解雇予告除外認定制度の概要と申請の流れ
1.労働条件の明示
企業が従業員を雇い入れるということは、従業員が労働力を提供し、労働の対価として企業が賃金を支払うという労働契約が成立することを意味します。このときの契約は、必ずしも書面で行う必要はなく、口頭でも成立します。ただし、労働基準法第15条では労働契約を締結する際に「労働条件を明示しなければならない」としており、更には、労働条件のうち以下の事項については書面での明示を求めています。
①労働契約の期間に関する事項
②就業の場所および従事すべき業務に関する事項
③始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
④賃金(退職手当や臨時に支払われる賃金等を除く)についての次の事項
・賃金の決定、計算および支払の方法
・賃金の締切および支払の時期
⑤退職に関する事項(解雇の事由も含む)
これら以外の労働条件も含め、できる限りの事項を労働条件通知書等の書面で明示し、併せて就業規則の説明をすることが求められます。このように書面で明示することにより、後々発生しかねない労働条件の認識の違いによるトラブルを防止できます。
2.身元保証書
企業は、従業員が企業に対し損害を与え、その損害に対する賠償を行うことができないといった場合に備えて身元保証書により身元保証契約を取り交わすことがあります。契約時に損害賠償額が確定していないことや、企業側の過失や管理の程度等によっては、損害の全額を賠償請求できるとは限りませんが、身元保証書を提出させることにより不正を抑止する効果が期待できます。
この身元保証契約は、「身元保証ニ関スル法律」においてその取扱いが定められており、契約期間を定めない場合は契約締結日から3年で失効することとなっています。また、契約期間を定める場合であっても、最長5年までとされています。これは、長期間の契約を行うことで、身元保証人が過大な責任を負わされることを避けるためのものです。そのため、その期間を超える場合には、必要に応じ契約の更新を行うことが必要になります。
3.試用期間
入社前の採用選考では、適性検査や面接を行うことでその人物を見極めることが一般的ですが、現実的には面接などによって業務に対する適格性を判断することは難しいものです。そのため、技能、能力、勤務態度等を判断する期間として試用期間を設けることがあり、労働基準法においても「試みの使用期間」として規定されています。この期間については、通常の従業員を解雇することに比べると、解雇が一定程度広く認められていると考えられています。ただし、実際に本採用を行わず解雇するためには以下のような留意点を押さえておく必要があります。
①試用期間の長さ
試用期間は、能力や適性によっては本採用見送りになる可能性があるということであり、従業員側から見れば、雇用が不安定な状態にあります。よって判例により、そのあまりに長期の試用期間を設定した場合にはそれが無効であるとされています。多くの企業では3ヶ月から6ヶ月程度の試用期間が設定されていますが、1年を超えるような長期の試用期間は通常、法的に問題があると考えるべきでしょう。
②試用期間中の本採用拒否(解雇)
試用期間中であっても、無制限に解雇が認められるわけではありません。判例では試用期間中であっても「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認される場合」に解雇が認められると示されています。要するに、試用期間中の勤務状況、能力、意欲、態度等から本採用することが客観的に見て適当ではないと判断されるときに限り解雇は有効だと判断されます。
③試用期間を定める際のポイント
試用期間を定める場合は、まず以下のような事項を就業規則に規定し、従業員に事前に説明する必要があります。
1)試用期間の目的
2)試用期間の長さ
3)試用期間中の賃金やその他の労働条件
4)本採用しない場合の基準
5)試用期間を延長に関する事項
6)勤続年数の算定にかかる試用期間の取り扱い
4.雇い入れ時の健康診断
労働安全衛生法には、従業員の健康管理面について規定されています。その一つに健康診断の実施があり、常時使用する従業員を雇い入れる際には、法定で定められた項目について実施することを義務付けています。
なお、健康診断の実施は必ずしも入社後に行う必要はなく、定められた項目について3ヶ月以内に受診したものがある場合には、その証明できる書類を提出することで省略することができます。
入社時には以上のような法的留意点があります。これらを順守し、従業員に対し十分な説明を行うことで不要なトラブルを防ぐことができるでしょう。入社時の必要な手続きは当事務所へご相談ください。
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