「基礎的国語力」を伸ばすためには…古典素読

篠田啓彦

篠田啓彦

テーマ:啓理学舎の特長 〜国語力(論理的思考力)〜

みなさん、こんにちは。

国語専門オンライン学習塾 啓理学舎の篠田です。

今回は、

『「基礎的国語力」を伸ばすためには…古典素読』について

お話をさせていただきます。




⑴素読とは…?


「素読(そどく)」を説明する前に、文章の読み方についてお話させていただきます。

文章を声に出して読む読み方は、「音読」「素読」「朗読」等があります。

「音読」は馴染み深いものだと思います。

実際に、学校やご家庭で実施されている場合も多いかと思います。

「音読」には2つの方法が含まれます。

それは、「朗読」「素読」です。

つまり、「朗読」と「素読」は「音読」に含まれます。

「朗読」は、言葉(文章、文)をしっかりと意味を理解した上で、聞き手に伝わりやすくするため、読む上でのいろいろな技巧(抑揚、間合い、テンポ、声量などの制御)を凝らして声を出して読むことを言います。

「素読」は、言葉(文章、文)を意味の理解を伴うことなくその字面を追って、あるいはお手本となる発話者の発音通りに声に出して読むことを言います。


⑵古典素読とは...?


【一般的な古典素読】

ここでは、「古典素読(そどく)」についてお話しさせていただきます。

「古典素読」は、古典の名文を意味を考えることなく音読することです。

古典素読は、世界各国でされています。

日本では、江戸時代に寺子屋や藩校で、漢文や古文の素読が行われていました。

また、語学の天才と言われるシェリーマン(考古学者)は、40歳までに20カ国以上の言語を習得しました。

その習得方法は、マスターしようとする言語の名文を訳すことなく、毎日大声で素読することでした。


【啓理学舎で実施する「古典素読」】

啓理学舎で行なっている「古典素読」を紹介させていただきます。

以下の3点に重きを置き、ご指導いたします。

①「50音」の口の形をしっかり学ぶ。

②古文を「一音一音切って」音読する。

③「古い時代」の文章から「新しい時代」の文章へ読み進める。


それでは、①〜③の説明をさせていただきます。

①「50音」の口の形をしっかり学ぶ。

古典素読に入る前に50音の口の形をしっかり学び、練習いたします。

「50音」の口の形とは、「顎(あご)の形」「唇の形」「舌の調節」です。

「50音」の口の形を学ぶ理由は、自分の脳に正しい「日本語情報=古代から伝わる音」を伝えるためです。


ここでは、例として最も重要な母音の口の形を記しておきます。

「あ」:唇を柔らかくして、顎を最大限大きく開き、腹の底から口腔内全体が響くように発声する。

「い」:「あ」から唇を柔らかくしたまま思い切り左右に引っ張るイメージで発生する。

「う」:「い」から唇を前にとがらせて、しっかり止めて発声します。

「え」:「う」から唇を硬くしつつ、やや上下に顎を開いて口腔内、舌の上を響かせます。

「お」:「え」から、さらに下顎を下げ、唇を内側に向けて口腔内の容積を最大限にして、両頬がよく響くように発声します。

母音がしっかりと発声することができたら、子音の発声の練習をしていきます。


②古文を「1音1音切って」音読する。

「口の形」がしっかりしてから、古文の素読に入っていきます。

ここで注意しなければいけないことは、大きな声で響かせながら「一音一音切って」音読することです。

ただし、古文の意味を考える必要はありません。

この読み方を「カタカムナ読み」と言っています。

この「カタカムナ読み」がマスターできたら、「一音一音読み」「祝詞読み」「普通読み」「ののしり読み」へ進んでいきます。

それではなぜ「一音一音」切って音読していくのでしょうか?

