AIは“理解の味方”——でも会社の中心は人が握る (継ぐ人のための、数字と向き合う経営ノート:第8回)
家族で会社をやっていると、
「愚痴を言う相手がいない」
「お金の話をすると空気が重くなる」
そんな状態になりがちです。
夜、一人になったときに
「このままで大丈夫なのだろうか」
「誰かに聞いてほしいけれど、誰にも言えない」
そう感じることがあっても、不思議ではありません。
これは、能力や性格の問題ではありません。
家族経営という形そのものが、そう感じやすい構造を持っているからです。
なぜ、家族経営は「相談しづらく」なるのか
家族経営では、
・仕事の話
・お金の話
・生活の話
が、すべて同じ人間関係の中にあります。
社員であれば
「仕事の愚痴は家に持ち帰らない」
という線引きができますが、
家族経営では、その境界線がとても曖昧です。
その結果、
* 心配を口にすると、家族を不安にさせてしまいそう
* 厳しい数字の話をすると、関係がこじれそう
* 弱音を吐くと、社長として失格のように感じる
こうして、何も言えなくなる状態が生まれます。
相談できないときに起きやすい3つの誤解
誰にも話せない状態が続くと、
頭の中で、次のような誤解が膨らみやすくなります。
①「自分だけが、こんなことで悩んでいる」
実際には、同じ悩みを抱えている経営者は少なくありません。
ただ、表に出ないだけです。
②「もう少し頑張れば、何とかなるはず」
頑張り続けることで、
本当は整理すべき問題が後回しになってしまうことがあります。
③「誰かに相談する=すぐに決断を迫られる」
相談=即、答えを出す
ではありません。
本来は「考える材料を増やす」行為のはずです。
誰かに話す前に、まず自分の中で整理しておきたいこと
「まだ人に話す気にはなれない」
そう感じているなら、無理に相談する必要はありません。
代わりに、紙に書き出してほしいことがあります。
1つ目:いま一番気になっていることは何か
売上、資金繰り、家族との関係、将来不安。
理由は曖昧でも構いません。
2つ目:それは「事実」か「気持ち」か
数字や出来事なのか、
それとも不安や焦りなのか。
分けて書くだけで、頭が少し整理されます。
3つ目:今日すぐに決めなくてもいいことは何か
多くの悩みは、
「今夜中に答えを出さなくていい」ものです。
まとめ 相談できない時間は、無駄ではありません
誰にも言えない時間は、
決して弱さの証ではありません。
むしろ、
「軽々しく決めたくない」
「家族や会社を大切にしたい」
という気持ちがあるからこそ、生まれる時間です。
整理が進めば、
・誰に
・何を
・どこまで
話せばよいのかが、自然と見えてきます。
そのとき初めて、
「相談する」という選択肢が、現実的になります。
家族経営の悩みは、
一人で抱えるには少し重く、
急いで答えを出すには少し複雑です。
だからこそ、
立ち止まって整理する時間を、
自分に許してあげてください。
同じように悩みながら、
少しずつ整理してきた経営者は、
決して少なくありません。
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家族経営では、
気持ちの整理がつかない理由の一つに
「お金や数字の話が、よく分からないままになっている」
という状況があります。
次の記事では、
月次試算表を見ていなくても、なぜすぐに問題になるわけではないのか、
そして、数字が苦手な社長が最初に見るべきポイントについて整理しています。



