補聴器の貸出し試聴について
補聴器メーカー数社でつくった団体「補聴器工業会」が発表しているデータをもとに補聴器満足度について話したいと思います。
まず最初のグラフですが、これは国内の難聴者数(自己申告による)と補聴器使用者数を表したものです。
総人口に占める、難聴者の数が11.3%とのこと。
日本の人口がおよそ1.2億人と考えると、1.3千万人となります。
しかし、あくまでこれは自己申告とのことなので、実際には自覚のない難聴者を含めるともっと数字は大きくなるでしょう。
実際は、およそ2千万人程度ではないかと推測しています。
その中で、実際に補聴器を所有している人の割合が14.4%。
1.3千万の14.4%ですから、およそ187万人。
少ないですね・・・
難聴者のたった14.4%しか補聴器を持っていないんですね・・・
なぜなんでしょうか?
国内の補聴器満足は38%しかない?
はい、そうなんです。
このグラフ・・小さくて見づらく恐縮ですが、日本国内において補聴器の総合的満足度は38%との結果でした。
半分以下!
酷いと思いませんか?
187万人の補聴器所有者のうち、116万人程度は何らかの不満を持っていることになります。
これでは補聴器を使いたがらないのも仕方ありません。
だって周囲を見渡せば、聞こえづらくても補聴器を使わない人がほとんどで、しかも使っている人でも不満に思っている人だらけ・・・
これでは使ってみようと決心できないのも無理ありません。
上のグラフには、他の国の満足度も調査されています。
フランスやイギリス、デンマークなどヨーロッパ各国では、軒並み70%以上の満足度となっています。
それらの国々は、もちろん補聴器の所有率も日本より高いです。
なぜ、こんなにも開きがあるのでしょうか?
なぜ満足度が低いのか?
様々な理由が考えられます。
・公的保険制度でカバーされない
・国民性の違い
・言語の違い
補聴器購入の際の補助金制度が充実していれば、より多くの必要とする人々へ普及し、満足度も向上するかもしれません。
日本人は神経質なところがある、と言われることがあります。
細かいことを気にし過ぎて、過剰なサービスを求めてしまう。
欧米人と比較して、コミュニケーションが苦手であまり外へ出たがらない?・・等々
・・・まぁ、そう言われれば、そうかも知れませんが・・・
言語でいうと、欧米言語はより子音の聞き取りが重要で、高域から聞こえづらくなる加齢による難聴では「聞き取りづらさ」がより顕著になってしまう。
これも多少はあるでしょう。
しかし、上のような理由だけでここまで開きが出てしまうものでしょうか?
もっと大きな原因は、補聴器の供給・・流通にあり!
日本国内の補聴器の流通に問題があると私は感じています。
現在、日本国内で補聴器販売業を始める事は実は非常に簡単。
補聴器は専門店だけでなく、メガネ店・電気店・通信販売などで売られています。
例えば、これまで補聴器など見たことも、触ったこともない、という人が販売店に就職します。
酷い所なら1~2週間、多くのケースで1~3ヶ月程度の研修で、もう現場で補聴器販売を始めてしまいます。
何の資格も必要とせず、さぁ今日から補聴器販売員になろう!・・・実現できちゃうんです。
補聴器販売には、公的資格者が必要とされる欧米諸国と比較して、実に稚拙と言わざるを得ない現状。
これで補聴器満足度が上がるわけがないのです。
では、どうしたら満足度が上がるのか?
これは、国内の補聴器販売システムを変えていくしかないのですが、それにはまだまだ多くの時間がかかるでしょう。
補聴器販売のための国内共通の資格が実はあります。
「認定補聴器技能者」と呼ばれる資格ですが、現状ではこの資格がなくても補聴器販売はできてしまいます。
まだ民間資格ではありますが、補聴器販売に必要とされる最低限の知識を4年かけて学び、耳鼻咽喉科医師の承認を得て、最終試験に合格した証ですので少なくとも「ド素人」ではないという証明にはなります。
この認定資格保有者は、全国で現在およそ4,000名。
補聴器販売店の数は、約7,600と言われています。
資格者全てが販売業に携わっているわけでもありません。
そうなると、「ハズレ」を引く確率が半分以上!
補聴器って、実はそう簡単な器械ではないんです。
非常に細かい調整を必要としますので、本来「ド素人」が販売して良いものではないし、ましてや通販では「ギャンブル」に近い。
「補聴器専門店」と看板を掲げておきながら、法律で必要とされていないのをいいことに、実際は資格者が一人もいない、なんて事が普通にまかり通っている。
消費者である皆様が、賢くならなければ損をしてしまう現状があることを気に留めて頂けたら幸いです。