お彼岸の帰省で実家の名義・相続登記・遺言書をまとめて確認する方法

菅野勝

菅野勝

テーマ:遺言書作成、相続手続きに関する話題

お彼岸に実家へ帰り、仏壇に手を合わせたあと、お茶を飲みながら「この家、これからどうなるんだろう…」と頭をよぎった。そんなご経験はありませんか?

けれども、その場で口に出せた方は少ないと思います。親はまだ元気ですし、縁起でもない話を持ち出すのもためらわれる。結局、何も言えないまま帰る。実家の終活相談をお受けしていると、そうして何年も過ぎ、状況が複雑になってからご相談にみえる例を何度も見てきました。



私の事務所では、お盆や年末年始など家族が顔をそろえた時期のあとに、実家の名義や相続についてのご相談が増えます。お彼岸も、離れて暮らす家族が集まる数少ない機会です。しかもご先祖の話をする日ですから、そこから家族のこれからに話題を移しても不自然になりません。

お彼岸は、終活の話を切り出しやすい日です

実は、この手の話題は切り出し方を少し変えるだけで、自然に出しやすくなります。

多くの方は、終活の話というと遺言書から入ろうとするのですが、遺言書は自分が亡くなったあとの話ですから、急に切り出された親御さんは身構えてしまいます。

私がおすすめしているのは、「この家の名義って、今どうなってるんだっけ」という一言から入る方法です。名義は今の事実を確認するだけの話で、誰かの死を前提にしていないので、親御さんも答えやすいのです。そして名義の話は、遺言書や預金口座、将来の住まいの話へ自然につながっていきます。

説明

私は、書類や制度の都合ではなく、その方の暮らしと家族の実情から手続きを考えることを「人中心視点」と呼んでいます。人中心視点とは、制度に人を合わせるのではなく、人の暮らしのほうに制度を合わせて考える姿勢のことで、話の切り出し方もその一部だと考えています。

実家の名義が祖父のまま、というご相談

これは、決して珍しい話ではありません。ご本人が「うちは大丈夫」とおっしゃっていても、登記事項証明書を取ってみると祖父母の代の名義のままだった。そういうケースを、私はこれまでに何度も見てきました。

見落とされやすいのが、固定資産税の納税通知書です。毎年届いてきちんと払っているから名義も自分になっていると思い込んでいる方がいますが、固定資産税を払うことと名義変更が済むことは、まったく別の話です。

相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を、相続した人の名義に変更する手続きのことで、2024年4月1日からこの手続きが義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請が必要で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料が科される可能性があります。



対象は、これから起こる相続だけではありません。2024年4月1日より前に発生した相続も含まれ、この場合は2027年3月31日までに手続きを進める必要があります。何十年も名義を動かしていない実家において、確認を急ぎたい理由がここにあります。

私は行政書士になる前、注文住宅の営業として31年間、170棟の住まいづくりと資産形成のお手伝いをしてきました。家は建てて終わりではなく、次の世代にどう渡すかまでが一つの話だと、そのころから感じています。

相続登記と名義の確認については、以前のコラムでも詳しくお伝えしています。 https://mbp-japan.com/miyagi/masarukanno/column/5232433/

「親が元気だから」の先送りが招くこと

「親はまだ元気だから」。先送りの理由として、私がいちばん多くうかがう一言がこれです。

ところが先送りが本当に難しい問題になるのは、判断能力が落ちてからです。遺言書を書く、家族信託や任意後見の契約を結ぶ、口座を整理する。いずれも、ご本人の意思を確認できることが前提になっています。

認知症などで意思の確認が難しいとされた段階では、選べる手段はかなり限られます。「元気なうちに」は気休めではなく、制度上そうせざるを得ない現実なのです。



私は以前から、相続の備えを予防注射にたとえてお話ししています。病気にならないように予防注射を打つのと同じで、残された家族がもめないように、財産を整理し、誰にどう分けるのかを記しておく。そして打てるのは、元気なうちだけです。

実は私自身、行政書士になって間もない頃に父を亡くしました。そのとき、事前に遺言書を書いてもらっていたおかげで、兄弟が遺産をめぐって争うことにはなりませんでした。手続きを進めながら、書いてもらっておいてよかったと何度も思った、という経験があります。

もうひとつ、時間が経つほど厄介になるのが相続人の数です。当初は兄弟3人だった相続人が、その後の相続で甥や姪を含めて10人以上に増え、疎遠だった親族への連絡に時間と労力がかかったご相談もありました。人数が増えるほど、話し合いはまとまりにくくなります。

