「死後事務委任」について①~制度の概要~
「死後事務委任契約」とは、依頼者の方がご自身の亡くなった後の様々な手続き(死後事務)をあらかじめ依頼するという契約です。
そして、その多くは身近に子供などの頼れる親族がおられない方、おられても様々な事情で疎遠になっている方などからのご依頼となります。
私は、所属するNPO法人京都府成年後見支援センターを通じて、死後事務委任契約をお引受けしておりますが、以前のコラムで死後事務委任契約をご紹介した時よりも、そのお問い合わせは少しずつ増えている様に感じますので、その内容について改めてお伝えしようと思います。
具体的に依頼できること
死後事務委任契約で依頼されている内容は、主に下記の通りとなります。
- 市役所等への届出、希望される方へのご連絡
- 病院や施設等の未払い費用の清算、退去手続き
- 年金や保険、公共料金などの解約手続き
- 賃貸住宅等の明渡し、家財道具等の処分
- 火葬のお立合い、ご希望される葬儀方式の執り行い
- ご指定先への納骨、永代供養 など、
その他、残されたペットのその後お世話、スマートフォンやタブレット内のデジタルデータの取り扱い、SNS等のアカウントの削除や停止などについて、考えられることが増えてきております。
費用はどの様に支払うのか
必要となる費用は、その大部分が葬儀や納骨などの実費となりますが、“何を任せたいのか”、“どの程度の規模が必要か”ということは、人によって異なります。
そして、その金額は数十万円~百万円以上となることも珍しくありませんが、お亡くなりになった後にご本人からいただくことは出来ませんので、「預託金」という形で事前にお預かりすることが一般的です。
ご依頼いただいてからその時が来るまで、年単位の時間になることも少なくないのですが、いざという時には、すぐに対応することが必要となりますし、お預かりした金銭は、将来のその時まで適切に管理することが求められます。
この為、私が死後事務委任契約をお引受けする際も、所属するNPO法人との間での契約、預託金を管理する、という体制をとっております。
また、預託金は依頼された事務の為だけに使うものですが、将来の病院や施設などへの支払い、物価の上昇や費用の改定など、契約の段階では金額が確定しない様な事柄もありますので、予備費となるものをお預かりすることになります。
将来、お任せいただいた全ての事務が完了し、預託金に余剰が生じた場合は、依頼者の相続人や遺言で指定された方へお渡しすることになります。
死後事務をお引受けする側に求められるもの
死後事務委任契約は、ご自身が亡くなった後のことを託すものですので、それまでの間のことについては、何かをお任せいただいているという訳ではありません。
ですが、死後事務委任契約をされた方に、身近に頼れる親族がおられないという場合、その後の日常生活に関するところについても、継続した関わりをもつことで、ご本人をサポートすることが必要とされるのではないでしょうか。
具体的には、「任意後見契約」や「見守り契約」などを併せることで、お会いする機会を増やし、直接お話しをすることで、制度や契約だけでは分からない、ご本人の性格やお考え、大切にしたいものなど、様々なことを教えていただくことが出来ます。
私も、死後事務委任契約や任意後見契約をお引受けしている方とは、ご本人はもちろん、関係する行政や福祉関係者の方々、ご近所のお友達などとのコミュニケーションを大切にして、一緒に支える一人として関わらせていただいております。
特定の「誰か」だけではなく、周りの方々が協力してサポートすることは、孤立した状態やご本人が孤独を感じないことにもつながると思いますし、例えそれが世間話をした様なお時間であったとしても、大切な積み重ねになっているのではないか、と考えております。