数字と縁起
本日で、2021年のアメフトシーズンが終了した。
そう、NFLの頂上決定戦、スーパーボウルが終わったのである。
今年の対戦は
22年ぶり2度目の優勝を目指すロサンゼルス・ラムズと
初優勝を目指すシンシナティ・ベンガルズのカードだった。
結果は、試合終了間際にラムズがタッチダウンで逆転し
23−20で勝利した。
ラムズが前回優勝した時のクォーター・バック(QB)は
カート・ワーナーという選手で、スーパーでバイトをしていたこともある
という苦労人で、そこからスーパー・ボウル制覇まで登り詰め
シンデレラ・ストーリーと言われた。
今回のラムズのQBも、マシュー・スタッフォードという
今シーズンにデトロイト・ライオンズからトレードでやってきた選手で
これまで13年間で優勝経験はなく、スーパー・ボウルも初出場だった。
今日の試合は、両チームとも、ディフェンスが踏ん張る好ゲームだった。
それを最後、最終のラムズが逆転したドライブで
クーパー・カップという、今シーズン、ワイド・レシーバー(WR)で
キャッチ数、獲得ヤード数、タッチダウン数の3冠を達成したエースWRが
QBが捕って欲しいキャッチを全て捕り、タッチダウンパスもキャッチして逆転した。
それまでは、ベンガルズがモメンタム(試合の流れ)を掴んでいて
優勢に試合を進めていた。
その試合の流れを変えたのは
大学の先輩でもある、龍谷大学アメフト部ヘッドコーチの村田斉潔さんも言っていたように
審判の反則のジャッジだった、と僕も試合を観ながら思った。
今日の試合は、終盤まで反則の少ない試合だった。
アメフトというのは、反則の多いスポーツである。
それが、アメフトいうスポーツを、分かりにくくしているともいえる。
通常の試合で多いのは
「ホールディング」という相手を掴む反則や
「インターフェア」というパス攻撃の際に相手と接触する反則である。
今日の試合では、これが全く取られていなかった。
これは、今日の試合で選手が反則していなかったのではなく
審判が反則を取っていなかったのである。
アメフトをご存じない方には分かりにくいかもしれないが
アメフトでは、審判が取らないけれども反則をしている、ということがよくある。
というか、NFLでも、毎プレーのように、何人もの選手が反則している。
分かりやすくいうと、多少の反則は折り込み済み、ということである。
その「多少」という部分がミソで、審判も人であって機械でないので
ブレは付きものではあるものの、また、試合ごとに異なることはあるものの
当該試合では、それなりに一貫しているのが通常である。
これはつまり、プレーしている選手やコーチからすると
「今日の審判は、ここまではOKで、ここからはOUTだな」
という予測可能性が担保される、ということとである。
野球で例えれば、「今日の主審は、この辺りがストライクゾーンだな」
という感覚と共通しているといえようか。
そのストライクゾーンが、試合を通じて一貫していないと
「何でさっきはストライクやったのに、今度はボールやねん」
となり、選手・コーチも戸惑うし、ジャッジに対する納得感も得られないであろう。
今日の試合でも、終盤まで、パスプレーで
ディフェンスのホールディングやインターフェアを全く取っていなかったのに
最後のラムズのシリーズで、それまでには取っていなかったようなプレーで
ベンガルズの反則を取ったのである。
このジャッジで、ラムズの攻撃権が続いていくことになり
結果、タッチダウンに繋がったのである。
試合を決める大事な場面だったため、厳しくジャッジした
ということなのだと思うが、一貫しないジャッジで試合が決せられたのは
遺恨を残すものになってしまったように思う。
NFLの審判は皆、基本的には、よくプレーを見ていて
きちんとジャッジするのであるが、大事な試合になればなるほど
そのジャッジが試合を分けることがよくあり
毎年のように、疑問が残るジャッジというのが出てくる。
村田さんも言っていたが
これだけ情報交換の即時性が進んできている社会にあって
そう遠くない将来、審判のジャッジについても、その場の俗人的判断のみに依拠するのではなく
ビデオジャッジを含め、客観的判断の混入が一般的になるのかもしれない。
ただ、では、それを極端にして
すべて機械がジャッジするようになれば、判断は客観的になるのかもしれないが
それが、スポーツとして面白いのか、というのはまた別なような気がする。
スポーツにおける審判の在り方について
何だか改めて考えさせられたスーパー・ボウルであった。
というわけで、これにて、2021年シーズンのアメフト話は終了です。
たぶん。
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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)
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