帰省した30分でできる、5つの確認

とはいえ、全てをその日のうちに解決する必要はありません。まずはこれら5つの確認ができれば、その日の目的は果たせています。

一つめは、実家の土地と建物が誰の名義になっているかです。その場で分からなければ、固定資産税の納税通知書を見せてもらうところからで構いません。正確に知るには、法務局で登記事項証明書を取得すれば誰でも確認できます。

二つめは、遺言書があるかどうかです。「書いてほしい」ではなく、「もし書いてあるなら、どこにあるか教えておいてね」と聞くだけで十分です。ある、ない、これから考える。このどれかが分かれば前に進みます。

三つめは、通帳と保険証券の置き場所です。金額を聞き出す必要はありません。財産の一覧をつくろうとすると親御さんは構えますが、置き場所の話なら、引っ越しの相談と変わらない温度で話せます。

なお、亡くなったあとで借入が見つかった場合、相続放棄という選択肢もあります。原則として相続の開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、財産の全体像が分からないままでは、この期間はすぐに過ぎます。



四つめは、エンディングノートです。法的な効力はありませんが、書く場所があるだけで気持ちを言葉にしやすくなる方は多いと感じます。市販のものでも、大学ノートでも構いません。

五つめは、判断能力が落ちたときの希望です。「もし自分で決められなくなったら、誰に任せたい」という一問で構いません。任意後見契約とは、判断能力があるうちに、将来支援してもらう人と支援の内容をあらかじめ決めておく契約のことです。この答えがあるかないかで、検討の出発点が変わってきます。

早めに動くほど、選べる手段が多くなる

早く動く価値は、手続きが楽になることだけではないと思っています。

元気なうちに動く最大の利点は、本人の意思を確認できることです。誰に何を残したいのか、実家をこれからどうしたいのか。それが分かっていれば、残された家族が「本当はどうしたかったのか」と悩まずに済みます。

空き家の問題も同じです。名義が定まっていない家は、売ることも貸すことも解体することも進められません。私は二級建築士と宅地建物取引士の資格も持っていますので、建物の状態と不動産としての扱いの両面からご相談をお受けしています。

開業以来、遺言書作成のご相談を39件、相続業務を76件、任意後見契約を10件お受けしてきました(2026年8月現在)。振り返ってみると、早い段階で状況を整理された方ほど、いざというときに落ち着いて対応されている印象があります。

ご相談は、できるだけご自宅にうかがうようにしています。ハウスメーカー時代、住宅展示場でお話しするだけではお客さまの本当の希望が見えないことが少なくありませんでした。実家の話も同じで、その家を見て暮らしぶりを知ってからでないと、ちょうどよい提案ができないからです。



なお、不動産の登記申請そのものは司法書士、相続人の間ですでに争いがある場合は弁護士の業務です。行政書士が担うのは、戸籍の収集、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、法定相続情報一覧図の代理申請、遺言書作成のサポートといった準備の段階です。内容によっては他の専門家をご案内しますので、「どこに頼めばいいか分からない」という状態のままお声がけいただいて構いません。

お彼岸は、年に二度しかない、家族が自然に集まる機会です。今年は30分で、実家の名義と遺言書の有無と通帳の置き場所を確認しておく。それだけで、来年以降に見える景色は変わると思います。

まとめ

終活は縁起でもない話ではなく、親御さんの気持ちを直接聞いておける機会だと私は考えています。お彼岸の30分が、その入り口になれば何よりです。

・実家の名義が誰になっているか分からない方
・親が元気なうちに遺言書や認知症への備えを考えておきたい方
・兄弟で話し合うきっかけがつかめず、何から始めればよいか迷っている方

宮城県名取市のまさる行政書士事務所では、遺言・相続・家族信託・成年後見のご相談を承っています。平日のほか、土日祝も事前予約で対応しています。まずはお気軽にご相談ください。

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菅野勝
専門家

菅野勝(行政書士)

まさる行政書士事務所

注文住宅の営業担当として31年間170棟の住まいづくりに携わって来ました。その豊富な経験、顧客対応力を生かし遺言相続、成年後見、外国人サポートを中心に相談者の暮らしに寄り添ったサポートを行います。

菅野勝プロは河北新報社が厳正なる審査をした登録専門家です

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