人とをつなぐレクリエーション
「勉強がわからないという困りは、勉強の時間だけで終わらない。」
私が担任をしていて、身に染みて感じていたことです。
授業についていけない。宿題になかなか取りかかれない。頑張ったのに、テストでは思うような結果が出ない。
そんな経験が重なるうちに、「どうせ自分にはできない」「頑張っても同じだ」と、自分の可能性にふたをしてしまう子どもがいます。本当はできることや、その子らしいよさがたくさんあるのに、勉強が苦手という一面だけで、自分全体を評価してしまうのです。
私は16年間の教員生活の中で、学習のつまずきが、自信や意欲、学校での過ごし方、そして家庭での親子の時間にまで影響していく姿を見てきました。
そのたびに考えていたのが、「この子と、このご家庭のために、もう少しできることはないだろうか」ということでした。
学習の困りが、暮らしの困りになっていく
学校生活の中で、勉強に向き合う時間は大きな割合を占めています。その時間の多くを「わからない」「できない」と感じながら過ごすことは、子どもにとって想像以上にしんどいものです。
間違えるのが怖くて、手を挙げられない。
友達と比べて、自分だけが遅れているように感じる。
わからないと言えずに、何となくその場をやり過ごす。
そうした毎日の積み重ねから、勉強を避けるようになったり、いら立ちが増えたり、新しいことに挑戦する気持ちまで小さくなったりすることがあります。
もちろん、生活の中の困りにはさまざまな背景があります。すべてを学習だけで説明できるわけではありません。それでも、学習で感じる苦しさが、その子の一日の重荷になっていることは、見過ごせないと感じてきました。
そして、その重荷は、家庭に帰ったら自然になくなるものでもありません。
心配だからこそ、親子で苦しくなることがある
「宿題は終わった?」
「早く始めたら?」
「さっきも説明したでしょう」
子どものことを思ってかけた言葉が、いつの間にか強い口調になってしまう。教えているうちに親子で言い合いになり、最後には子どもが泣いてしまう。寝顔を見ながら、「今日も怒ってしまった」と自分を責める。
保護者の方も、決して怒りたいわけではないはずです。
この先、もっと勉強が難しくなったらどうなるのだろう。学校で困っていないだろうか。今、何とかしておいた方がいいのではないか。そうした心配があるからこそ、黙って見守ることが難しくなるのだと思います。
一方で、子どもにも「わからない」「やりたくても進まない」という苦しさがあります。うまく説明できず、黙り込んだり、反発したりすることもあるでしょう。
お互いを大切に思っているのに、勉強のことになると気持ちがすれ違ってしまう。宿題に時間がかかり、夕食やお風呂、就寝まで慌ただしくなる。ゆっくり話したり、笑い合ったりする時間が減っていく。
そんな悪循環を、ご家庭の頑張りだけで何とかしなければならない状況を、少しでも変えたいと思いました。
どこがわからないのか。
どこまでは理解できているのか。
何ができるようになれば、次へ進めるのか。
そこを一緒に確かめることが、支援の出発点だと考えています。
例えば、分母の違う分数の足し算で困っていても、原因は一人ひとり違います。通分の手順があいまいな子もいれば、倍数の理解や九九の習熟に立ち戻ることで、学びやすくなる子もいます。
同じ問題を繰り返すだけでは、苦しさが増してしまうこともあります。だからこそ、その子のつまずきを見極め、必要なところまでさかのぼり、小さな段階に分けて学び直す。それを、30人学級の担任をしながらこなしていくのは、現実的ではありません。
でも、立場を変えれば。
今まで学校現場で力を尽くしてきた自分なら。
「ここならわかる」
「自分で解けた」
「もう一問やってみようかな」
その経験を重ねながら、少しずつ「自分にもできる」という感覚を取り戻してほしい。
子どもにも、保護者にも、伴走する存在でありたい
補習塾「二人三脚」という名前には、一人で抱え込まず、一緒に歩んでいきたいという思いを込めています。
学ぶ主役は子ども自身です。大人がすべてを決めたり、先回りして答えを渡したりするのではなく、その子が自分で考え、一歩を踏み出せるように支えたい。うまくいかないときには立ち止まり、歩幅を確かめながら進んでいきたいと思っています。
同時に、保護者の方にとっても、子どもの学習について相談できる相手でありたいと考えています。
「どこで困っているのかがわかった」
「家で全部教えなければ、と思わなくなった」
「今日は勉強以外の話もできそうだ」
そんなふうに、少し肩の力を抜けるきっかけをつくれたらと思います。
一つの塾にできることには限りがあります。それでも、一問が解けるようになることが、明日の授業への安心につながるかもしれません。宿題に向かう負担が軽くなることで、家庭に穏やかな時間が増えるかもしれません。
学習の困りを入り口に、子どもが自分への信頼を取り戻し、保護者の方も安心してその成長を見守れるように。
そのために、目の前の一人と丁寧に向き合う場所をつくりたい。
それが、私が補習塾「二人三脚」を立ち上げた理由です。


