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今週のJR(塾ジイreview)【指導者編】ー精神論だけでは生徒は動かない。指示の具体性が結果を左右するー

久保克己

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テーマ:秋のスランプ脱出法

「がんばれ!」「ヤル気を出せ!」で、何が変わるのか?

受験生にとって、秋は厳しい時期じゃ。夏休みに頑張ったにもかかわらず、模試の偏差値が下がる。勉強しているのに結果が出ない。周囲との差が気になり、焦りや不安が募る。そんなスランプに陥る生徒も少なくないじゃろう。
こうした生徒を前に、指導者は何を伝えるべきか。
「もっとがんばれ!」
「ヤル気を出せ!」
もちろん、生徒を励ますことは大切じゃ。しかし、それだけで生徒の学習行動は変わるじゃろうか。
本人も頑張らなければならないことは分かっておる。ヤル気が必要なことも分かっておる。それでも、何をどう頑張ればよいのかが分からない。努力しているのに成果が出ず、次に何をすればよいのか見失っている。そんな生徒に精神論を繰り返しても、具体的な解決にはつながらんことがあるんじゃ。
この時期、塾講師に求められるのは、精神的なサポートと、具体的な作業の指示。その両方を適切に提供できるかどうかが、指導者の腕の見せ所なんじゃよ。

「3時間勉強しろ!」という指示に潜む危険

学習時間を確保することは、もちろん大切じゃ。必要な学習量をこなすために、一定の時間を確保しなければならんこともある。
しかし、「毎日3時間以上勉強しろ」という指示だけで終わってはいないじゃろうか。
例えば、こんな光景を想像してみてほしい。
「今日は3時間、数学を勉強しろ!」
生徒は机に向かう。ところが、時計をチラリ。スマホをチラリ。問題を少し解いては休み、分からない問題に出合えば手が止まる。集中が途切れても、とりあえず机には座っておる。時間が過ぎるのを待つようにして、ようやく3時間が経過する。
あるいは、3時間、自習室にいた。ノートを開き、問題集も開いた。だが、何をできるようにするのかは明確になっていない。
これでは、3時間机に向かったことや、自習室に3時間滞在したこと自体が目的になってしまう。
もちろん、すべての生徒がこうなるわけではない。しかし、作業内容を具体的に示さず、時間だけを指定する指導には、こうした非効率を招く危険があるんじゃ。
「3時間勉強した」という事実と、「3時間で学力が伸びた」という事実は、同じではない。
指導者は、勉強時間を管理するだけでなく、その時間に何をさせ、何を身につけさせるのかまで考えなければならんのじゃよ。

時間を指示するのではなく、作業を明確にする

では、どう指示すればよいのか。
例えば、「数学を3時間勉強しろ!」ではなく、「今回の模試で間違えた数学の問題を分析し、原因を分類する。そのうえで、解説を読んで理解した問題を、解答を見ずにもう一度解き直す」と指示する。
さらに、「どの問題を、どこまでできるようにするのか」「何をもって完了とするのか」まで明確にするんじゃ。
単に解説を読んだだけでは、理解できたとは限らん。解答を写しただけでは、自力で解けるようになったとは言えん。だからこそ、最後に自力で解き直せるかどうかを確認する必要がある。
英語なら、単語帳を1時間眺めるのではなく、「指定した単語の意味を隠して確認し、間違えた単語だけを集中的に復習する」。理科や社会なら、教科書を読み続けるのではなく、「この範囲の重要事項を何も見ずに説明できるか確認し、説明できなかった箇所を覚え直す」。
このように、作業を具体化すれば、生徒は何をすればよいのかが分かる。指導者も、作業の成果を確認し、次の指示につなげることができるんじゃ。
ここで、ぜひ生徒に考えさせたいことがある。
「この作業を1時間で終えるには、どうすればよいだろう?」
この問いは、単に作業を急がせるためのものではない。作業の手順を見直し、無駄を減らし、集中すべきところに集中するための問いなんじゃよ。
例えば、間違えた問題を何となく最初から解き直すのではなく、まず間違いの原因を分類する。すでに理解できている問題に時間をかけすぎず、知識が不足している問題や解法が定着していない問題を優先する。解き直した後には、解答を見ずに自力で再現できるかを確認する。
こうした工夫を通して、同じ1時間でも学習の質は変わる。
時間を短縮することだけが目的ではない。限られた時間を、学力を伸ばすために有効に使えるようにすることが目的なんじゃ。

