吉野家が好調のワケ
参考リンク:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140117-00000107-mai-bus_all
創業550年の老舗和菓子メーカーの駿河屋が民事再生法を申請したというニュースです。
駿河屋は室町時代中期の1461年に京都・伏見で「鶴屋」の屋号で創業。1658年に練り羊羹(ようかん)の製法を確立。1685年に徳川家より駿河屋の屋号を与えられたとぃう老舗ですね。1961年には東証と大証にも上場したという企業です。
私の研究領域には老舗の経営学も入ってますので、非常に興味深いニュースです。
老舗の経営は基本的には信頼。いわゆるのれんというものです。のれんと似た言葉としてブランドがありますが、のれんとブランドは似て非なるモノです。
ブランドとはアメリカマーケティング協会の定義によると「ある売り手あるいは売り手の集団の製品及びサービスを識別し、競合相手の製品及びサービスと差別化することを意図したネーム、ロゴ、スローガン、キャラクター、ジングル、パッケージあるいはその組み合わせ」をいいます。だからブランドは企業側が仕掛けていけるモノなんですよね。書店に行くとブランド戦略なんて本が山ほどあります。
一方、のれんというのは信頼の積み重ね。戦略的に仕掛けられるモノではありません。地道に実直に商いを行ってきた歴史がすべてです。だから書店に行ってものれん戦略なんて本はないわけです。
駿河屋は創業550年の老舗。550年も商売が続けてこれたのは、顧客の信頼にこたえてきたから。その駿河屋がなぜ倒産したのか?まぁ詳細はわかりませんが、記事から読み取ります。
多くの企業が倒産する理由に信頼を失ったということがあります。雪印しかり、船場吉兆しかり。では、駿河屋は何をして信頼を失ったのかといえば、記事によると「2003年に当時の社長らが架空の第三者割当増資を行ったとして、04年に逮捕、起訴される事態」があったとのこと。これが信頼を失うきっかけになったんでしょうね。
老舗の特徴には優れた技術というのがあります。それも機械化できないような技術。だからこそ、商品の価値があるんですよね。でも技術革新により機械化が進む。当然、機械化するということは大きな資本が必要になったりします。駿河屋も昔は手で作っていた和菓子を機械化して製造していたんでしょうね。そうでないと株式公開はできませんから。
ところが、株式公開する会社と老舗では基本的な経営のスタンスが違うんですよね。老舗の経営は単年度での利益を求めるということをしません。むしろ短期的には儲からなくても、長い目で見て信頼を失わない商いをします。でも株式公開をする会社は短期の利益を求められるようになる。老舗の経営のように長期的視点で経営ができなくなってしまうんですよね。特に景気が悪い時の対応というのは明らかに差が出てしまいます。老舗はいい時でも無駄遣いせず、きちんと利益を留保します。その利益は景気が悪い時を乗り切るため。だから、景気が悪いからと行って品質を落とさなければならないようなコストダウンを計る必要がないわけです。当然、単年度での業績は悪化します。でも信頼を失わないために、今まで通りの商品作りを行う。ところが株式公開をするような会社は、単年度の利益を求められるので、品質を落としてもコストダウンを計らなければならなくなる。それは長期的に見れば信頼を失うことになるんですよね。
駿河屋の一番の間違いは株式公開だったのではないかと思います。だから架空の第三者割当増資を行うようなことをしなければならなくなったのではないかと思います。
株式公開をするような企業は売上げの拡大を目指します。しかも年度ごとの。いわゆる横の拡大。老舗も売上げを拡大します。でもその拡大というのは、時代を経てずっと愛用してもらうという縦の拡大。多くの老舗はその地域の閉鎖的なマーケットというのが多いですから。したがって老舗の経営と株式公開をする会社の経営とは基本的なスタンスが違うんですよね。