平成27(2015)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説
みなさん、こんにちは。
国語専門オンライン学習塾 啓理学舎の篠田です。
今回は、「平成28(2016)年度・灘中二日目・大問三・詩」の解説をさせていただきます。
題名は「四つの海」(齋藤恵美子)です。
【問1】
(解説)
この詩に登場する「お年寄り」は以下の通りになります。
源蔵さん(3連2行目)、山岸さん(5連2行目)、藤吉さん(6連2行目)、小野塚さん(6連6行目)の4人です。
(模解)
「4人」
【問2・A】
(解説)
この設問は、「なぜですか。答えなさい」と問いているので、文末は「〜から」と答えます。
線部2の「こころたのし」は、比喩的表現になります。
これを抽象的に言いかえると「想像することが楽しい」となります。
あらためて設問の意味を考えると、
「「想像することが楽しい」のはなぜですか、答えなさい」
となります。
詩の中に、4人の「お年寄り」が想像した内容は、やりたいことです。
そして、やりたいこととは、好きなことです。
さらに、いくら好きなことでも強制されるとあまり楽しくありません。
ですから、答えには「自由」という言葉を入れることが良いと思います。
上記を整理して解答例を書くと以下になります。
(解答例)2行40字程度
好きなことを想像することが、自由にできるから。(23字)
【問2・B】
(解説)
この設問も、「なぜですか。答えなさい」と問いているので、文末は「〜から」と答えます。
また、この設問は線部B「もごい」の理由を問いています。
まずは「むごい」の意味ですが、
古風で感情のこもった言葉で、「あまりにもひどい、情け容赦がない」です。
現代では、「残酷だ」「ひどい」と言いかえることもできます。
この詩で登場する4人の「お年寄り」は高齢者施設(1連1行目「ホーム」)に住んでおり、「車椅子」を使用して生活していると考えられます。
だから、自由に想像した内容をしようとすることはとても難しいと考えられます。
よって、解答例は以下となります。
(解答例)2行40字程度
自由に想像したことを実現することはとても難しいから。(26字)
【問3】
(解説)
線部3「ここでは、地面さえ、欲望なのだ」というのは、比喩表現です。
その比喩表現を問3のX、Yに言葉を入れて言いかえなさい、という問題です。
線部3「地面さえ」という表現の「さえ」という言葉(助詞)の意味を説明させていただきます。
「さえ」は強調の意味があり、思いかけないものを取り上げて、
「それまでも(そうなのだから、他はもちろん)」という意味になります。
次に線部3「欲望なのだ」の「欲望」の意味ですが、
「欲」と同じ意味ですが、より強い気持ちや心の衝動を表します。
ですから、「車椅子ではなく、自分の足で地面を歩きたい」という気持ちが強いことを表現していると考えられます。
解答例は、以下になります。
(解答例)XYそれぞれ1行20字程度
X:「地面を自分の足で歩く」
Y:「したいという気持ち」
【問4】
(解説)
この設問は、線部4「たしかな音をもっていた」をわかりやすく言いかえなさい、という問題です。
まず最初に、線部4の「もっていた」(述語)の主語は何かと考えると、前行(7連2行目)の「どの波も」になります。
そして「どの波」の「どの」は、前行(7連1行目)の「あの海も、この海も」
になるため、線部4は「あの海、この海の波もたしかな音をもっていた」となります。
ちなみに、「あの海、この海」のことは、6連に書かれています。
それは、「なまの海」「裏日本の海」「フィリッピンの熱い海」「瀬戸内海」です。
これらの海は、9連1行目で「四つの海」に抽象化されています。
次に言葉の意味を確認していきましょう。
「たしかな」の意味ですが、
「間違いがない、確実であること、はっきりしていること、明白であること」です。
また、7連2行目の「どの波」の「波」は比喩的表現と考えられます。
「海の波」からイメージできることは、「海の情景」と思われます。
そして、線部4の「音」も比喩的表現と考えられます。
ですから、線部4の「たしかな音をもっている」とは「はっきりとした記憶の中にある」ということになるでしょうか。
ちなみに、7連1行目に「あの海も、この海も、すでに老いてしまったが」と書かれていますが、「あの海」や「この海」の情景は、「車椅子のお年寄り」の記憶の中にあるため、「すでに老いてしまった」と書かれていると考えられます。
上記のことをまとめると、線部4の「たしかな音をもっていた」とは、「四つの海の情景は、お年寄りたちの記憶中にはっきりとある」となります。
(解答例)2行40字程度
海の情景がしっかりと記憶されているので、いつでもはっきりと思い出すことができるということ。(45字)
【問5】
(解説)
この設問は、「これはどういうことをたとえていますか」と問いています。
つまり、線部5は比喩的表現のため、抽象的な表現で言いかえるとどうなりますか、選択肢から選びなさい、という問題です。
選択肢の問題では、まず頭で正解をイメージしてから、選択肢を見ましょう!
そうしないと、間違った選択肢に引っ張られる可能性があるからです。
言葉の意味を確認していきます。
線部5の「四つの海」とは、「車椅子のお年寄り」が想像した海のことです。
6連に書かれています。
「ひんやり」の意味は、「感触が冷たいさま」です。
「迂回」は「※注」にも書いてあるとおり、「遠回りすること」です。
つまり、「車椅子のお年寄り」が昔を思い出す楽しい時間から、クールダウンしてもらい車椅子にたよる現実の時間に戻った、ということです。
線部8では、「四つの海を」と「ひんやりと迂回して / 椅子の車輪がすべっていく」が対比の関係にあります。
それを一言で表すと、前者が「想像」であり、後者が「現実」になります。
この辺りを頭に入れて、選択肢を見ていきます。
「ア」:読点で文章を分ます。前半部分で「想像」、後半部分で「現実」のことが書かれているので「○」。
「イ」:この選択肢も読点で分けます。前半、後半部分共に「想像」のことが書かれているで「×」。
「ウ」:全文間違ったことが書かれているので「×」。
「エ」:読点で文章を分けます。後半部分は「現実」のことが書かれているのですが、前半部分は、「現実」に戻そうというようなことが書かれているので「×」。
「オ」:最初の読点で文章を分けます。前半部分は「想像」なのですが、後半部分に「外の海へ向かう」と書かれているので「×」。
(模解)
「ア」
どうでしたから、かなり比喩的表現を抽象的表現に言いかえるのが、難しかったのではないでしょうか。
何事も慣れが必要です。
過去問をしっかり説いて慣れていきましょう!