模試分析は、具体的な作業指示の出発点

では、生徒にさせる作業をどう決めるのか。その出発点となるのが、模試の分析じゃ。
偏差値や順位を見て終わりにしてはならん。答案を見て、何を間違えたのか、なぜ間違えたのか、次に何をすべきなのかを明らかにするんじゃ。
知識が足りなかったのか。解法の理解が不十分だったのか。問題文を読み違えたのか。時間配分に問題があったのか。同じ失点でも、原因によって必要な作業は違う。
模試の正答率や答案の内容も参考にしながら、優先して取り組む課題を選ぶ。そして、その課題を具体的な作業に落とし込む。
「英語をもっと勉強しろ」ではなく、「今回の模試で失点した長文のうち、根拠を持って答えられなかった設問を確認し、本文のどこを根拠にすべきだったか説明できるようにする」。
「数学を復習しろ」ではなく、「間違えた問題を、知識不足・解法の理解不足・計算ミスに分類し、優先度の高い問題から解き直す」。
こうした指示であれば、生徒は取り組むべき課題を具体的に把握できるし、指導者も達成状況を確かめやすい。
模試分析は、成績を説明するためだけの作業ではない。次の学習行動を決めるための作業なんじゃ。
「塾ジイのボイスコラム」6 -この作業でスランプから脱出せよ!ー
https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5239105/

【精神的なサポート】と【具体的な指示】は、車の両輪

ここまで、作業の具体性について話してきた。しかし、具体的な指示さえ出せば、すべての生徒が順調に動けるわけではない。
模試の偏差値が下がり、自信を失っている生徒もおる。勉強しても結果が出ない経験が続き、「どうせやっても無駄だ」と感じている生徒もおるじゃろう。
そんな生徒に、ただ課題を並べて「これをやれ」と指示するだけでは、十分とは言えん。
まずは、本人の不安や悔しさを受け入れる。そして、今の状況を一緒に整理し、何を変えればよいのかを考える。
「今回の結果は厳しかったな。じゃが、答案を見れば、次に取り組むべきことは見えてくる。まずは、この問題を自力で解けるようにしてみよう」
そんな声かけができるかどうかじゃ。
生徒を励ますことと、具体的な作業を指示することは、別々のものではない。精神的なサポートによって、生徒が次の一歩を踏み出せるようにする。そして、具体的な作業を通じて、小さな成功や成長を実感できるようにする。
その積み重ねが、自信を取り戻すきっかけになることもある。
「ヤル気を出せ」と求めるだけではなく、ヤル気が十分でないときでも取り組みやすい作業を示す。できたことを確認し、次の課題を明確にする。指導者には、そうした働きかけが求められるんじゃ。
「塾ジイのBAR」14 -スランプ脱出の阻害要因は“ヤル気”!?-
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「塾ジイの部屋」21 ー“無心”という名の突破力ー
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この時期こそ、“塾屋”の腕の見せ所

受験生の秋のスランプは、指導者にとっても難しい局面じゃ。結果が出ない生徒を前に、焦りから勉強時間を増やすよう求めたくなることもあるじゃろう。
しかし、必要なのは、ただ長く勉強させることではない。生徒の状況を把握し、模試を分析し、課題の優先順位を決め、具体的な作業として指示すること。そして、その作業に取り組む生徒の気持ちを支え、成果を確かめ、必要に応じて作戦を修正していくことじゃ。
「がんばれ」「ヤル気を出せ」という精神論だけでは、何をどう変えればよいのかが伝わらん。「3時間勉強しろ」という時間の指示だけでは、その時間の中身が保証されん。
「何を、なぜ、どうやるのか」。そして、「この作業を1時間でやるには、どうすればよいか」。
そこまで生徒と一緒に考え、実行できる形にして渡すことが、指導の具体性なんじゃよ。
精神的なサポートと、具体的な作業の指示。この二つを両立させられるかどうかが、秋のスランプを乗り越えるうえで大きな意味を持つ。
厳しい時期だからこそ、生徒に努力を求めるだけでなく、努力が成果につながるように指導する。生徒の時間を増やすだけでなく、その時間の価値を高める。
この時期は、塾屋にとって、まさに腕の見せ所なんじゃないじゃろうか。

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