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労働審判という制度

2021年12月12日

テーマ:労務管理関係

コラムカテゴリ:法律関連

労働審判という制度がある。
労働審判法という法律に基づく制度である。

労働関係の紛争では
解雇されて給与の支払いがストップしたり、残業代の支払いがなされないなど
生活に直結する問題が扱われ、解決にスピード感が求められることから
創設された制度である。

特別な事情がなければ、3回以内の審理で手続きが終わるため
基本的に、第1回目の期日までには、双方の主張(言い分)とそれを裏付ける証拠(資料)を
全て出し尽くす必要がある。

これは簡単なことのように思えるかもしれないが
解決の見通しを踏まえて、主張を組み立て、それを裏付ける証拠収集をし尽くさなければならない
ということを意味するため、的確な見通しと事件全体を見渡す視野が要求される。

通常は、労働者側が申立てを行うため
労働者側は、十分に準備して申立てを行うことができるが
使用者側は、ある日、裁判所から申立書が届き、期限を切られ
それまでに、主張と証拠を出し切るように、と指示されることになる。

限られた時間の中で、解決を見通し、主張と証拠を組み立てて書面を作成し
提出する必要がある、ということである。

これは、相応な法的知識と能力を要するものであり
そのため、労働審判法においては、基本的に弁護士しか代理人になることができない
とされている。


以上は、使用者側にだけ当てはまることのようであるが
では、十分な準備をして申立てができる労働者側は、本人でも十分な訴訟活動が可能か
というと、僕は、甚だ疑問である。

僕が、ご依頼していただいた労働審判事件(僕は使用者側)で
労働者本人が弁護士を代理人に立てずに手続きを行った事件があった。

本人は、関西の大学の法学部を出ているとかで自信があったのかもしれない。
労働審判手続きは、調停がまとまり終結したが
本人は裁判所の前で「勝訴」という紙を掲げて写真を撮っていた。

しかし、当方からすると、労働者側は何も勝訴していない解決であり
本人が納得したのであれば何よりであるが
本人の訴訟活動は、労働者側の権利行使が十分なされていた
とは到底思えない訴訟活動であった。

弁護士は、訴訟活動を行う時、裁判所や相手方の言動を見ながら
駆け引きとまでは言わないかもしれないが、言うべきこと、言ってはいけないこと
を神経を尖らせて取捨選択し、次の展開も予想しながら組み立てていくものだと思う。

上記の本人は、それが全くできていなかった。

そのため、結果として、当方からすると
労働者側が何も勝訴と評価できない解決で終えることができたのだと思う。


弁護士的には、通常の民事訴訟や家事事件でも
ご本人の権利をできるだけ護るためには、弁護士を代理人とされるべきだと思うし
労働審判事件では、使用者側はもちろん、労働者側も、弁護士を代理人とされるべき
と考える。


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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)

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