遺品整理と遺品整理士
相続や成年後見の仕事をされている先生方から、遺品整理のご相談をいただくことがあります。
そのとき、私たちが最初に確認するのは、「何を捨てるか」ではありません。
「何を残す必要があるのか」です。
遺品整理というと、家具や家電、衣類などを搬出し、不要になったものを処分する仕事だと思われるかもしれません。
もちろん、それも私たちの仕事の一部です。
しかし、長年この仕事をしてきて感じるのは、家の中には「物」だけが残っているのではないということです。
そこには、その人が生きてきた時間が残っています。
たとえば、一見すると古びた時計。
使われなくなったカメラ。
何年も着ていない衣類。
家族から見れば、もう必要のない物に見えるかもしれません。
しかし、その時計を故人様が大切にしていた理由があるかもしれません。
そのカメラで家族の写真を撮っていたかもしれません。
その衣類には、亡くなられた方との思い出が残っているかもしれません。
だから私たちは、できるだけ「物だけ」を見ないようにしています。
「これは何だろう」
だけではなく、
「この方は、なぜこれを大切にしていたのだろう」
と考えるのです。
特に成年後見や相続に関わる現場では、家の中から通帳、印鑑、契約書、重要書類、貴重品などが見つかることもあります。
作業する側が「不要品」と判断してしまえば、それで終わってしまいます。
だからこそ、専門家の先生方との事前の確認が大切になります。
私たちには法律上の判断はできません。
相続について判断することもできません。
だからこそ、分からないものを勝手に判断しない。
必要なものは専門家に確認していただく。
この役割分担が大切なのだと思っています。
私は遺品整理を始めた頃、「物を片付ける仕事」だと思っていました。
しかし、仕事を続ける中で考え方が変わりました。
遺品整理とは、故人様が残された物を整理する仕事であると同時に、その方の人生に最後に触れさせていただく仕事でもある。
だから、雑には扱えません。
急いで終わらせることだけが、良い仕事とも思っていません。
ご依頼者様が、
「安心して任せられました」
と言ってくださる。
そのためには、物を運び出す技術だけではなく、「この物にはどんな意味があるのだろう」と考える姿勢が必要なのだと思います。
法律の専門家には法律の専門性があります。
不動産の専門家には不動産の専門性があります。
私たちには、家の中に入り、そこに残された暮らしや物を整理する専門性があります。
それぞれの専門家が自分の役割を果たしながらつながることで、ご本人やご家族を支えることができる。
私は、遺品整理の仕事もその一端を担っているのだと考えています。
「処分する物を探す」のではなく、「残すべきものを見つける」。
それが、私たちが考える遺品整理の第一歩です。


