福祉施設への入所について考える
「毎年、海津大崎の桜を見に行ってたけど、来年は無理かなあ。」
大津市におられるMさんは、この様に仰いました。
昨年の秋ごろ、庭にある花についてお話を伺っていたところ、桜の話となり、これまでお知り合いの方に車で連れて行ってもらっていたものの、その方が免許を返納されたそうです。
ご自身は初めから免許をお持ちでないことに加え、遠くまで歩かれることに対し、少し自信がなくなってきたこともあり、先のお言葉となった様です。
Mさんは初期の認知症なのですが、お一人で普通に暮らしておられます。
日常生活など、これまでなさってきたことは特に問題ないのですが、日時のお約束や郵便物の確認など、これまでの記憶に頼らずに新らしいことをなさるのが、少しずつ難しくなってこられた様に思われます。
ご縁があって、私とは1年半ほどのお付き合いとなり、郵便物の内容についてご説明したり、お買い物や病院等にご一緒したりしております。
定期的に病院で検査を受けておられ、最近の診察では、僅かな進行はみられるものの、幸いにして大きな変化ではない、という診断がありました。
"可愛い”桜
「それなら、来年は一緒に行きましょう。」というお話になりまして、先月の末、私の運転する車で海津大崎まで行って参りました。
恥ずかしながら、私は海津大崎の桜をその時まで知りませんでしたが、琵琶湖畔の道路沿いに続く桜は、初めてみる美しさで、満開の週末は大渋滞になるという話に、納得致しました。
Mさんは、「また来られた、綺麗やなあ。」と言いながら、手の届く高さの花びらを触りながら「可愛いわ。」と仰いました。
私はこれまで、桜を“可愛い”と思ったことがありませんでしたので、お花の好きな方、女性的な感覚に思えて、自分にはないもので素敵だなと思いました。
「来年はお弁当を持って行きましょう。」と言いますと、嬉しそうに笑っておられました。
私も初めての経験をさせていただき、お互いに笑顔となりまして、満開が近い海津大崎の桜を後に致しました。