不動産オーナーの法人成り
1.減価償却
減価償却を簡単に言うと、不動産などの資産を購入したときに一度に経費計上するのではなく、耐用年数にわたって少しずつ経費に計上していくことです。
ここでいう耐用年数とは、物理的な寿命ではなく何年に分けて経費計上するかという税法上の考え方で、資産の種類・構造・用途別に決められています。
例えば新車(普通車)の耐用年数は6年となっていますが、これは実際には10年以上使用できたとしても6年間で経費にしなさいということです。もしこの耐用年数をみなさんが勝手に決めてよいことになると、自由に節税(利益操作)ができてみなさんの間に不公平が生じることになるので一律に決められています。
2.損益通算
所得税は10種類の所得区分に分かれているため、ある所得は黒字なのに他の所得は赤字、ということが起こります。この場合に、不動産所得など一定の所得について生じた赤字は、他の黒字の所得と相殺することが可能です。
また、この損益通算をしても控除しきれない損失の金額については、原則としてなかったものとみなされますが、青色申告をしている場合は翌年以降3年間にわたって繰越控除を受けることができます。
(注)不動産所得の赤字のうちに、土地等を取得するために借り入れた借入金の利息により発生した金額があるときは、その部分を損益通算の対象とすることはできませんので注意してください。
3.どうして節税になるの?
銀行からの借入金などでマンションを購入・建築した場合、支払利息や減価償却費が経費として計上されるため、不動産所得が赤字になる可能性が高くなります。そこで、この不動産所得で生じた赤字を、給与所得や事業所得の黒字と相殺することによって節税しようというものです。
例1:不動産収入 100万円
不動産経費 260万円(減価償却費160万円、支払利息40万円、その他60万円)
給与所得 500万円
不動産所得=不動産収入-不動産経費=100万円-260万円=△160万円
≪損益通算≫
500万円-160万円=340万円(給与所得)
例2:上記例1で、給与所得が100万円の場合
≪損益通算≫
100万円-160万円=△60万円
この損益通算をしても控除しきれない損失の金額(△60万円)については、原則としてなかったものとみなされますが、青色申告をしている場合には翌年以降3年間にわたって繰越控除を受けることができます。
4.注意点
以上のように、サラリーマンや自営業者の方が銀行からの借入金などでマンションを購入・建築した場合には、損益通算や損失の繰越控除の規定によって節税になる可能性があるのは事実です。
しかし、次のようなことを含め総合的に考えないと結果的に損をすることもあるため注意が必要です。
・給与所得や事業所得など、損益通算できる所得があるか
・将来の大規模修繕に係る費用をどうするか
・借入金の金利リスク
・築年数が経過した場合の、空室リスクや賃料ダウンなどのリスクがないか
・支払利息や減価償却費は徐々に減少し、いずれ不動産所得が黒字になること
・不動産所得が黒字になった場合の、住民税や事業税、国民健康保険料の増加
・将来中古マンションになった場合に、資産価値がどの程度残るか
・相続税への影響はないか
一度マンションを購入・建築してしまうと、もう後戻りはできなくなってしまいます。
目先の節税だけを考えるのではなく、将来まで見通した提案をしましょう。