給の急増2024年度における障害年金の不支給件数は約3万人に達し、前年度の2倍以上に増加したとされています。特に精神・発達障害に関しては不支給割合が前年の2倍、全傷病で1.6倍に上昇したとのことです。
同報道では「2023年10月に日本年金機構の障害年金センター長が交代して以降、審査が厳格化した」と伝えられています。さらに、内部資料によれば不支給割合が急増し、職員が判定医に「等級非該当」や「より低い等級」を提案する事例が増えたと報じられています。
現場で実際に感じる変化(私の体験談)
私の事務所でも、この変化は肌で感じていました。
- これまでの基準なら障害厚生年金2級と認定される内容の診断書が、実際には3級とされてしまった。
- 障害基礎年金においては、従来であれば2級に該当してもおかしくない診断書の内容であったにもかかわらず、認定日請求・事後重症請求のいずれについても不支給とされた。
- 精神疾患や発達障害のケースで、医師も「従来なら認められていた」と首をかしげるような不支給が増えている。
実務の現場から見ても、「以前と同じやり方では通らない」という状況がはっきりと現れています。
申請者が直面する新しいハードル
報道で伝えられている内容と同様に、私の事務所でも具体的に以下のようなケースに直面しました。
●カルテ開示の指示:ある精神疾患の申請で、初めてカルテの開示を求められ、主治医からも「こんなことは初めて」と驚かれました。
●診断書への追加照会:パーキンソン病の方にはオン・オフの状態説明、メニエール病の方には詳細な検査記録を求められるなど、以前にはなかった照会がありました。
●生活状況の再調査:「病歴・就労状況等申立書」に詳しく記載していたにもかかわらず、さらに追加でヒアリングを受けた事例が複数ありました。
これらはすべて、ここ1年ほどで急激に増えてきた対応です。
申請を進めるためにできること
こうした状況の中で、申請者が不支給を避けるためには以下が欠かせません。
【主治医との係わり方】
日頃の通院で主治医に伝えていなかった日常生活や就労の困難さを正確に伝え、診断書に反映してもらうこと。
【生活状況の記録と一貫性】
普段の生活で困っていることや支援の内容を記録し、「診断書」(主治医が記載します)や「病歴就労状況等申立書」(請求者が記載する申請書類)と矛盾しないよう整理すること。
【専門家のサポート活用】
社労士などの専門家が診断書や申立書の整合性を確認し、詳細な聞き取りにより正確な「病歴就労状況等申立書」を作成します。及び、追加資料の提出を検討し対応も支援することで、より確実な申請につながります。
まとめ
令和6年度に障害年金の不支給率が急増したのは偶然ではなく、制度運用の厳格化かもしれません。報道で指摘されているとおり、現場でも前例のない照会や不支給決定が相次ぎ、申請者の負担は確実に増しています。ただ、今回の報道を受けて日本年機構の対応も変わる可能性も考えられます。
障害年金を申請する際は、自覚症状、日常生活状況、就労状況などの記録の整備を行い、専門家によるサポートも組み合わせて、厳しい審査の中でも適切な結果を得ることが最重要と思います。 障害年金の申請で不安を抱えている方は、どうか一人で悩まず、ぜひご相談ください。
※本記事の内容は、共同通信社の報道に基づき、私自身の現場での体験を交えてまとめています。



