“買う”より“整える”──家族経営がM&Aを恐れないために

「もう無理かもしれない」と言いながらも、帳簿を毎月つけて、取引先に頭を下げて、従業員に給料を渡し続けている――そんな社長を、私はこれまで何人も見てきました。後継ぎもいない、借金もある、赤字も続いている。それでも“会社を守ろう”とする姿には、言葉にできない強さがあります。今日は、そんな小さな会社の“希望の見つけ方”をお話ししたいと思います。

「M&A＝終わり」ではない

M&Aという言葉を聞くと、「売る」「手放す」「もう終わりだ」と感じる方が多いでしょう。けれども、私はいつもこうお伝えしています。
「M&Aは終わりではなく、もう一度会社を整えるためのきっかけです」と。たとえば、今は赤字でも、きちんと見直せば利益を生み出す力は残っている。借金があっても、返す仕組みを整えれば再び息を吹き返す。その“整える時間”を作ることこそ、M&Aの第一歩なのです。

家族経営は「想い」で動く

家族経営の会社では、数字の前に“想い”が立ちます。「社員を路頭に迷わせたくない」「取引先に迷惑をかけたくない」。だからこそ社長は、苦しくても最後まで自分で抱え込みます。けれども、その優しさが時に経営を追い詰めてしまう。私は、そんなときこそ“数字を見ながら一緒に考える時間”が必要だと思っています。数字は冷たいように見えて、実は社長の想いを整理してくれる味方です。

「整える」ことが選択肢を増やす

会社を“整える”とは、業績を急に伸ばすことではありません。
たとえば、
* どんな仕事が利益を生んでいるのかを見極める
* 不要な在庫や契約を整理する
* 資金繰り表を作って、1か月先を見えるようにする

こうした小さな行動が、経営者に「まだできることがある」という実感を取り戻させます。整った会社には、必ず次の選択肢が生まれます。それが、再生なのか、事業承継なのか、M&Aなのか。どの道を選んでも、“自分で決められる”状態が大切なのです。

「数字が整う」と、人の気持ちも整う

私はこれまで、何度も“限界”と言われた会社が息を吹き返す瞬間を見てきました。きっかけはいつも、数字を一緒に見る時間です。試算表や在庫を一つずつ整理していくうちに、社長が「もう一度頑張ってみよう」と口にする。数字を整えることは、経営者の心を整えることでもあります。そしてその整った姿が、やがて次の担い手を引き寄せます。

まとめ

家族経営の会社が背負ってきた想いは、簡単には消えません。それは、帳簿にも、工場の棚にも、社員の表情にも残っています。だからこそ、あきらめる前に「整える」ことから始めてください。平岡商店では、月次試算表・資金繰り・在庫管理を通じて、会社と経営者の“筋力”を取り戻すコーチング型再生支援（ビジネスストレングスコーチング）を行っています。M&Aを恐れず、もう一度“自分の会社を見直す時間”を作りたい方は、ぜひご相談ください。