それは、日本語のカナの一音一音には、抽象的な概念(大まかな意味)があるからです。

つまり、日本語のカナは、一音一音切れた言語(仮説)であり、カナの音一つひとつに、我々日本人が共有するなんらかの抽象概念があるのではないかと考えられるからです。

では、カナの一音一音に秘められた抽象概念とは、どのようなものでしょうか?

それでは、「あ」の抽象概念を調べてみましょう!

辞書で訓読みが「あ」である漢字を探します。

上「あ・がる」「あ・げる」「あ・がり」
開「あ・く」「あ・ける」
明「あ・かるい」「あ・ける」
会「あ・う」
合「あ・う」「あ・わせる」
当「あ・たる」「あ・てる」
有「あ・る」
在「あ・る」

等があります。

これらから、共通する意味を考えると、「開放、開けるもの、開き広がる」となります。

上記のように日本語のカナには、一音一音に抽象的な概念があるため、「一音一音切って」音読練習をすると、古典のある程度の意味がわかるようになります。


③「古い時代」の文章から「新しい時代」の文章へ読み進める。

次に『「古い時代」の文章から「新しい時代」の文章へ読み進める』について説明をさせていただきます。

ここに、啓理学舎で扱う教材の例を示しておきます。

(古代)
「カタカムナ文献」(8000年以上前?)
※「古事記」に先行する文献だった?

(奈良時代)
「古事記」「万葉集」(8世紀)

(平安時代前半)
「竹取物語」(9世紀)
「古今和歌集」「土佐物語」(10世紀) 等

(平安時代中〜後期)
「枕草子」「源氏物語」「更級日記」(11世紀) 等

(鎌倉時代)
「方丈記」「平家物語」(13世紀)
「徒然草」(14世紀)  等

(江戸時代以降)
「奥の細道」(18世紀)
「学問のすすめ」(19世紀) 等

では、なぜ、「古い時代」の古典から「新しい時代」の古典へ読み進めていくのでしょうか?

その理由を示します。

同一の言語において、古い時代に使われていた「音」を習得すると、その後の時代の文章が楽に発声できるようになります。

つまり、現代文より、古文の名文の「音」の習得を始めた方が、そのあとが楽になります。

ここで例を挙げておきます。

「徒然草(鎌倉時代前期)」が江戸時代では、寺子屋や藩校でテキストとして使用され、よく読まれていました。

つまり、江戸時代以降に文章を書く人は、みな「徒然草」を読んだ(多分素読)経験があるということです。

そのため、「徒然草」「奥の細道(江戸時代中期)」等を「一音一音切って」素読すると、明治時代以降の文章が読みやすくなるのです。

しかし、その前の時代に書かれた「源氏物語(平安時代)」「枕草子(平安時代)」を簡単に素読することはできません。

平安古典を理解しやすくするためには、平安時代の人が皆よく読んだ書物を素読すれば良いのです。

平安時代の人に共通の教養書は「古今和歌集(奈良時代)」であるため、これを素読すれば、平安古典が音読しやすくなります。

さらに、それ以降の文学(徒然草等)がさらに読みやすくなる。

海外でも同じようなことが起きています。

ヨーロッパのエリート層は、ラテン語、ギリシャ語を学びます。

現代の言語の元になっている言語を学ぶことで、今使っている言語を客観視でき、了解できるようになります。


④「古典素読」の推奨時期

最後に、「古典素読」の推奨時期をお伝えしておきます。

「古典素読」には、お子様の推奨時期があります。

それは、幼稚園の年長〜小学生の低学年ぐらいから始めることです。

なぜなら、書くことや意味を理解することは無理でも、音であれば幼年期に多くのことをインプットできるからです。
(意味を理解するのは、後で大丈夫です。)

