区分所有法の主な改正内容(1)

小堀將三

小堀將三

テーマ:管理規約等・法令

 区分所有法改正案が3月4日に閣議決定され、今国会でいよいよ審議されることになりました。区分所有法は昭和37年の制定以来、何度か改正はありましたが、大改正となりますと昭和58年以来となります。
 今回の改正の内容につきまして、本日から数回に分けて、主な改正内容を紹介させていただきます。
 本日は第1回目で、太字箇所が改正(追加)箇所です。

 まず初めに、区分所有者の責務について明記されました。
(区分所有者の責務) 第五条の2 区分所有者は、第三条に規定する団体の構成員として、建物並びにその敷地及び附属施設(同条後段の場合にあっては、一部共用部分)の管理が適正かつ円滑に行われるよう、相互に協力しなければならない。

 次に、日本在住以外の区分所有者がマンション内で増加していることをうけて、その区分所有者の代理人となる「国内管理人」について規定されました。国内管理人は、区分所有者の代わりに専有部分を改良(専有部分の性質を変えない範囲内)することができ、総会の通知を受けて議決権を行使することができます。
(国内管理人) 第六条の2 区分所有者は、国内に住所又は居所(法人にあつては、本店又は主たる事務所。以下この項及び第三項において同じ。)を有せず、又は有しないこととなる場合には、その専有部分及び共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所又は居所を有する者のうちから管理人を選任することができる。
2 前項の規定により選任された管理人(次項及び第四項において「国内管理人」という。)は、次に掲げる行為をする権限を有する。  
一 保存行為  
二 専有部分の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為  
三 集会の招集の通知の受領  
四 集会における議決権の行使  
五 共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して負う債務又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して負う債務の弁済
3 区分所有者は、第一項の規定により国内管理人を選任した場合において、管理者があるとき、又は管理組合法人が存立するときは、遅滞なく、管理者又は管理組合法人に対し、国内管理人を選任した旨並びに国内管理人の氏名又は住所又は居所を通知しなければならない。
4 区分所有者と国内管理人との関係は、第二項に定めるもののほか、委任に関する規定に従う。


 そして、一番関心を持たれたと思いますが、議決の可決割合が変更になる箇所ですが、まず、共用部分の変更については、総会の成立を区分所有者と議決権数の過半数の出席としたうえで、出席者数の4分の3以上及び出席者の議決権数の4分の3以上となりました。この総会の成立については、規約で過半数を上回ることを可能としています。ここでの区分所有者には、あとの規定で出てきます「所在等不在区分所有者」は議決権を有していないとして除きます。そして、この4分の3以上は、規約でそれぞれ過半数まで割合を減じることができるようになり、共用部分の変更に伴う専有部分の保存行為や改良(専有部分の性質を変えない範囲内)も同じ割合で可決することができます。ただし、この旨を規約で定める必要があります。
 また、他人の権利が侵害される又は恐れのある共用部分の瑕疵を除去するための工事や、バリアフリー化の工事については、出席者数の3分の2以上及び出席者の議決権数の3分の2以上で可決することができます。
(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第五項において同じ。)は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項及び第三項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規定で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決する。
2 (略)
3 第一項の決議により共用部分の変更をする場合において、規約に特別の定めがあるときは、当該共用部分の変更に伴い必要となる専有部分の保存行為又は専有部分の性質を変えない範囲内においてその利用若しくは改良を目的とする行為(次項及び第四項において「専有部分の保存行為等」という。)は、集会において、区分所有者の過半数(これを上回る割合を規定で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の四分の三(これを下回る割合(二分の一を超える割合に限る。)を規約で定めた場合にあつては、その割合)以上の多数による決議で決することができる。
4 前項の決議をする場合において、専有部分の保存行為等の態様又は費用の分担に関する事項を定めるときは、決議の対象となる専有部分の区分所有者の利用状況、当該専有部分の保存行為等について区分所有者が支払つた対価その他の事情を考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにしなければならない。
5 共用部分の設置若しくは保存に瑕疵があることによって他人の権利若しくは法律上保護される利益が侵害され、若しくは侵害されるおそれがある場合におけるその瑕疵の除去に関して必要となる共用部分の変更又は高齢者、障害者等(高齢者、障碍者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二条第一号に規定する高齢者、障害者等をいう。)の移動若しくは施設の利用に係る身体の負担を軽減することにより、その移動上若しくは施設の利用上の利便性及び安全性を向上させるために必要となる共用部分の変更についての第一項及び第三項の規定の適用については、これらの規定中「四分の三」とあるのは、「三分の二」とする。

 次に管理者の権限についてですが、現行では管理者は損害保険契約に基づく保険金や損害賠償金の受領について単に区分所有者を代理するとなっていますが、請求権を持っている区分所有者であった人も代理すると明記しています。
(権限)
第26条 管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務(第十八条第六項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金(以下この条及び第四十七条において「保険金等」という。)の請求及び受領を含む。第四項において同じ。)に関し、区分所有者(保険金等の請求及び受領にあつては、保険金等の請求権を有する者(区分所有者又は区分所有者であつた者(書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)による別段の意思表示をした区分所有者であつた者を除く。)に限る。以下この条及び第四十七条において同じ。)同項において同じ。)を代理する。
3 (略)
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、次の各号に掲げるときは、遅滞なく、それぞれ当該各号に定める者にその旨を通知しなければならない。この場合における区分所有者に対する通知については、第三十五条第二項から第四項までの規定に準用する。  
一 前項の規約によりその職務に関し原告又は被告となつたとき 区分所有者  
二 前項の規約により保険金等の請求及び受領に関し原告又は被告となつたとき 保険金等の請求権を有する者  
三 前項の集会の決議により保険金等の請求及び受領に関し原告又は被告となつたとき 保険金等の請求権を有する者(区分所有者を除く。)


 次回は、所在等不明区分所有者の規定を中心に紹介させていただきます。

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小堀將三
専門家

小堀將三(マンション管理士)

マンション管理士事務所JU 高知オフィス

第三者の立場に立って絶えず公平な判断を下し、管理組合様と管理会社の良好な関係ができるよう、両者をつなぐ役目となることを目指します。大規模修繕工事、管理規約の見直しなど、様々なお悩みに寄り添います。

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