受け継ぐだけじゃない、広げていくという選択 【継ぐ人のための経営ノート⑧最終回】
事業承継やM&Aによって経営を引き継いだ後継者が、経営者としての役割を担い始めると、次に直面するのが「人を育てる」という責任です。
とくに未経験者にとっては、「自分が育てられている最中なのに、社員を育てるなんて」と戸惑うことも少なくありません。
しかし、経営とは「育てる仕事」であると同時に、「つながる仕事」でもあります。社員の成長が、事業の成長につながる。だからこそ、後継者自身が「育つ姿勢」と「現場とつながる姿勢」を持ちながら、社員と共に歩むことが求められます。
「現場を知らない社長」と言われないために
事業承継者・後継者は、創業経営者や前経営者とは異なり、現場から見れば“部外者”です。たとえ親族であっても、現場で汗を流してきたわけではない。だからこそ、「現場を知らない社長」と言われないための真摯な姿勢が必要です。
そのためには、単なる会話ではなく、現場の動きと数字をふまえた“対話”が欠かせません。
- 現場で何が起きているかを数字で確認する
- 銀行や税理士とのやりとりを社員に共有する
- 経理や資金繰りの状況を現場の業務と結びつけて説明する
こうした対話が、現場との信頼関係を築く土台になります。
対話の質を高める「レポートライン」と「双方向性」
現場との関係性を高めるには、対話の質が問われます。とくに以下の3つの要素が重要です:
1. レポートラインはあるか:社員が誰に何を報告すればよいかが明確か
2. 双方向か:経営者が一方的に話すのではなく、社員の声を聞く姿勢があるか
3. 数字を使っているか:感覚ではなく、数字を根拠にした対話ができているか
これらが整っていると、社員は「この社長は現場を理解しようとしている」と感じ、信頼が生まれます。
育成は「現場との対話」から始まる
社員の育成は、研修や制度だけでは機能しません。とくに家族経営のような小規模事業者では、現場での対話が育成の中心になります。
- 日々の業務の中で、何をどう判断しているかを共有する
- 経理や資金繰りの数字を、現場の動きと結びつけて説明する
- 銀行や税理士とのやりとりを、社員にも見える形で伝える
こうした対話を通じて、社員は「経営の視点」を少しずつ身につけていきます。そして、後継者自身も、社員の反応を通じて自分の考えを深めていくのです。
コーチがいることで、現場との関係性が育つ
平岡商店の「ビジネス・ストレングス・コーチング」では、後継者が社員と共に成長できるよう、現場と数字の両面から育成支援を行っています。
- 育成の方向性を整理する
- 社員との対話の設計を支援する
- 組織の成熟度に応じた納得解を導く
経営者は、育てる人であり、育つ人でもあります。そして、現場とつながる姿勢こそが、信頼を築く第一歩です。
次回は「跡継ぎの“らしさ”をつくる──自分らしい経営のかたち」についてお話しします。
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