遺品整理を行う上で気を付けておくべきポイント
法的に遺品は相続人の相続財産です。トラブルを避ける意味でも、遺品の整理は相続人が行うのが安心です。
家を相続する場合は、引き継いだ特定の人の責任となります。家を売る場合は、相続人全員で遺品整理を行います。
遺品整理は、気持ちの整理
親などが亡くなると通夜や葬式、四十九日までは待ったなし。一息つけたと思ったら、今度は主を失った家の処遇を考えなくてはなりません。身内の誰かが引き継ぐにせよ、他人に貸すか売るにせよ、まずは片付けない限りは次に進むことができません。
長年住み続けてきたのだから、日用品や家具だけでも相当なものです。さらに遺言書や不動産関係の権利書、保険や預金などの貴重品の所在の確認、隠している借金などがないかを慎重に確認しながらの作業はとても骨が折れます。
近所に住んでいるならばまだしも、遠方から週末を使って家の整理に足を運ぶのならば期間も長期にわたります。経験した人ならば、誰しも大変な仕事だとご存じのことでしょう。
しかし、それ以上に難儀するのは遺品整理にあたる際の気持ちの整理の仕方です。片付けようと物を手に取るたびに、「これは父がよく使っていたな」などと思い出がよみがえってきます。
使い道のないものだとしても、処分してしまうのは故人との思い出までも捨て去ってしまうように罪悪感も覚えるものです。遺品の片づけを進めるほどに、故人との完全な別れとなるようで胸がしめつけられることもあるでしょう。
遺品整理は、遺された品を通じて故人との思い出に向き合うことでもあります。整理する人と故人の関係が深いほど、心理的な負担も大きくなりがちです。急いで片付けてしまうと後になって悔やむこともあります。少しずつ、気持ちにけじめをつけながら進めてください。
遺品整理は、相続人がするのが良い
遺品を整理するとして、誰がするのが妥当なのでしょうか。常識的に考えれば、親が亡くなったならば子どもたちでやるのが一般的でしょう。
しかし、今の時代ならば子どもたちはみんな親元を遠く離れて暮らしていることも珍しくはありません。仕事の休みのたびに親の家に行って整理をするとしたら、どれほどの時間がかかることでしょう。
故人のコレクションやため込んだ生活用品があふれていれば、何から手を付けてよいかもわからないでしょう。兄弟がいて、一緒に作業をする人がいなければ、すべてを1人でやらなければならないかもしれません。
持ち家ならばいくらでも時間をかけられますが、もし賃貸だったら遺品整理をしない限り無駄に家賃を払い続けることになります。そうなると、近くに住んでいる親戚や知人にお願いできるものなら頼んでしまいたくなるのが人情でしょう。
ただし、注意したいのは法律上の遺品の扱いです。法的に遺品は、相続人の相続財産です。古い家財道具や、使い道のなさそうなものでも他人が勝手に処分することはできないのです。
遺品整理は、子どもや配偶者などの身内がしなくてはならない決まりはないのですが、誰でもいいわけではありません。あくまで、遺品を相続した人が行うこととされています。つまり、相続する気がさらさらないのに、遺品だけを整理する権利は認められないのです。
相続をすれば所有権がその人に移ります。すると、所有者が自分のものを片付けることになるのです。つまり、遺品整理というよりも、相続人自身の所有物の整理です。余計なトラブルを避ける意味でも、遺品整理は相続人が行うのが安心です。
相続によって異なる遺品整理を行う人
相続人が複数存在すれば、遺品整理は手分けして全員で行うのが理想的です。しかし、相続財産の分割が終わってからでは事情が変わってきます。これは、故人の家を相続でどのように扱うかで対応が分かれます。
遺言や遺産分割協議で、被相続人(亡くなった人)の家を特定の相続人が引き継いだ場合、その人が遺産整理の責任を負わなくてはなりません。親の家を長男が引き継いで、そのまま住む場合などです。この場合はシンプルでわかりやすく迷うこともないでしょう。
遺産分割協議の際に、遺品の所有権を明確にするために「家屋内の家財・家具等の動産の一切を取得する」という文言を入れておくとさらに確実です。
一方、誰も引き継がず共有のまま家を売却する場合です。相続人全員で共有しているということですので、遺品整理もみんなで責任を負います。
実際の作業を、全員で行うことは現実的に難しいこともでてきます。その場合は、遺品整理業者に委託するという選択肢も出てきます。相続人の中から、窓口となる担当者を決めてください。手配や作業立ち合いは担当者が受け持ち、費用の負担は全員で分担するのが妥当でしょう。
行政が行うこともある
相続の対象となるのは土地や建物、預貯金といったプラスのものだけではありません。借金や保証人になっていた場合の債務保証もマイナスの相続となるものです。
マイナスの財産がプラスよりも多ければ、相続したくないという相続人もいます。相続放棄という手続きを経ることで、被相続人の財産のすべてを放棄し、一切を相続しなくてもよくなります。
この場合には、所有権がなくなった財産を管理するため、家庭裁判所で相続管理人が選出されます。相続管理人は財産の調査、管理から換金・処分までを担ってくれるのです。