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若山誉(わかやまほまれ) / 社会保険労務士

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コラム

解雇予告除外認定制度の概要と申請の流れ

2012年2月26日

コラムカテゴリ:ビジネス

コラムキーワード: 解雇 条件退職 手続き

従業員が会社の金銭を横領するなど重大な違反行為を行った場合、企業としてはその従業員に対し、懲戒解雇の処分を下さざるを得ない場合があります。その際、「本人が重大な違反行為を行った上での懲戒解雇のため解雇予告は不要」と考えがちですが、法的には「懲戒解雇=解雇予告手当なし」とはされていません。以下では懲戒解雇などを行う際に、解雇予告手当の支払いが除外される解雇予告除外認定制度について取り上げてみましょう。


[解雇を行う際の大原則]
 そもそも解雇は、大きく普通解雇、懲戒解雇、整理解雇の3つに分類されますが、解雇を行う際に必ず押さえておかなければならないのは、その最低限の手続きとして解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いが必要になることです。その根拠は労働基準法第20条にあり、ここでは使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告をし(解雇予告)、30日前に予告をしない場合には30日分以上の平均賃金を支払わなければならない(解雇予告手当)とされています。これは、原則として懲戒解雇など「労働者の責に帰すべき事由」によって即時解雇を行う場合であっても同様です。

[解雇予告除外認定制度の概要と流れ]
 ただし、天災事変などやむを得ない事由により事業の継続ができなくなった場合や労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合にはこの限りではなく、その事由について所轄の労働基準監督署長の認定を受けることによって、解雇予告手当を支払わずに解雇することが可能とされています。これが解雇予告除外認定制度です。

 解雇予告除外認定制度の具体的な手続きとしては、天災事変などやむを得ない事由により事業の継続ができなくなった場合は「解雇予告・解雇制限除外申請書」、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合は「解雇予告除外認定申請書」を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。そして、労働基準監督署長の認定を受けことによって、解雇予告ないし解雇予告手当の支払いは不要となります。

[労働者の責に帰すべき事由とは]
 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇予告除外認定を受ける場合については、その事由が労働者の故意、過失またはこれと同視すべき事由であることが必要ですが、その労働者の地位や職位、勤務状況等の要素を考慮した上で総合的に判断すべきものとされています。そのため、会社の規定において懲戒解雇に該当する事由であったとしても、労働基準監督署長が「解雇予告除外認定」に該当するとして認めるか否かは別の問題となり、その認定が下りない場合は、懲戒解雇を行う場合であっても、30日前の解雇予告を行うか30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。

[解雇予告除外認定の申請を行う際の留意点]
 また労働基準監督署長がこの除外認定を行う際には、会社にこの認定申請書の他に労働者名簿や問題行動についての顛末書、本人が問題行動を認めたことが分かる資料など多くの書類の提出が求められます。この他にも会社や当事者から事情聴取を行うなど、申請のハードルは高くなっています。これについては、通達(昭和63年3月14日 基発第150条)の中で「法第19条第1項ただし書及び法第20条第1項ただし書により認定申請書が提出された場合には、事の性質上特に迅速にこれを処理、決定する方針で対処するとともに、当該書面だけについて審査することなく、必ず使用者、労働組合、労働者その他の関係者について申請事由を実地に調査の上該当するか否かを判定すべきものであるから十分その取扱いに留意せられたい」とされていることからも、労働基準監督署長が慎重に判断を行っていることが読み取れるでしょう。

 実際に認定が下りるまでには1週間程度の時間がかかる場合もあり、また申請を行ったからといって必ず認定が下りる訳ではないため、すぐにでも解雇を行う必要がある場合においては、退職勧奨を行い、本人との合意による契約解消を行ったり、申請を行わず労働基準法第20条にならって30日分の解雇予告手当を支払うことも実務上多く見られます。


※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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