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コラム

訴訟がなじまない事件

2021年1月15日

コラムカテゴリ:法律関連

 私も調停は待ち時間が好きではないので、あまり多用したいとは思わなかったのだが、事件によっては、訴訟をする前に調停を出してみた方がいい事件もある。
 東京や大阪と異なり、京都はコミュニティが小さいこともあるから、訴訟でいわばいきなり横っ面を張っておいて、「話合いをしませんか」となっても、中々うまく行かないことも多い。
 京都の事件で東京や大阪の代理人から攻撃的な訴訟提起をされることがあるのだが、裁判が進行すると、訴訟の中で「話合いで考えている」という意向を聞くことがある。しかし、この時点で依頼者が激怒していて、中々話合いがうまく進まないこともあるし、訴訟をしたことで、解決の糸口が訴訟外交渉や調停であれば探すことができたかもしれないにも関わらず、訴訟でいきなり横っ面を張られてケンカを売られたような形になると、根本的に解決の糸口がなくなってしまうこともある。全面戦争の状態である。

 私もなるべく気をつけているのだが、表現を激越にして、相手方を叩くような書面はあまりよろしくない。
 淡々と事実を積み上げて、法的評価を書くべきである。
 代理人攻撃もよろしくない。相手の代理人が怒ってしまい、戦闘モードに入ることがあるし、懲戒の問題ともなりかねない。

 過去何件かそういう事件があり、訴訟では勝訴したのだが、「これは調停か訴訟外交渉なら話合いで解決できた可能性もあるし、相手方にとってももう少し有利で、かつ、こちらの顔も立って、判決よりも妥当な解決もできたかもなあ」と思ったことがある。
 もちろん全ての事件がそうではなく、訴訟せざるを得ない事件もあるが、最近は、私が若い頃、ベテランの弁護士が割合調停を申し立てていた(私のボスも時々調停をしていた)のも分からないではないという思いでいる。
 若い頃は、「調停なんてまだるっこしいことせず、訴訟で白黒つければいいのではないか」と思っていたのだが、紛争というものはそうでもないものもあるということであろう。
 そういう事件では、かなりあっさりした調停申立書で、どうしてもっと書かないのかと思っていたが、書面にするときつくなるが、調停委員を通じて口頭でいってもらうと柔らかくなるということもあると後に知ったのである。
 まだまだ私自身修行中の身であり、自分がベテランだとは思っていないのたが(中堅くらい)、調停になじむ事件があれば(もちろん依頼者と十分協議して)あっさりした調停申立書を作ってみたいと考えている今日この頃である。

この記事を書いたプロ

中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(中隆志法律事務所)

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