読書日記「戦国の陣形」
講談社文庫。ルシア・ベルリン。岸本佐知子訳。
ルシアベルリンの短編集の2冊目である。
掃除婦のための手引き書を読んで「こんな作家はいなかった」と衝撃を受けた。
このような作家を日本に翻訳で紹介してくれるのは、さすが岸本佐知子氏であるとしかいうほかない。
一つ一つは非常に短いのだが、岸本氏のいうように、「一篇読むたびに本を置いて小さくうなり、深呼吸せずにいられない。このように書く作家はほかにはいないと、何度でも思う。」と私も思う。
漁師との交流を描いた表題作のほか、酷い目に遭う少女たちを看護師の立場から描いた作品も多いし、自分自身が酷い目に遭う作品も多い。
短編で、ここまで心がえぐられる作品を書くことができる小説家ほとんどいないだろう。
この作者の作品も、レイモンド・チャンドラーや村上春樹同様、読まない人生は読んだ人生よりも無味乾燥なものと思えるものである。