管理規約改正支援にあたって思うこと
今回は第3回目で、「所有者不明専有部分管理命令」について説明させていただきます。太字箇所が改正(追加)箇所です。
この「所有者不明専有部分管理命令」に関する規定は、第1章(建物の区分所有)の新たな第6節として所有者不明専有部分管理命令が設けられています。所有者が不明であることで管理組合の運営が困難になりつつある現状を踏まえて、今回新たに規定される条文です。
裁判所は、利害関係人(管理組合等)から請求があれば、その所有者不明者の専有部分や共用部分を「所有者不明専有部分管理人」によって管理をすることを命ずることができ、この所有者不明専有部分管理命令の効力は、専有部分、共用部分だけでなく、動産や共用部分、附属施設に関する権利や敷地利用権にも及びます。
裁判所によって選任された所有者不明専有部分管理人は、専有部分、共用部分だけでなく、動産や共用部分、附属施設に関する権利や敷地利用権を、善管注意義務をもって管理、処分する権限があり、保存行為や専有部分等の性質を変えない範囲内で利用又は改良を行うことができます。そして、所有者不明専有部分管理人は裁判所が定める額の費用の前払と報酬を受けることができるとしています。
(所有者不明専有部分管理命令)
第四十六条の二 裁判所は、区分所有法を知ることができず、又はその所在を知ることができない専有部分(専有部分が数人の共有に属する場合にあつては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない専有部分の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る専有部分又は共有持分を対象として、所有者不明専有部分管理人(第四項に規定する所有者不明専有部分管理人をいう。第三項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明専有部分管理命令」という。)をすることができる。
2 所有者不明専有部分管理命令の効力は、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分(共有持分を対象として所有者不明専有部分管理命令が発せられた場合にあつては、共有物である専有部分)又は共用部分、附属施設若しくは建物の敷地にある動産(当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分の区分所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。 )並びに共用部分及び附属施設に関する権利並びに敷地利用権( いずれも当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分の区分所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
3 所有者不明専有部分管理命令は、所有者不明専有部分管理命令が発せられた後に当該所有者不明専有部分管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分又は共有持分並びに当該所有者不明専有部分管理命令 の効力が及ぶ動産並びに共用部分及び附属施設に関する権利並びに敷地利用権の管理、処分その他の事由により所有者不明専有部分管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4 裁判所は、所有者不明専有部分管理命令をする場合には、当該所有者不明専有部分管理命令において、所有者不明専有部分管理人を選任しなければならない。
(所有者不明専有部分管理人の権限)
第四十六条の三 前条第四項の規定により所有者不明専有部分管理人が選任された場合には、所有者不明専有部分管理命令の対象とされた専有部分又は共有持分並びに所有者不明専有部分管理命令の効力が及ぶ動産並びに共用部分及び附属施設に関する権利並び に敷地利用権並びにこれらの管理、処分その他の事由により所有者不明専有部分管理人が得た財産(以下「所有者不明専有部分等 」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明専有部分管理人に専属する。
2 所有者不明専有部分管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもつて善意の第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 所有者不明専有部分等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
(所有者不明専有部分等に関する訴えの取扱い)
第四十六条の四 所有者不明専有部分管理命令が発せられた場合に(新設)は、所有者不明専有部分等に関する訴えについては、所有者不明専有部分管理人を原告又は被告とする。
2 所有者不明専有部分管理命令が発せられた場合には、所有者不明専有部分等に関する訴訟手続で当該所有者不明専有部分等の所有者(その共有持分を有する者を含む。第五項において同じ。)を当事者とするものは、中断する。
3 前項の規定により中断した訴訟手続は、所有者不明専有部分管理人においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては 、受継の申立ては、相手方もすることができる。
4 所有者不明専有部分管理命令が取り消されたときは、所有者不明専有部分管理人を当事者とする所有者不明専有部分等に関する訴訟手続は、中断する。
5 所有者不明専有部分等の所有者は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。
(所有者不明専有部分管理人の義務)
第四十六条の五 所有者不明専有部分管理人は、所有者不明専有部分等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもつて、その権限を行使しなければならない。
2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明専有部分管理命令が発せられたときは、所有者不明専有部分管理人は、当該所有者不明専有部分管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。
(所有者不明専有部分管理人の解任及び辞任)
第四十六条の六 所有者不明専有部分管理人がその任務に違反して所有者不明専有部分等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明専有部分管理人を解任することができる。
2 所有者不明専有部分管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
(所有者不明専有部分管理人の報酬等)
第四十六条の七 所有者不明専有部分管理人は、所有者不明専有部 (新設) 分等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2 所有者不明専有部分管理人による所有者不明専有部分等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明専有部分等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。