センセーショナルな言葉に踊らされる「葬」にかかわる業界。ここはあえてその言葉の裏を考えてみたい。
4回前のコラムで書いた内容に一部かぶるのですが…。塔婆立てはお墓の中でも気をつけたほうが良い部材かもしれません。
この石は凝灰岩の大谷石、特に朽ちやすい石材です。残念ながら劣化が進んだため、背中合わせの外柵の塔婆立はいずれも破損しています。
このような状態になると、どちらかの塔婆立てが寄り掛かることで、両方ともに倒れてしまうといったケースも出てきます。(こちらでは劣化が進んだため、既に金具部分が取り外されています)
もしそういう事態になったとしても、この劣化具合ではどちらの責任とは言い切れないと私は思います。しかし当事者としてはそう冷静ではいられないかもしれません。一般の方は据付けてある石が劣化したり崩れたりするなどと思わないでしょう。
向こうが倒れてきたからうちのお墓が壊れた―。こうなるとお墓で「隣人トラブル」に発展してしまうかもしれません。
そんな「トラブル」を防ぐ意味でも、本来こうした場合には外柵の作り替えが一番望ましいところ。しかし当然費用的にもまとまった額がかかります。事情や状況によっては暫定処置として、傷んだ羽目石・塔婆立てを撤去してステンレス製の塔婆立てを設置するというのも一つの手だと思います。
こうしたことは特に珍しい事象ではありません。これと似たような状況は多くの墓地で見かけることがあります。あなたの家のお墓が古い場合には、施主として時にこうした部分への目配りをしていただきたいと思います。
御影石製塔婆立ても油断は禁物
実は御影石製でもグラグラになって倒れそうな塔婆立てを見ることがあります。この場合、石そのものの劣化でなく、施工不良が原因です。
塔婆立ては断面積に比べて高さ寸法があり、何もしなくても不安定なものです。まして多くの塔婆をさすために、小さな断面に大きな負担がかかりがちです。こうした不安定さを解消するために芯棒を入れるか、ダボや雁木加工を施して周囲の部材と連携させたりするのが基本です。
しかしながら何の工夫もせず、ただ接着剤に頼るだけの施工をされているお墓も見受けられます。施工している人間は心配ではないのでしょうか?まして点づけと呼ばれるような少量の接着剤のみで固定する方法では、施工不良と言われても反論できないと思います。
実際に御影石塔婆立てが倒れたという話を耳にしますし、接着剤がはがれ何も留まっていないに近い状態のものを見たこともあります。特に大風の吹く日などには要注意で、転倒の危険性が高まります。
風で重い石が倒れるとは嘘みたいな話です。塔婆は一枚ではたいした面積ではありません。でも枚数が多ければ大きな衝立が立っているのに近い状態、結果大きな風圧を受けてしまうことになります。施工不良の塔婆立てでは、地震などの振動も怖いところですね。
弊社ではステンレス製のダボを使い、接着剤との併用で塔婆立ての据付を行っています。ダボで固定してあるので、接着剤だけの場合と比べ転倒する危険性はずっと低いと思います。
いずれにしても塔婆立てに寄り掛かったり、体重をかけるようなことは控えたほうは良いと思います。