また、幼年期は繰り返し何かをすることを好む特徴があり、意味の指導をしない分、その時間を繰り返し同じ文章を素読に充てることができるからです。

例えば、コマーシャルのフレーズやお笑い芸人のギャグなどを意味もわからず発していることからもわかります。

しかし、小学生高学年、中学生、大人からでも十分効果があります。

実際に私自身が「古典音読」を始めたのが、50歳すぎです。

効果ははっきりと表れています。

その効果については、『古典素読の効果』に記しています。


最後に、「古典素読」の方法をまとめると、

①「50音」の口の形をしっかり学ぶ。

②古文を「一音一音切って」音読する。

③「古い時代」の文章から「新しい時代」の文章へ読み進める。


どうでしたか。

次に『古典素読の効果』についてお話しさせていただきます。


⑶古典素読の効果


ここでは、「古典素読(そどく)の効果」についてお話しさせていただきます。

古典素読の効果は、大きく分けて2つあります。

それは、

⑴古典がスラスラ読めるようになる

⑵脳が活性化し、情報処理能力がアップする

です。

これらをもう少し詳しく説明させていただきます。


⑴古典がスラスラ読めるようになる

古典の素読をやっているのですから、当然と言われれば当然のことです。

また、古典文法がわからなくても、素読をすると古文のだいたいの意味がわかるようになります。

その理由は、日本語は「一音一音」に意味があるからです。

詳しくは、『⑵ 古典素読法とは…?』に記載しております。


⑵脳が活性化し、情報処理能力がアップする。

素読でなくても現代文の音読でも、脳が活性化することは認められています。

しかし、素読の方が効果は高いようです。

もう少しわかりやすくいうと、読書する力が大きく伸びます。

具体的に言うと、読書スピードが上がります。

読書をするとそれに比例して、語彙力が伸びます。

また、「古典素読」は「一音一音切って」音読するため、精読ができるようになり、文章読解力も伸びます。

つまり、国語力がアップするのです。


次に、学校の授業や人の話がよく聴けるようになります。

例えば、You Tubeなどの動画を高速(1.5〜2倍)で聴けるようになります。

つまり、理解力や知識の吸収力も高くなるわけです。

そのため、国語以外の教科の学習も高速に学ぶことができるようになります。


以上のように、「古典素読」はお子様の基礎的学力を上げることができます。

それにより、お子様の将来の可能性を広げることになります。

そもそも「古典素読」は勉強ができないお子さんのために開発されたものでしたが、

それなりに学力のあるお子さんでも、未習分野の習得スピードが上がり、学力がさらに伸びます。

また、日本語を学んでいる外国人にも実証済です。


⑷ なぜ古典素読なのか?


ここでは、なぜ、「古典素読」が必要なのかをご説明させていただきます。

そもそも「頭が良い」とはどういうことでしょうか?

学校でも、会社でも、「あいつは頭がいいよなぁ。」とよく使われます。

一般的には、勉強ができる、成績が良い、ということでしょうか。

ちなみに、大学側が求めている高校生とは、どのような人物でしょうか?

それは、

「論説文を聴いて(授業)、理解して、 論説文を読んで、理解して、

自分の考えを文章化(レポート、論文)できる高校生」

です。

上記ができる高校生(18歳)は、10人または20人に1人ぐらいであると思われます。

それに伴い、私立、公立問わず、中高一貫校は、文章が書ける(国語力の高い)生徒を欲しがっているのです。

つまり、頭が良いとは、言語能力が高い、国語力が高い、ということです。

ですから、言語能力を高めることのできる「古典素読」を幼少期に行う必要があるわけです。



参考図書

「カタカムナ音読法」 ワニプラス  松永暢史(著)


「素読をすれば国語力が上がる!」 かざひの文庫  松田雄一(著)


「子どもの学力がグングン伸びる古典音読法」 致知出版社  陰山英男(著)

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篠田啓彦
専門家

篠田啓彦(塾講師)

国語専門オンライン学習塾 啓理学舎

保護者の方にお子さまとの接し方等をアドバイスさせていただくとともに、国語が苦手なお子さまでも特別な学習方法で真の「国語力」が身につき、さらに各教科の成績向上、中学・高校合格へ導いている。

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