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福祉施設への入所について考える

三上隆

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テーマ:認知症と福祉施設の入所

 福祉施設への入所の検討につきましては、”どの様な施設に”ということと同時に、”いつから”ということも考えられる部分だと思われます。

 私がお付き合いをさせていただいている方の中には、法定後見の引き受け手として、初めてお会いしたのが病院や福祉施設という様な方もおられますが、多くの方は将来に対するご相談や、任意後見契約・見守り契約等を通じてお付き合いが始まった、ご自宅にお住いの方です。

 任意後見契約は「将来、後見人としてのサポートが必要になった時はお願いしますね」ということをお互いの意思表示として事前に契約するものですので、その当初は周りからのサポートを特に必要とされてない方も多いのですが、定期的にお会いする等で年月を共に過ごす中で、将来の福祉施設への入所について話題になることがあります。
 元々、興味や関心がある方であれば施設の種類や金額面など、具体的なお話をすることも出来ますが、皆様が具体的な考えをお持ちという訳ではありませんし、どちらかと言えば「今はまだ分からない」、「将来体調面に変化があれば」という様なお考えの方が多い様にも思われます。

福祉施設への入所を検討する場面になったら

 具体的に福祉施設への入所を検討する時は、ご本人の体調や認知機能の面に変化がみられた場合が多いかと思われますが、まず大きな方向性として、在宅だけを希望されているのか、福祉施設の入所も許容されているのかというところは、重要な部分となります。
 それらのお話は、相談出来る親族がおられない方の場合、ケアマネージャーや地域包括支援センターなど、福祉関者の方々と一緒に行うことも多いのですが、認知症や病気等の影響で本人の意思が明確ではなかったり、その日によって仰ることが異なったりする場合には、ご本人の真意を汲み取ることが難しいこともあります。

 このような状況では、親族がおられる方は親族が、親族が周りにおられない方は後見人が、その意思決定を託される様な雰囲気になることがありますが、その多くは施設入所を前提としたものが多い様に思われます。
 その様な場面で、「本人が決められないなら、周りが適切と思われる方向性を決めてあげるべきだ」と仰る方に遭遇することもありますが、それはどうしても本人の意思決定が困難な場合の最終の代行決定であり、安易な決定は適切ではありません。
 これらは、厚生労働省が定める「意思決定支援ガイドライン」にも明記されております。
厚生労働省・意思決定支援

 

「どこでどの様に過ごしたいのか」を決めるのは、周りではない

 自分がどこでどの様に過ごしたいのかということは、自己決定権の一つとして、当たり前に尊重されなければなりませんし、それは認知症などが原因で意思表示をすることが難しい方であっても同様です。
 過去にご本人から明確な意思表示があって、かつ、それが今も変わりないことが分かれば別ですが、そうでなければ周りの方が安易に決められることではありませんので、あくまでご本人の真意を汲み取る努力が求められます。

 私の場合ですと、ご自身の将来に関するご相談がきっかけでお付き合いが始まった方が多い為、その後に十分なコミュニケーションをとる時間があることが通常です。
 そして、任意後見契約を結ばせて頂いている方には、お話を伺わせて頂くだけではなく、「ライフプラン・ノート」の記入を定期的にお願いすることで、ご本人に考える時間を作って頂き、現在のご自身のお考えを整理して頂く様にしております。

 もし、ご本人が在宅を強く希望されるなら、「どうすればそれが叶うのか」ということを考えるのが周りの方に求められる役割となり、それは既に施設入所をされている方であっても同様です。
 もちろん、現実的にはその時のご本人のお身体や認知状況、費用面や介護者の人員的問題等、希望を叶えることが困難な状況であることも多々ありますし、それらが複合的であることも多く、決して簡単な問題ではありませんが、その過程に必ずご本人との意思疎通が必要であることは間違いありません。
 

福祉施設へ入るべきか、どうか

 私がお付き合いしている方の中にも、かつて福祉施設への入所を検討していた方がおられますが、その方は「私は一人暮らしだから、やっぱり施設に入らないといけない?」という消極的質問から、福祉施設への入所について一緒に考える様になりました。
 その方は、認知症や加齢による筋力の低下の影響が少しずつみられる様になり、これまで出来たことが少しずつ難しくなっていることについて、ご自身でも不安を感じておられるご様子がありました。

「入らないといけない、ということはないですよ」とお伝えして、色々とお話を伺っておりますと、絶対的に施設が嫌という訳ではないものの、よくわからないというお気持ちがあり、施設入所には次の点も気になっておられるとのことでした。 

  • 先にいる方に意地悪されないか
  • 食事の用意やお風呂はどうなるのか
  • 自分のお金で入れるところなのか
  • 自宅はどうなるのか

 ご本人の疑問点について、周りの方にもご意見を伺いながら何度かお話をしておりますと、先の様な不安を感じつつも、一人でいるよりも一緒に何かをしたりお話ししたり出来る方が安心、というお気持ちがあることも教えて下さいました。
 そして、実際に何度か見学にご一緒することとなり、その中でご本人に合った福祉施設がみえてきた様で、少しずつお気持ちに変化が出てきた様に思えます。

 

コミュニケーションの大切さ

 福祉施設には様々な形態のものがありますが、既に満床で入所待ちとなっているところもあり、希望をしたからといってすぐに入れるとは限りません。
 また、ご本人の体調等に変化があれば選択肢が限られてしまう場合もありますので、入所を検討するタイミングは本当に難しいと感じさせられます。

 色々とお話しをして何度か見学をご一緒した先の方も、長い待機期間を経てから入所をされ、今では施設内の方々と楽しそうに過ごしておられますので、今となりますと、すぐに入れなかったことで色々とお話しをする時間が出来て、それがご本人が当初抱いていた不安を和らげることに少しはつながった様に思えます。
 
 施設入所とは?自宅との違いは?自宅で過ごしたい場合は?という、今はお元気な方であってもいずれ考えなければならない様な事柄には、ご本人毎に想いや考え方、お身体の状態、ご家族や財産状況などが全て異なりますので、決まった正解の様なものはありません。

 それだからこそ、ご本人が一定の理解や納得をして、結論や方向性の様なものを出して頂くまでには、どの方であってもそれなりのお時間と、お話を伺わせて頂くだけではなく時には共に体験するという、直接のコミュニケーションが大切だということを感じさせられます。

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三上隆(行政書士)

相続まちの相談室/行政書士 三上隆事務所

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